鍵山秀三郎が語る、前橋育英高校を甲子園優勝に導いた「凡事徹底」の力

平成6年の刊行以来、続々と版を重ね、現在まで実に10万部、30刷を数える『凡事徹底』(致知出版社)。イエローハット創業者である鍵山秀三郎氏が40余年にわたり積み重ねてきた掃除を通して、「平凡を非凡に努めること」が説かれた一書です。その続篇には、鍵山氏が行った3つの講演がまとめられています。本書から、前橋育英高校の野球部を劇的に強くした「凡事徹底」の力についての内容をお届けします。

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凡事徹底の難しさと素晴らしさ

〈鍵山〉
自分自身がたくさん失敗をしてきたということもあって、そこから学んで、日常の取るに足らないこと、誰でも知っている昔からあることを大事にするというのが私の考え方になりました。

ですから、凡事徹底と言い続けてきましたのですけれども、なかなか人は聞いてくれません。

たとえ聞いても、「何だ、それは?」と、昔の化石でも掘り出したかのように扱われました。でも、『凡事徹底』という本を致知出版社さんから出していただいたおかげで、この言葉がかなり多くの人に理解されるようになりました。

中には名刺に「凡事徹底実践中」なんて肩書みたいに書いている人ともお会いしたことがあります。ところが、凡事徹底というのはそんなに簡単にできることではないんですよ。「凡事徹底実践中」とおっしゃってはいるけど、私から見ると、「万事手抜かり」という方も少なくはないのです。

凡事徹底というのは、本当に取るに足らない些細なことを大事にしていくところから積み上げていかなければいけないことだと思っております。

ついこの間、夏の甲子園で優勝した前橋育英高等学校の荒井直樹監督とお会いしました。短い時間でございましたけども、いろいろお話を伺いました。優勝するまで18年間、

「そんなことをやっているから勝てないんだ」
「やり方、方法、考え方を変えろ」
「頭が固い、人の言うことを聞かない」

と、ことごとく批判・非難をされながらも、ご自身の信念を変えずにやってこられたそうです。

普通は、人から批判されると今やっていることに自信が持てなくなって、やり方や考え方を変えてしまうことがよくあります。でも、荒井監督は絶対に自分の信念は正しいと信じて、18年間やり続けてきました。その結果、日本一の栄冠に輝いたわけでございます。

全国には高等学校が5000校ぐらいあるんでしょうか、その中の頂点に立つわけですから、大変なことです。それを成し遂げて初めて、荒井監督がやってきたことを人が認めたわけですね。

今まで批判していた人がコロッと態度を変えて、「あの人は信念を貫いた人だ」というふうに評価が変わるんです。もし優勝できず、甲子園には出たけれど1回戦で敗退してというのであれば、人は凡事徹底が素晴らしいとは言わなかったでしょう。

甲子園で優勝したという栄冠をもってして初めて、荒井監督が基本に置いてきた凡事徹底というものがいかにすごいものであるかを知ったわけでございます。

私が50年間言っても誰も聞いてくれなかったのに、甲子園で優勝した荒井監督が「凡事徹底」と言ったら、途端に「凡事徹底はすごい」というふうに評価が変わりました。荒井さんって方は若いのにすごいなと思いました。実際にすごい人なんです。若いのに謙虚で、素朴なお話の仕方をされました。あの栄冠に輝いた指導者とは思えない、そういう方でございました。

荒井監督は凡事徹底の大切さを言い続けてきましたから、生徒たちも帽子のひさしの裏に凡事徹底と書いて、何かあると帽子を取って皆で確認し合ったということです。

決勝戦ではいきなり3点取られました。大ピンチです。しかも、相手は強豪ですから飲んでかかってきました。それを見事に逆転して、勝利を手にしたわけです。

ピンチに陥った時も、伝令が走って行って帽子を見せて、凡事徹底だと言ってナインを冷静に戻したということをおっしゃっていました。


(本記事は書籍『続・凡事徹底』〈致知出版社〉から抜粋・編集したものです)

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◉『致知』2021年6月号では鍵山秀三郎さんに側近として尽くし、
また学んできたお二人にその哲学の神髄を語り合っていただきました!

◇鍵山秀三郎(かぎやま・ひでさぶろう)
昭和8年東京都生まれ。27年疎開先の岐阜県立東濃高等学校卒業。28年デトロイト商会入社。36年ローヤルを創業し社長に就任。平成9年社名をイエローハットに変更。10年同社相談役となり、22年退職。創業以来続けている掃除に多くの人が共鳴し、近年は掃除運動が国内外に広がっている。著書に凡事徹底』『鍵山秀三郎 人生をひらく100の金言(ともに致知出版社)など多数。

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