サッカー名指導者で洋菓子ユーハイム中興の祖・河本春男の名言——「10年一区切り、必死の2年」

洋菓子「バウムクーヘン」などで知られるユーハイム(神戸市)が創業してから110年を迎えました。1960年代に経営不振に陥った同社の再建に当たったのが、元高校サッカーの名指導者でバターの納品業者だった河本春男さん。「10年一区切り、必死の2年」など体験から学んだ“名言”を紹介してもらいました。

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サッカーで学んだ先制と集中力

(経営は「サッカー経営」だと伺いましたが、会社を強くする秘訣は)

それは、「常に一歩先んじ、一刻早く」ですね。つまり、タイミングのいい先制をするということです。これを可能にするのは、結局は、集中力なんですよ。だから、ポカンとしてやっとったらアカンのです。絶えず敵味方の動きを見ておって、わずかのスキも見逃さずに攻撃する。

また攻撃する場合も、両者の気持ちがスーッとそろわなあかんでしょう。そのために、集中力が必要になってくるんですわ。小さいものが、大きいものに勝つにはこれしかないですよ。

わたしは、神戸一中のサッカー部を指導して、全国大会で4回の優勝を経験しました。その時、神戸一中の生徒は小さかったですから、最も重点を置いたのは、この「常に一歩先んじ、一刻早く」だったわけです。

(人生も同じでしょうね)

まあ、似てますね。今までやってきたことをみてるとね。絶えず先んじようとか先制しようと思ってやったんじゃないのに、ちゃんと、そうなっていますな。習い性になっているんでしょうかなあ。それと、引く時も早く引きますよ。これは、なかなかむつかしいんですがね。

中学の校長から贈られた大切な言葉

(好きな言葉はありますか。)

ええ。わたしは、「10年一区切り、必死の2年」という言葉を持っているんです。まあ、10年が一区切りだ、とはよく言いますね。でも、なかなか一日のごとくはいかんですよ、10年は。

一生懸命になれば、なるほど、何か壁にぶつかる。何かむつかしいことが起こったりしてね。で、その壁を越えるには2年間は努力せないかんと。この言葉は、こういった意味です。そうすると、皆できますよ。

苦しくなって途中であきらめたらいかんのです。とにかく努力を継続するということですな。そうすれば、不思議なことに、ひゅっとチャンスが訪れるんですよ。

この言葉を、わたしがどんなところから言い出したかというとね、もちろん体験からもあるのですが、もう一つ理由があるんですわ。というのは、これが、わたしが刈谷中学(現・刈谷高校)の3年生のときに、当時の校長先生だった田代信四郎さんが、修身の時間に贈ってくれた言葉があって、それがずっとあとまで残っていて、出てきた言葉だからです。

「駄目な人間など、この世には一人もいない」

田代先生は、わたしたちが3年生のとき1時間ずつ修身を教えてくれていたんですね。それである日、わたしたちが、ちょうど15歳になったというので、「吾れ十有五にして学に志し」で始まる孔子の有名な自序の言葉を一節一節、せつせつと説明してくれたわけです。そして最後に、「人生にはなあ、年齢相応の10年という節がある」と。

だから、その10年をしっかり積み上げたら、誰の人生もきっと意義のあるものになる。「しっかりやりなさい」と、こう言われたわけですわ。「年齢相応の10年」。これが、わたしの頭に、ものすごく強い印象として残ったのを覚えています。

まあ、わたしは学生時代、サッカーに夢中でしたけれども、世の中に出てからは困ったこと、つらいこと、苦しいことなどが、折々につけいろいろあったわけです。そのたびにね、「ああ、ここだなあ。ここだなあ」と思ってですね、何度も乗り越えてきたわけです。

(そのほかは……)

「人生にはチャンスは無限にある」という言葉。「人は誰でも、天賦の資質を持つ」といってね、その人にのみ与えられている特質がある。だから、駄目な人間など、この世には一人もいないわけで、「皆、世の中のために役に立つものばかりや」とわたしはこう思っているのです。わたしの人間観は、これに尽きると思います。

(本記事は月刊『致知』1987年11月号のインタビュー記事「体験的リーダーシップ論」から一部抜粋・編集したものです。あなたの人生、経営・仕事の糧になるヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

◇河本春男(かわもと・はるお)
明治43年3月愛知県生まれ。昭和7年3月東京高等師範学校(現・筑波大学)卒業。同年4月兵庫県立神戸一中に奉職。7年間の在任中、サッカーの全国中等学校選手権(現・高校選手権)で4度優勝、準優勝1回。14年岡山県女子師範へ転任。16年応召。18年岐阜県体育主事。22年依頼免官し商人となる。37年ユーハイム代表取締役専務、46年社長、60年会長。平成16年1月死去。

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