一流になる人の20代はどこが違うのか?——「博多 一風堂」社長・河原成美が立てた26歳の誓い

人気ラーメン店「一風堂」をはじめ、飲食業界に旋風を巻き起こしてきた力の源カンパニー社長・河原成美さん。近年は海外進出も果たした河原さんの原点ともいえる26歳の時の誓いについてお話いただきました

 

どん底からのスタート

会社をクビになり、親にも半ば諦められ、自分が生きる道を模索し始めた。それは芝居だと思ったが、芝居だけでは食べていけない。いくつかの仕事を転々とする中で、兄の友人がやっていた店を「代わりにやらないか」と声を掛けられた。大学時代にいくつもの飲食店のアルバイトを経験し、商売に対する好奇心もあった。

芝居か、商売か……。そこで私が選んだのは商売だった。人生で初めて自分で決断らしい決断を下した瞬間だった。同時に選択しなかった芝居に対して恥ずかしくない結果を出そうと誓った。
といっても、商売のことは右も左も分からない。そこで私は自分に対する決め事を3つ作った。

一、3年間は休まない
一、売り上げゼロの日を作らない
一、35歳までには天職に就く

なぜ、こんな決め事を作ったのか。それは自分で自分のことが信じられなかったからだ。

『大学』に「小人間居して不善を為し、至らざるところなし」(つまらない人間は暇があるとよくないことを考え、何をしでかすか分からない)とあるように、自分で自分に手かせ足かせをして商売に集中させなければ、また何をしてしまうか分からないという「自分に対する不安」があった。
俺、覚悟決めて頑張ります」と言えば、他人のことは騙せるかもしれない。しかし、内側にいるもう一人の自分は、自分のことをよく知っている。

いやいや、無理でしょ。これまで何一つとして成し遂げられなかったじゃん

人生のスタートラインに立ったばかりの20代の頃は、私は何よりも「内なる自分と信頼関係を築く」ことが大切だと思っている。

とかく人は他人からの援助や協力を求めたがる。しかし、一番大切なのは自分からの信頼だ。だから自分との約束を守り、掲げた目標を達成する。それをやり遂げるまでの姿を、内なる自分はもちろん、他人も必ず見ているものである。そこから「あいつは言ったことをやる奴だ」という、周囲の信頼も生まれ、自然と協力の輪が広まっていくのではないだろうか。

結果として私は3年間、1日も休まずに店を開け続けた。酒を扱う商売なだけに飲み過ぎた日もあった。付き合っている女の子に旅行に誘われた時もある。でも、休まなかった。そうして3年後、「河原成美もやればできるじゃん」と、内なる自分から理解を得られたように思う。そこから私の人生の扉が開いていったと感じている。

人生は最後の砦の先にある。

内なる自分から信頼される自分となれ

どん底からスタートした私の商売人生も、「アフター・ザ・レイン」を軌道に乗せ、30代に入ると「綺麗な女性が集まる、おしゃれでカッコイイラーメン屋」というコンセプトのもと、「博多 一風堂」を創った。「35歳までに天職に就く」という誓いも、ここで達成したといえる。

1990年代には『TVチャンピオン』の「ラーメン職人選手権」で三連覇を果たし殿堂入り。既に全国展開していた「一風堂」の名前も広まる一方で、ニューヨークや香港など海外にも進出した。

「なぜ、商売が成功したのか」

この質問に対して、私は必ずこう答えている。

「常に自分との約束を愚直に守り続けたから」

「それだけですか? 本当はもっと凄い経営テクニックがあるのでは?」と言う人もいる。しかし、そんなものはどこにもない。自分が信じたことを愚直にやり通す。その素直さが大切だと思う。とはいえ、皆一様に決意はするものだ。例えば、「今年こそ朝は一番に出社して、英語の勉強をして、日記も書いて、ダイエットもして……」。そうしてトライしてみるが、1つやめ、2つやめ、3つやめて、結局はすべて投げ出し「あ~あ、やっぱり俺ってダメだな」と、ますます自分を信じられなくしているように思う。

特に20代は未熟で、自分自身をコントロールできないところがあるだからこそ決め事は1つか2つに絞って、それを確実にやり遂げることだ。仮に10の決め事にトライして達成したりしなかったりする5年と、1つのことを毎年確実にやり遂げる5年。どちらが自分への信頼を深めるかは明白だろう。

うちの従業員をはじめ20代の若者たちを見ていても、本当に自分を信頼している人間なんてほんの一握りではないかなと思う。
中には20代で起業して、成功を収める人もいるだろう。あるいは学生時代に必死に練習して大会で優勝したとか、猛勉強の末、難関大学に合格したという経験から、「自分はできる」という感覚を持っている人もいるかもしれない。

しかし、世の中の多くはそうじゃない。ほとんどが凡人だ。凡人は5つも6つも決め事は守れない。だからこそ1つでいいから、「これが自分の人生の最後の砦」という覚悟で守り抜くことだ。
その砦の先は断崖絶壁ではない。意味ある人生、実りある人生とは、その砦の先にしか開けていかないのである。

(本記事は『一流になる人の20代はどこが違うのか』(致知出版社刊)より一部を抜粋・編集したものです。月刊『致知』にはあなたの仕事力、経営力を高める一流たちの珠玉の体験談や金言が満載です!詳細・ご購読はこちらから)

河原 成美(かわはら・しげみ
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昭和27年福岡県生まれ。大学卒業後、スーパー勤務などを経て、54年にレストラン・バー「アフター・ザ・レイン」を開店。60年「博多 一風堂」をオープン。平成9年TVチャンピオンの「全国ラーメン職人選手権」優勝後、3連覇達成。業界のカリスマとして活躍中。著書に『凡人が天才に勝つ方法』(集英社)他多数。

 

『一流になる人の20代はどこが違うのか

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