2021年03月12日
優れた才能があっても、人生や仕事に失敗する人がいる一方で、特別な能力がなくても大きな仕事を成し遂げる人がいるのはなぜだろうか――。その答えは、「この人にならついていこう」と思わせる人間的魅力、すなわち“人望力”の差にあると、作家・政治史研究家の瀧澤中氏は言います。いつの時代でも問われるのは、どこから生まれるのか?その答えが記された『人望力』から収録内容をご紹介いたします。
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巨大空母でコロナ感染
巨大なビルが横になって、もし海に浮かんでいたら。全長333メートル、と言ってもピンとこないかもしれない。関西でいえば「あべのハルカス」(300メートル)、関東でいえば「横浜ランドマークタワー」(296メートル)が近い。これらのビルが、もし横になって海上に浮かんでいたら、どうであろう。
その大きさが、アメリカ海軍の空母「セオドア・ルーズベルト」なのである。乗組員、約5000名。海上自衛隊の艦艇の中でもっとも大きい、空母のような形をしたヘリコプター搭載護衛艦「いずも」が、最大乗員およそ1,000名弱。全長こそ248メートルあるが、幅は「セオドア・ルーズベルト」の半分の、38メートル。以前「いずも」に乗艦する機会がありその大きさに驚いたが、「セオドア・ルーズベルト」は幅が倍あるから、大きさを想像するだけで圧倒される。
5000人というと、一つの町である(日本には1724の市町村があるが、その中で人口5000人以下の自治体は266市町村ある〔令和2年8月調べ〕)。この、約5000人が乗り組んでいる艦の中で、コロナウィルス感染者が出た。2020年、3月のことである。もしあなたが空母「セオドア・ルーズベルト」の艦長ならば、どんな決断をしたであろうか。決断の材料として言えば、まず「セオドア・ルーズベルト」は任務遂行中。南シナ海で島々を無理やり領有するなどやりたい放題の中国の野望を、なんとしても抑える役割を担っていた。
が、もちろん実際の戦闘を行っていたわけではない。いわば監視をしていたわけである。そんな中、約5000人の乗組員がいる狭い艦内でコロナ感染者が出たという、危機的な状況が生じた。艦長であるブレッド・クロジャー大佐(Captain Brett Crozie)は、事態を複数の軍幹部にメールで送り、乗組員たちを救いたいと善処を乞う。その結果、どうなったか。
クロジャー艦長は、艦長を解任された。
「任務遂行中なのだから、少し待て」「いや、対応が遅くなれば乗組員の命が危ない」
言うことを聞かないのなら、クビだ」簡単に言うと、こういうやりとりが行われたのである。
艦長解任までの経緯はやや煩雑なので、ここでは要点のみ記したい(以下すべて2020年の出来事)。<……本書に続く>
(本記事は『人望力』(瀧澤中・著)から一部抜粋・編集したものです) ◎各界一流プロフェッショナルの珠玉の体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。あなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。 たった3分で手続き完了、1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら。 ≪「あなたの人間力を高める人間力メルマガ」の登録はこちら≫
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◇瀧澤 中(たきざわ・あたる)昭和40年東京都生まれ。日本経団連・21世紀政策研究所「日本政治タスクフォース」委員歴任。著書に『「戦国大名」失敗の研究』『「幕末大名」失敗の研究』(共にPHP文庫)『秋山兄弟-好古と真之』(朝日新聞出版)『ビジネスマンのための歴史失敗学講義』(致知出版社)など多数。