バレー・バスケットボール強豪校の指導者はどこが違うのか

全国高校総合体育大会(インターハイ)などの全国大会で、常に優勝争いをする「強豪校」といわれるチームは他校と何が違うのでしょうか。女子バスケットボールでインターハイ24度の優勝を誇る桜花学園(愛知県)の井上眞一監督と、女子バレーボールの下北沢成徳高校(東京都)の小川良樹監督のお二人が指導論について月刊『致知』誌上で熱く語り合っています。

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人生を変えた指導者のひと言

(小川)
高校生の時から指導者になりたいという気持ちがありました。で、高校を卒業する時に、大学生になったらコーチをやりたいと思っていたんです。そうしたら、高校の卒業生に成徳学園(現・下北沢成徳高校)のコーチを長くやっていらっしゃる方がいて、思いを打ち明けたところ、「うちへ来い」と。

ところが、父にバレーの指導者になりたいと言ったら「ダメだ」っていうことで、あえて大学を留年し、一年かけて父を説得したんです。卒業後は早稲田に進学し、3年かけて体育の教員免許を取りました。そして、成徳の校長先生の自宅にまで押しかけて「何とか入れてください」と直談判し、ようやく指導者の道を歩むようになったんです。

(井上)
どんな指導をなさっていたんですか。

(小川)
勝つためにはしごき倒すことが必要だと、とにかくスパルタでした。一人に対して集中的に何10本もレシーブを受けさせたり、スパイクを打たせたりと、限界までやらせる。

はじめは16人いた部員が最後は4人しか残っていなくて大会に出られないということもありました。にもかかわらず、その時は自分の指導に対する工夫や反省はありませんでした。結局、そこに気がつくまでに10年近くの時間を要しました。

(井上)
何かきっかけが?

(小川)
ある強豪中学校の監督から「おまえがやっているのは指導じゃない。ただ怒鳴り散らしているだけで、選手に何も教えていないじゃないか。そんな指導をするならおまえのところに選手は送らないぞ」と言われたんです。

私はこの時初めて、自分の指導を人から批判されました。相手は実績のある方でしたし、この言葉で自分の至らなさを痛感しました。そこから変わっていったと思います。

中学生が憧れるチームづくり

(井上)
小川先生がおっしゃった指導のスタイルについては私もすごく葛藤がありました。私はプレーヤー時代、大学のバスケット部のしごきに耐えかねて挫折しているんですね。で、途中でやめて同好会をつくったんですよ。

ところが、指導者になったらやっぱり勝ちたくなるものだから、選手に厳しく当たることもあったんですね。で、桜花の監督になった時に、「簡単に勝てるわけないよ」って他校の監督から言われていたので、どういうチームが理想なんだろうと考えたんです。

その時思ったのは、中学生たちが憧れるような明るい雰囲気のチームにしたいと。そのためにまず上下関係は取っ払うべきだということで、これを撤廃しました。

門限22時以外はルールをすべてなくしました。敬語もなければ、食堂の座席も決まっていない。来た人から好きな席に座って食べる。体育会系によくありがちな上級生が先に食べて、その後で下級生というのがないので、よそから見るとなかなか不思議なチームかもしれません。

そうやって〝コートの中ではよきライバル、寮に帰れば家族のように仲良く過ごす〟というチームづくりを徹底していきました。すると、その年の夏のインターハイで運よく優勝してしまったんです。

だから何と言うか、私は力だけでは勝負に勝てない。やっぱり運がないとダメだと思うんです。

指導者として日々真剣勝負

(小川)
井上先生が考えておられる指導者の条件というのもぜひ教えていただけませんか。

(井上)
いっぱいあるんですけど、ひと言で言うと、人間性だと思います。じゃあその人間性をどう磨くかということは、あまり分からないですけど、普段から相手の身になって物事を考えることが大事じゃないですかね。誠実さというか。

私はそれこそ体育館を出た瞬間に普通のおじさんになるんで(笑)。全国大会前には必ず一人ひとりの選手に対して手紙を書いて渡しますし、試合に出ていなくて暗い顔をしている選手には、冗談を言いながらコミュニケーションを取る。当然バスケットの指導だけでなく、進路についても面倒を見るようにしています。

(小川)
私も「自分は選手に対して常に公正であるか、誠実であるか」ということを日々振り返るように心掛けています。

時には感情的になってしまって、選手にこういう言葉を投げてはいけないなと思うこともあります。ただ、そういう時は反省して同じ失敗を犯さないよう改善する。その繰り返しですね。

で、自分の中にそういう気持ちがなくなった時には、指導者を辞めるべきだという覚悟で日々過ごしているんです。

(井上)
まさに日々真剣勝負で生きていらっしゃいますね。

(本記事は『致知』2014年8月号 特集「一刹那正念場」より一部を抜粋・編集したものです。仕事や人生、人材育成などに役立つ体験談が満載の『致知』の詳細・ご購読はこちらから)

井上眞一(いのうえ・しんいち)
昭和21年愛知県生まれ。45年早稲田大学卒業。名古屋市の中学校勤務を経て、52年名古屋市立守山中学校バスケットボール部監督に就任。55年から全国大会6連覇を果たし、61年名古屋短期大学付属高等学校(現・桜花学園高等学校)に異動。これまで全国大会での優勝回数は54回を誇る。昭和63年から平成13年まで全日本ジュニアのヘッドコーチも務めた。

小川良樹(おがわ・なおき)
昭和30年愛知県生まれ。56年早稲田大学卒業後、成徳学園高等学校(現・下北沢成徳高等学校)に勤務。バレーボール部監督を務める。平成14年全国大会3冠、15年春高バレー2連覇を達成。これまでに大山加奈、荒木絵里香、木村沙織ら数多くの日本代表選手を輩出している。

※記事内容は掲載当時のものです。

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