2021年02月14日
戦前の日本は悪い国だった――そうした自虐史観に基づく歴史教育が広がっている中で、子供たちに日本人としての誇りを芽生えさせ、目を輝かせる歴史授業づくりに心血を注いできた齋藤武夫さんと服部剛さん。お二人にいま求められる歴史教育の実践事例を余すところなく語り合っていただきました。
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子供たちに歴史を教える要諦
〈服部〉
齋藤先生が具体的にどのような歴史の授業をされていたのかも、ぜひ教えていただけますか。
〈齋藤〉
いま講演会などでは、具体的な授業内容も交えつつ、「5つの基本」という話をしています。
1つ目は、まず歴史は自分自身のことなんだよと、子供たちに日本人としての共同体意識、所属意識を持ってもらう。この授業には「命のバトンと国づくりのバトン」というタイトルをつけているのですが、いま生きている私たちの生命はたくさんの先祖からの授かりものだということと、先祖は大昔から日本列島に生きていて、日本をつくり、守ってきてくれたことに気づかせ、考える授業です。
例えば、鎌倉時代にモンゴルが攻めてきた時に(元寇)、北条時宗はじめ、鎌倉武士たちが一所懸命頑張ってくれなかったらいまの日本、自分はないんだよという話をする。そうすると、子供たちにいま生きていられるのは歴史、具体的にはご先祖様のおかげなんだと、感謝する気持ちや日本人としての所属意識が湧いてくるんです。
〈服部〉
まず日本人としての所属意識を養う。とても大事ですね。
〈齋藤〉
2つ目は、できる限り日本の素晴らしいところ、オリジナルなところを伝える授業をする。天皇陛下のことや建国神話についてもできる限り取り上げています。例えば、武力を持った勢力が出てきた時、天皇陛下、君主を滅ぼさなかった国は日本以外にないんだよとか、国家的な事業として編まれた『万葉集』に、天皇陛下の御製、庶民の和歌が一緒に並んでいる平等な国は他にないんだよという内容の話をします。
〈服部〉
やっぱり、日本の素晴らしいところを教えてあげると、子供たちも自国、自分自身に対して誇りを持つようになりますよね。
〈齋藤〉
でも、多くの教育現場ではGHQによる「神道指令」や「国史廃止」の占領政策をいまだに引きずって、日本の素晴らしいところ、オリジナルなところをきちんと教えることをやっていない。
〈服部〉
本当におかしな状況です。
〈齋藤〉
それから3つ目は、日本が1つの国として団結する場面をしっかり教える。国家が団結する場面というのは、要するに外国がその国の運命に関わってきた時なんです。外圧が迫ってこなければ日本人は日本列島の中で暮らしていればいいわけですし、あえて国づくりをする必要もない。また外国と折衝して仲良くしたり、喧嘩をしたり、そういう場面は歴史の最も面白いところでもあります。
〈服部〉
確かに、授業でも先人たちが外国の勢力、外圧と闘った場面は非常に盛り上がりますね。
〈齋藤〉
具体的には、元寇でも大東亜戦争でも、どのような経緯で戦争になったのか、先人はどのような思いで戦ったのか、できる限り日本の立場に立って共感できるように教えるんです。特に近現代史は重要で、「支那事変」や「大東亜戦争」など当時日本人が使っていた呼び方もしっかり教えます。教科書通り、東京裁判史観で教えてはダメです。オリンピックの見学に連れていって、「さあ。日本の応援をしてはダメだよ。中国を応援しなさい!」という教育はもうやめようということです。
〈服部〉
おっしゃる通りですね。
〈齋藤〉
そして4つ目は、授業に議論を取り入れる。例えば、聖徳太子が遣隋使の小野妹子に推古天皇の手紙を託した事例を議論させるんです。隋の煬帝に宛てたその手紙には、「日出る処の天子、書を、日没する処の天子に致す。恙なきや」と、隋に対等外交を求める内容が書かれているのですが、では君たちが聖徳太子のスタッフだったら手紙の内容に賛成? それとも反対する? と意見を求める。
聖徳太子に賛成してくれる生徒も多いのですが、中には「日本はこれから遣隋使を送って勉強しないといけないのに、怒らしちゃったら教えてもらえないんじゃないの?」と心配する子もいます。
〈服部〉
授業で議論させると、必ず現実派がいるんですよね(笑)。
でもそれにより、理解がより深まって、聖徳太子の手紙がどれだけすごい意味をもっていたか、ドーンと子供たちに入ってくる。
〈齋藤〉
やっぱり子供たちが先人に自分を重ね合わせて歴史を考えるから、先人が決断したことのすごさが身に沁みて分かるんですね。
最後の5つ目は、これは私の歴史観でもありますが、日本の歴史を五つの章で書かれた〝大きな物語〟として教えるんです。
第1章は、縄文時代から弥生時代にかけて日本文明の基層がつくられていく国家以前の時代。第2章は、古墳時代から奈良時代にかけて、支那の外圧の中で独立した律令国家を建設していく時代。第3章は、平安時代から江戸時代にかけて、ある程度、外国と距離を置きながら日本独自の伝統文化や日本精神を形成していく時代。
第4章は、幕末から明治時代にかけて西洋列強の外圧を跳ね返し、近代国家を建設していく時代。第五章は、欧米優位の世界の中で様々な軋轢を経ながらも日本らしい生き方を探求していく時代。
そして、ここまで教えたら、この「日本らしい生き方を探求する時代」はいまも続いているんだ、先生も含めて私たちはいま、歴史の当事者として生きているんだ。君たちが新たな国づくりをしなくてはいけない「自分の番」が来たんだよって、伝えるんです。
日本史を物語、1つの大きなストーリーとして教えることで、自分はいまこの時代の中で何をすべきかを考えるようになるんですね。(後略)
(本記事は『致知』2021年2月号特集「自靖自献」より一部抜粋・編集したものです) ◎最新号申込受付中! ≪人間力を高めるお供に≫
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昭和24年埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退。書店員などを経て59年埼玉県の小学校教師となる。退職後は浦和実業学園中学校で教鞭を執る。現在、授業づくりJAPANさいたま代表。独自のテキストを基に教師に歴史授業を教える講座を各地で行っている。著書に『学校でまなびたい歴史』(産経新聞ニュースサービス)『日本が好きになる! 歴史全授業』(私家版)など。
◇服部剛(はっとり・たけし)
昭和37年神奈川県生まれ。学習塾講師を経て、平成元年より横浜市公立中学校社会科教諭となる。元自由主義史観研究会理事、現・授業づくりJAPAN横浜(中学)代表。著書に『先生、日本ってすごいね』(高木書房)『感動の日本史』(致知出版社)などがある。