2021年01月03日
スポーツ界で華々しい活躍をした選手や指導者がその門を叩く、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科「平田ゼミ」。昨今各大会で快進撃を続ける青山学院大学駅伝部を率いる原晋監督も、平田ゼミの出身です。平田ゼミでの学びは原監督をはじめ、名立たる指導者・アスリートをどう変えてきたのか――同ゼミで教授を務める平田竹男さんに伺いました。
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経験則+データの裏づけ
〈平田〉
社会人のゼミ生たちは皆1年間で大きな変化を遂げてきましたが、特に印象深く残っているのは原晋氏のケースです。今年(2019年)は優勝を逃したものの、青山学院大学駅伝部が箱根駅伝で4連覇を達成したことはご存じの通りです。
2017年、12期生として平田ゼミに入学した原氏にとって1年間の最も大きな収穫は、自分なりの経験則に基づいて行っていた指導に、データに裏づけられたアカデミックな要素を取り入れることにより、勝利できるコツを明確にしたことに他なりません。
原氏は選手たちに「夏を制する者が秋を制す」と言い続けてきました。秋からの大学駅伝シーズンを前に、苦しい夏の練習を乗り切るために、そう檄を飛ばしていたのですが、実際にデータを取って分析してみると、箱根駅伝に出場した選手のほとんどが夏合宿の消化率が七割を超えていたことが分かりました。
この数値の裏づけがあることで原氏の説得力は増し、選手たちのモチベーションも一層高まったのです。
選手たちの故障の原因を調べたところ、練習量だけでなく、メニューの組み合わせによって故障率に違いがあることが判明しました。その結果を練習に取り入れメニューの改善を図ったことで、2017年のチームの故障率は10%以下にまで下がりました。
箱根駅伝にトップパフォーマンスが発揮できるよう1年を4期に分け、各期でターゲットとなる試合を定め、選手に関わる結果を数値化し分析したことも実力を押し上げる要因となりました。
また、平田ゼミでの学びは原氏本人にとっても大きな変化をもたらしました。ニュース番組のコメンテーターを務めた際、突然質問を投げかけられても、即座にその場に応じたコメントを返せるようになったといいます。これもゼミでの訓練の成果なのでしょう。
自身の経験則をサイエンスにまで高めていく原氏の姿勢を見ながら、私は原氏が駅伝に限らず、高校野球をはじめとする様々なスポーツの分野、ビジネスの分野での指導が務まる人だという思いを強くしました。
選手たちの1年の目標を月単位、週単位にまで落とし込んで、常にその成果をチェックするという指導を駅伝に取り入れ、成功させていますが、これなどはビジネスの指導者そのものの発想であり姿勢です。原氏のこの姿勢は、いずれ陸上界を発展させるメソッドへと結びつくのではないかと期待しています。
(本記事は月刊『致知』2019年3月号 特集「志ある者、事竟に成る」から一部抜粋・編集したものです) ◎今年、仕事でも人生でも絶対に飛躍したいあなたへ――
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◇平田竹男(ひらた・たけお)
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昭和35年大阪府生まれ。横浜国立大学経営学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。63年ハーバード大学J・F・ケネディスクールで行政学修士を取得。退職後平成14年から日本サッカー協会専務理事。現在早稲田大学大学院スポーツ科学研究科教授のほか、内閣官房参与、内閣官房東京オリンピック・パラリンピック競技大会推進本部事務局長などを務める。東京大学工学博士。著書に『超一流論』(双葉社)など。