『新釈古事記伝』と乃木希典将軍に学ぶ〝大和人の魂〟(今野華都子)

弊社から刊行された『新釈古事記伝』の読書会を全国で開催するなど、日本神話から日本人の生き方、「大和人の魂」の神髄を紐解いてきたエスティティシャンの今野華都子さん。日本が様々な困難、課題に直面しているいまこそ、今野さんが説く日本人の生き方を取り戻す必要があるのではないでしょうか。〔写真:乃木希典|国立国会図書館「近代日本人の肖像」より〕

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いま求められる「大和人の魂」

〈今野〉

私たちの祖先は、その大切な中心軸を「ひ」、「あかきこころ(清明心)」という言葉で表現してきました。阿部國治先生の『新釈古事記伝』第四集「受け日」の物語に、伊邪那岐大御神の怒りに触れ、「かみやらい」(追放)された須佐之男命が、姉である天照大御神に対面し、大和人の本質である「ひ」の状態に立ち戻っていく場面があります。そこで、このようなやり取りが交わされるのです。

「そのお<ひ>さまの<ひ>というものは、私にだけしかないものでしょうか。あなたには初めからありませんでしたか」

「私は自分の中には“ひ”の光はないと思っておりました。……いまや私はお姉上の“ひ”の光りを受けまして、私自身の中に自分の力として存在する“ひ”の貴さを確認することができました。お姉上、本当にお喜び下さい。私ははっきりと“あかきこころ(清明心)”をつかむことができましたから」

須佐之男命のように私たち日本人は、「心」という不断に変化していくものと、普遍の存在である「ひ」を有して生きてきました。そして大和人は、その「ひ」を、すべてを公平に照らす太陽の「日」、すべてを温かく包む「陽」、穢れを焼き切る「火」、さらには比べるもののない「比」、唯一を意味する「一」という言葉で言い表し、「ひ」が留まっている存在を「ひと」、あるいは「聖」と呼んできたのです。

そのような大和人の魂を究極の形で見せてくれた人たちがいます。その代表として、阿部先生は吉田松陰や乃木希典、二宮尊徳などの名前を挙げてこう解説されています。

「ただただひたすらに、真心を尽くされただけで、この真心が現実に活動するときには、必ず《ふくろしよいのこころ》となって現われます」と。

その一人である乃木大将は、日露戦争で旅順をなかなか落とすことができず、非難が日本中で巻き起こりました。それでも明治天皇は乃木大将を信頼し、乃木を替えれば自死するだろうと、替えることをしませんでした。その一方で、乃木の奥さまは、一人伊勢神宮に行き、「旅順を落とさせてください」と祈ります。

その時に、「旅順は大丈夫だ。しかし、二人の息子はもらうぞ」という声が聞こえるんですね。奥さまはこう答えます。「いえ、私の命も差し上げます」と。

そのとおりに、二人の息子は戦闘で命を落とし、旅順は陥落。そして、明治天皇がお亡くなりになった後、乃木大将と奥さまは殉死されるのです。

自らの命を自分のためだけではなく、公のために使う。自分ができることをその立場で精いっぱいやらせてもらう。そういう清き明き生き方を私たちは神代から脈々と受け継いできたのでした。

そして、古代より私たち日本人は、地震や津波、火山の爆発や台風といった自然災害に絶えず見舞われてきました。しかし、先の東日本大震災で略奪が起こることもなく、配給の列に礼儀正しく並ぶ日本人の姿に世界中が感動したように、常に私たちは天を恨まず、人を怨まず、和を尊び、強く明るく「ひ」の状態で立ち上がり、生き抜いてきたのでした。

この「ひ」を抱く民である日本人の役割が、ますます混迷を深める現代において望まれる時が、もうそこまでやって来ているように思います。そして、その日本人の生き方と使命を一番やさしく私たちに読み説いてくれているのが、この『新釈古事記伝』であり、必ずや本書が、これからを生きる日本人の“聖書”となることを私は信じて疑わないのです。


(本記事は月刊『致知』2014年10月号 特集「夢に挑む」より一部抜粋したものです)

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◇今野華都子(こんの・かつこ)
昭和28年宮城県生まれ。平成10年エステティックサロンを開業。16年第1回LPGインターナショナルコンテストフェイシャル部門にて日本最優秀グランプリ、また、世界110か国の中で最優秀グランプリを受賞。タラサ志摩ホテル&リゾート、カルナ フィットネス&スパの社長を歴任。最新刊に『はじめて読む人の「古事記」』(致知出版社)。

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