成人病の予防からマインドフルネスまで——コーヒーは体と心の健康に有効!?

日本におけるコーヒーの消費量は、2012年から16年まで5年連続増加し、その後も堅調に推移しています。ワンコインで味わうことができるコンビニコーヒーの人気定着に加え、「コーヒーは体にいい」という“薬効”が広まったことが要因のようです。「1日3~4杯」のコーヒーを勧めるコーヒー博士として知られる岡希太郎さんに、コーヒーの健康効果をうかがいました。

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1日3~4杯飲む人は死亡リスク低下

コーヒーを毎日飲んでいる人と、あまり口にしない人とでは、病気に対するリスクに違いがあることが最近の研究で明らかになってきています。コーヒーは嗜好品であり、健康食品とか機能性食品と受け止めることはできませんが、病気を予防する効果があることは間違いありません。

今世紀に入ってから医療関係者の間で研究が進み、いろいろな病気の患者にコーヒーを勧める時代になってきています。一例が、オランダの国立公衆衛生・環境研究所のヴァン・ダム博士。世界5大医学雑誌『ランセット』に、「コーヒーを飲む人は、Ⅱ型糖尿病のリスクが低い」という内容の論文を2004年に発表したのです。

その後、我が国でも様々な研究論文が発表されましたが、2015年には国立がんセンターの研究チームが、「コーヒーの習慣的な摂取が死亡リスクを低減する」という内容の調査結果を発表しました。

特に1日3~4杯飲む人は、心疾患、脳疾患、呼吸器疾患による死亡リスクの低下が顕著で、コーヒーに含まれるクロロゲン酸(ポリフェノール)による血糖値の改善と血圧の調整、カフェインによる呼吸器機能の改善がリスク低下に繋がった可能性があると分析しています。

コーヒーの薬効はこれだけではありません。トリゴネリンというコーヒー豆に含まれている成分は、加熱することによってニコチン酸とNMP(N-メチルピリジニウムイオン)という物質に変化。前者は高脂血症の予防や血管を守る働き、また後者は抗酸化作用やストレス緩和などに役立ちます。

言い換えますと、がん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中という日本人の死因の上位を占める「3大疾患」の予防が見込めるわけです。

シーボルトは「良薬」と言っていた

コーヒーは人類が発見し飲み始めた時から「薬」でした。日本では1823年に来日した長崎・出島のオランダ商館医シーボルトが、ジャワ島などオランダ領東インド諸島からコーヒーを輸入し普及を図ろうとしていました。彼は「コーヒーは生命を延ばす良薬」と捉えていたのです。

シーボルトの自著『江戸参府紀行』では、「日本人の間にコーヒーを浸透させる方法として、コーヒーは長寿にきくと宣伝することであろう」と記しています。しかし、幕府禁制の日本地図を国外に持ち出したことで国外追放処分となり、この計画は頓挫してしまいました。

こうした古今東西の薬効の歴史、学術論文、そして近年の疫学調査を通して私が確信していることは、コーヒーは「病気を予防する効果が十分期待できる」ということ。その上で私が独自に考案したのが、「コーヒー豆の煎り方」です。

クロロゲン酸(ポリフェノール)とニコチン酸の二つの成分を同時に摂取することが可能な、ブレンドコーヒーをつくる方法です。クロロゲン酸は長時間加熱すると失われてしまうため、浅煎りが前提です。一方のニコチン酸は深煎りが基本です。私はこれを「いいとこ取り希太郎ブレンド」と呼んでいます。

焙煎方法は次のようになります。①生豆を豆煎り器(金網)で10分加熱(クロロゲン酸の多い浅煎り豆の完成)、②半分を皿に移し、残り半分をさらに10分加熱(ニコチン酸たっぷりの深煎り豆の完成)、③ミルやミキサーを使って挽き、混ぜると完成です。

マインドフルネスにも活用できる

コーヒードリップを活用したコーヒー・マインドフルネスも、最近の健康法の一つとして注目されていますので、ご紹介しましょう。

ある事象に精神を集中させ、何物にも囚われない状態にするマインドフルネスは、これまで精神科領域やがんの術後ケアなどのストレス解消法に取り入れている医療機関が多く存在しました。

これに加え、近年のトレンドとして世界的に広まっているのがコーヒー・マインドフルネス。『ニューヨーク・タイムズ』のコーヒーコラムでも紹介されていますが、参加者はコーヒー豆を選び、挽き、お湯を注ぎ、味わうまでの全過程に五感をフルに集中させて臨みます。すると、呼吸が整えられ、心が鎮められ、さらに免疫力が向上するといった効果が得られるとされています。

具体的には、ペーパーフィルターの上にコーヒーを入れ、そこにお湯を静かに注ぐと粉が泡のように膨らんできます。その時、プチップチッといった微細な音が聞こえ、カップの中からは一滴ずつ滴り落ちる音が響いてきます。水琴窟(すいきんくつ)の働きにも似ています。さらに、色や香りや温度の変化などもマインドフルネスのいわば道具になり得るのです。

コーヒーは、これまで述べてきたように、多くの薬用効果がありますが、医薬品ではありません。コーヒーブレイクを上手に取り入れて、穏やかに暮らすことも健康に繋がるはずです。

(本記事は月刊『致知』2020年2月号の連載「大自然と体心」の一部を抜粋・編集したものです。あなたの人生や健康や仕事の糧になるヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちらへ)

◇岡鬼太郎(おか・きたろう)
昭和16年東京都生まれ。東京薬科大学卒業。東京大学薬学博士号取得。スタンフォード大学医学部に留学し薬化学と臨床薬理学を専攻。東京薬科大学名誉教授、日本コーヒー文化学会理事。著書に『珈琲一杯の薬理学』『コーヒーの処方箋』(共に医薬経済社)『がんになりたくなければ、ボケたくなければ、毎日コーヒーを飲みなさい。』(集英社)などがある。

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