発明王・ドクター中松の人生の原点

これまでに取得した特許件数は3,000件以上といわれる発明王ドクター・中松氏。氏の類まれな発想力や実行力はどのようにして培われたものなのか。発明家である自身の原点を振り返った貴重なインタビューをご紹介いたします。

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日本の未来を切り拓く鍵は創造力にあり

〈中松〉
日本はいま、円高、貿易摩擦、産業の空洞化と解決すべき問題が山積みされている。これらの諸問題解決の基本は、日本人に創造力を育てることではないだろうか。

そこで、創造性ある隠れた人財を発掘し、育てていこうという目的のために、今年の10月に「世界天才会議」を開くことになった。このような私の小さな行動でも、将来の日本のために貢献できるのではないか、と思ったからである。

ところで、私が「世界天才会議」の開催といったことを考えるにいたったのは、私が人とはかなり変わった人生を歩んできたからだと思う。発明・考案の道、いわば創造への道に最も情熱を傾けた人生を送ってきたのである。

私自身としては、創造する上で常に心がけてきたことは、生きる発明をしていきたい、ということである。つまり、誰もがその恩恵を受けられる発明ということだ。

このようにして私が過去に生み出した新しい発明・考案は、コンピュータ外部記憶装置の磁気ディスク等、IBMにライセンスした14件のコンピュータ関連特許をはじめ、2,300点(1987年当時)を超えている。

最初の発明は5歳の時

最初の発明は、5歳の時だった。

当時、私は模型飛行機づくりに熱中していた。何十機も模型飛行機をつくり、実際に飛ばしてみると、出来、不出来がある。つまり、ゴムひもを取り付けたり、紙を張ったりしているうちに、重心にズレの生じてくるものがでてくるのだ。

重心のズレた飛行機はうまく飛ばない。どうしたら重心を一定に保つことができるか、子どもながらも悶々とした日々が統いた。

ある暑い夏の午後のことである。ボンヤリと風鈴を眺めているとあることに気が付いた。風鈴本体がどう揺れようと、中の鈴が風鈴にあたる部分は一定しているのだ。

あの風鈴のようなものを飛行機に取りつけたら……とハッとひらめいた。しかし、これだ! とひらめいても、実際の発明を完成させるまでには、どんな簡単な考案でも四苦八苦する。その苦しみのすえ、完成したものが模型飛行機用の「自動重心安定装置」である。

「誰にも負けないよく飛ぶ飛行機をつくりたい」

という執念を実行に移したことが、生まれて初めての発明の成功につながったのである。この日こそ、私の創造への人生の第一歩であった。いまでも忘れることのできない思い出の日となっている。

後に東京大学工学部へ進学、さらに三井物産に就職しても、私の創造の人生は変わることはなかった。

例えば、三井物産では最初、ヘリコプターのセールスの担当になった。自分の性格から、人間関係の結び付きによる売り込みは、はじめから断念した。そこで私は、売り込みの方法を発明しようと考えた。わかりやすくいえば、買い手が買う気になるようにヘリコプターに特色を持たせることができるか、という発想をすることだ。

その結果生まれたものが、ヘリコプターを使ってこの農薬散布装置であり、電線架設の方式である。その後、私は独立し、本格的に創造の道をまっしぐらに走り続けることになり、現在にいたっている。

発明家としての資質は家庭の中で育まれた

私が、このように創造の道を歩むことになったのは、生まれ育った環境が大きかったように思う。

私の祖父や母は、ものを創り出す、新しいものを考え生み出すことが、人間にとって一番大事なことであると考え、私の創造したいという欲求を支持してくれたのである。

もし、「そんなものにお金をかけて」とか「そんなことをしている暇があったら、もっと勉強しなさい」といわれていたならば、いまの人生とは全く違った人生を送っていたことだろう。やはり人間を育てる上で家庭環境は、その人の人生を大きく左右してしまうのではないだろうか。

発明とは、地味なものだ。あきらめは許されない。忍耐、つまりどんなことにも負けないねばりが必要である。さらに強靱な体力と精神力が要求される。これを身をもって私は体験してきた。

その体験の中で常に考えていたことは、自分自身の能力を100%発揮し、満足感を持って人生を生きることである。そうでなければ、棺の蓋を閉じる時に必ず後悔するに違いないからだ。だから私は、安易な妥協をするのではなく、困難なことがあっても挑戦するという生き方をしてきたし、今後もそう続けることだろう。

こうした私の生き方が、今後の日本のためになることを祈りながら、これからも創造の道を歩んでいきたい、と考えている。

(本記事は『致知』1987年10月号 特集 「感性を磨く」より一部抜粋したものです)

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◇中松義郎(なかまつ・よしろう)=ドクター中松代表

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