35年指導を受けたから分かった、稲盛和夫塾長のすごさ(稲田二千武×小池由久)

 (左:稲田二千武さん/右:小池由久さん)
稲盛和夫さんの哲学に学び、それを経営や人生に生かす有志の集まりである盛和塾(せいわじゅく)。国内外で2万人近い会員を擁してきたこの経営者グループを立ち上げた一人が稲田二千武(いなだ・にちむ)氏です。一方、その大阪支部の代表世話人を務めた小池由久氏は、2019年の盛和塾解散後も「大和」という有志の会に参画し、稲盛哲学の学びを続けていらっしゃいます。長年、塾長である稲盛さんの近くで指導を受けてきたお二人の話だからこそ、平素における稲盛さんのすごさが如実に伝わってきます。

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塾生の一人ひとりにドラマがある

〈小池〉
稲田さんのお話のように、稲盛塾長は本当に腰が低く謙虚な方で、塾生たちの話にも真摯(しんし)に耳を傾けてくださいます。私にとって塾長は厳しくも包容力のある父親のような存在なんです。

私も盛和塾での学びを通して経営を成長させていただいたという思いを抱いていますが、もう一つ強く思うのは、稲盛哲学を学び実践されてきた多くの先輩方にこれまで支えられ導いていただいたおかげで、いまの自分があるということです。

塾長は我われから見たら雲の上の神様のような存在で、私たちのことをソウルメイトと表現してくださるわけですが、そういうソウルメイトによって、いろいろなことに気づかせていただいたなと思うと、感謝の思いを禁じ得ませんね。

特に心に残っていますのは、イボキン(兵庫県)社長の高橋克実さんのお話です。高橋さんはお祖父様の代から廃品回収業をされていました。当時、社員のプライドは低く、自分はクズ屋の従業員だという認識があり、社員から「自分の娘が会社の前を通った時は恥ずかしかった」と言われ、「これではいけない」と。

塾生である高橋さんは、そこで「事業の目的、意義を明確にする」という塾長の教えに基づいて「資源の少ない日本では重要で高度な技術を要する産業」と事業の定義を変えられるんですね。このように廃品回収というイメージを大きく転換し、仕事に対する誇りや使命感を社員さんに伝えていかれた高橋さんの姿には大きな刺激を受けました。

〈稲田〉
塾生の一人ひとりに苦労を乗り越えていったいろいろなドラマがありますよね。それだけ塾長の感化力が大きいということだと思います。

稲盛塾長の魅力を言葉で表現するのはなかなか難しい部分があるのですが、やはり普通の人とは違うところがあるように思います。

例えば、私は塾長とは35年のお付き合いがあり、例会や稲盛財団の会合でお会いする機会も多いのですが、とても親しくさせていただいているという思いと、自分は多くの塾生の一人にすぎないという思いが共存しているんです。

塾長は付き合いが長い塾生も、きょう会った人も人間対人間として同じように大切にされますから、自分が親しいと思って馴れ馴れしく甘えるようなことは絶対にできません。いい意味での緊張感がそこにあるわけです。

別の見方をすると、塾長は鬼のようなとても厳しい一面と、お釈迦(しゃか)様のような慈悲に満ちた一面をお持ちです。その両者がマッチングして状況に応じて表に出てくる。愛情、利他の心を根本に置いて時には冷酷とも思える厳しい判断をされることもありますしね。

強調したいのは、その姿勢は私がお会いしてから全くぶれることがないんです。いままでいろいろな人に会ってきましたけど、こういう人はいませんでした。


(本記事は月刊『致知』2021年4月号 特集「稲盛和夫に学ぶ人間学」より一部抜粋・編集したものです)

【特集「追悼 稲盛和夫」を発刊しました】

去る8月24日、稲盛和夫・京セラ名誉会長が逝去されました。35年前、1987年の初登場以来、折に触れて様々な方との対談やインタビューにご登場いただくのみならず、たくさんの書籍の刊行、数々のご講演を賜るなど、ご恩は数知れません。
生前のご厚誼を深謝し、月刊『致知』12月号では「追悼 稲盛和夫」と題して特集を組みました。豪華ラインナップは以下特設ページよりご覧ください。
【登場者紹介】
◇稲田二千武(いなだ・にちむ)
昭和15年鳥取県生まれ。34年米子商業高校卒業、大阪の鉄工所に就職。37年中央物産創業、社長に就任。平成10年上海に発美利健康器械、13年アメリカにFAMILY INADA INCをそれぞれ設立。17年米子国際ファミリープラザ開業。19年シャトー・おだか開業。22年大山レークホテルの事業を継承し、運営を開始。

◇小池由久(こいけ・よしひさ)
昭和29年岐阜県生まれ。高校卒業後、47年会計事務所(現・日本経営)に入社。平成8年社長に就任。19年会長を経て、27年名誉会長に就任。調剤薬局チェーン・サエラ社長、社会福祉法人ウエル清光会理事長も兼任。

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