世界一のエステティシャン・今野華都子が語る『古事記』に学ぶ日本のこころ

 平成30年の刊行以来、大きな反響を呼んでいる『はじめて読む人の「古事記」』。著者である今野華都子さんは、全国に30を数える古事記塾を主宰するなど、いまも精力的に『古事記』を広める活動を続けています。日本人のルーツとなる神話の世界、いまを生きる私たちが受け継いでいきたい日本のこころを語っていただきました。

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空白の73年

私の手許に1冊の古びた教科書があります。『尋常小学國史(上巻)』という、戦前の小学校で使われていた歴史の教科書です。

冒頭には天照大御神のお話が書かれていることから、当時の子供たちが『古事記』『日本書紀』に記された神話の世界について、学校で習っていたことが分かります。

それに加えて当時の子供たちは修身の授業を通じて、いまでいう道徳も習っていたこともあるでしょう。「自分はどう生きればよいのか」ということに対する判断基準を、しっかりと確立していたように思います。自分の生き方に対する迷いのようなものが、なかったと言えるかもしれません。

ところが、終戦を境に状況は大きく変わりました。GHQの占領政策によって、そういった教育が禁止されてしまったのです。以来、修身の授業が姿を消すとともに、歴史の授業で神話の世界が教えられることもなくなって、既に73年が経とうとしています。そしてその間、日本人の精神基盤となっていた部分が、大きく揺らいでいったのでした。

2011年3月11日に起こった東日本大震災は日本中を不安に陥れましたが、その中にあって日本人が取った行動は実に見事でした。危機的状況下でも礼儀と忍耐を忘れない日本人の振る舞いは、海外から大きな賞賛を受けたのです。なぜそのような高い精神性を発揮できたのかといえば、やはり祖先から受け継がれてきたものだと言えるでしょう。

しかし、だからといってその伝承が今後も行われていくかとなると、当然疑問が残ります。なぜなら先ほど述べたように、私たち日本人のルーツである神話の世界が、現在の学校教育においてすっぽりと抜け落ちたままになっているからに他なりません。

この国には現在、第125代となる天皇陛下がいらっしゃいますが、そこからずっと遡って神話の世界を学ぶことは、そのまま私たちのルーツを知ることに繋がります。日本という国がどんな思いで創られたのか、どんな人物が関わってきたのかを知れば、自ずと日本人の物の考え方や日本の国柄がどう形づくられてきたのかが明らかになってくるのです。

いまこそ、そういったことを形あるものとして、広く伝えていくことが必要ではないだろうか。そう思うようになってからはたと気づいたのは、いまの子供たちが読めるような『古事記』に関する本がないことでした。

そこで、子供たちにも親しみを持って読んでもらえるような入門書をつくりたいという思いからこの度上梓したのが、初代神武天皇に至るまでの神話の物語を現代語で解釈した、『はじめて読む人の「古事記」』なのです。

『古事記』と大和言葉

それこそ最初はごく少数で始めた古事記塾でしたが、この7年間で拠点が全国に30を数えるまでに増え、これまでに1,000名を超える受講生と一緒になって『古事記』を学んできたのです。

また、その間に私たちが普段使っている言葉の多くが、大和言葉に由来していることにも気づくことができました。例えば、「おとうさん」「おかあさん」という言葉が、大和言葉からきていることはご存じでしょうか。

そもそも「おとうさん」とは、そのうちの「とう」が大和言葉の「尊し、貴し」という意味で、それに敬語と敬称の「お」と「さん」がついて「おとうさん」となりました。また、「とう」とは和語の数え方「ひ、ふ、み……この、とお」のうち「とお」という数字的に満ち足りている様子も表していることから、心身ともに統合された、尊い人のことを「おとうさん」と呼んでいるのです。

次に「おかあさん」の「か」は、大和言葉で「火、日」という意味で、カッと熱く輝く様子を指しています。日の光はその字が示すように、力(パワー)であって、万物の命の元でもあるのです。また、「あ」は大和言葉の「生れ」から取られたもので、愛のエネルギーで命を生み出すことを指します。そこに「お」と「さん」がつくことで、太陽のように明るく輝く、子供を産んだ女性のことを「おかあさん」と呼ぶようになったのです。

このほかにも、「こんにちは」「さようなら」といった大和言葉から派生した言葉の由来について、過去に一年ほどかけてSNSを通じて発信することを試みてきました。時には驚くほど大きな反響があったことから、現代においてもなお多くの方々が大和言葉に対して関心を示されることを実感することができたのです。

『はじめて読む人の「古事記」』には特に反響の大きかった大和言葉に由来する言葉についてもいくつか収録していますが、そうした過程を経て一冊の本にまとめ上げてみると、非常に感慨深いものがありました。

『古事記』を手にしたことをきっかけに様々な出逢いを経て、今回こうして解釈本を書くに至ったわけですが、この65年にわたる私の人生経験は、すべてこの時のためにあったようにすら思えるのですから、何とも不思議なものです。

(本記事は月刊『致知』2018年5月号「利他に生きる」から一部抜粋・編集したものです。あなたの人生、経営・仕事の糧になるヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

◇今野 華都子(こんの・かつこ)昭和28年宮城県生まれ。平成10年エステティックサロンを開業。16年第1回LPGインターナショナルコンテストフェイシャル部門にて日本最優秀グランプリ、また、世界110か国の中で最優秀グランプリを受賞。タラサ志摩ホテル&リゾート、カルナ フィットネス&スパの社長を歴任。最新刊に『はじめて読む人の「古事記」』(致知出版社)。

『はじめて読む人の「古事記」』(今野華都子・文/中尾早乙里・画)

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