出世したければ、自ら「箸(はし)」を取れ! 現代語訳でこんなにも面白い『論語と算盤』

言わずと知れた渋沢栄一の代表著作『論語と算盤』。弊社刊で好評をいただいている「いつか読んでみたかった日本の名著」シリーズでは、この不朽の名著をこれ以上なく分かりやすく現代語訳しています。ここでは、これから出世したいと意気込む青年たちに向けて栄一翁が説いた、「引き上げてもらえる人」の働き方について書かれた箇所をお届けします。

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自ら箸を取れ

 ――〔以下、弊社刊『論語と算盤』(奥野宣之・訳)より抜粋〕――

青年の中には「働きたい気持ちは大いにあるのに、頼れる人がいない」とか「引き立ててくれるひとがいない」「後ろ盾になってくれる人がいない」とか言って嘆いている者がいます。

なるほど、たしかにどんなにすぐれた人物であっても、その才気と知略に気がつく先輩なり周りの人なりがいなければ、その手腕を発揮する手立てがありません。

対して、デキる先輩が自分のことをよく知っているとか、親類に有力者がいるとかいったことがある青年は、その器量に目をかけてもらえる機会が多いので、比較的に恵まれているかもしれません。しかし、それは普通以下の人の話です。

もしその人に手腕があり、優れた頭脳を持っているなら、たとえ昔からの有力な知人や親類がいなくても、世間が放っておかないでしょう。そもそも今の世の中は人が多い。役所でも会社でも銀行でも、人が余って仕方ないくらいです。

それなのに、上司が「この人なら安心だ」と仕事を任せられるような人となると少ない。そんなわけだから、どこでも、優秀な人物なら、いくらでも欲しいのです。

このように世の中はお膳立てをして待っているのだから、これを食べるか食べないかは、箸を持つ人しだいです。 ごちそうを並べた上に、口に運んでやるほど、先輩たちや世の中はヒマではないのです。

あの木下藤吉郎は、低い身分から出世して、「関白」という大きなごちそうを食べた。けれども、彼は信長に口に運んでもらったわけではありません。自分で箸をとって食べたのです。

秀吉の長所と短所

乱世の豪傑が、「礼(れい)」というものを身につけなかったせいで、家の存続や発展が上手くいかなかった――こんな例は、単に今の明治維新の元老ばかりではありません。どんな時代でも乱世に生きた人はみんなそんなものです。

私なんかも「家が上手くいってます」なんて偉そうなことは言えない一人ですが、あの希代の英雄、太閤秀吉こそ「礼」で家の存続が上手くいかなかったことでは、最も有名な人でしょう。もちろんたたえるべきことではないけれど、乱世に生きた人にとって、こういうのは仕方のないことです。あまり酷に責めることはできないだろうと思います。

それにしても、太閤・豊臣秀吉の最も大きな短所があるとすれば、それは家のことが上手くいかなかったこと、そして「機略」があっても「計略」がなかったことでしょう。そして、彼の長所はといえば、言うまでもなくその勉強、その勇気、その機知、その気概です。

このように挙げた秀吉の長所の中でも、「長所中の長所」と言えるのは、その「勉強」です。私はこの秀吉の勉強ぶりに心から敬服しています。青年子弟の諸君にも、ぜひ秀吉のこの「勉強」を学んでほしいと思っているのです。

「事の成るは成るの日に非ずして、その由来する所や必ず遠し(大きな仕事はいきなりできるものではなく、遠い昔からの努力の積み重ねが必要である)」

という言葉があります。秀吉が希代の英雄になることができたのは、なによりその「勉強」のおかげなのです。


(本記事は致知出版社 いつか読んでみたかった名著シリーズ『論語と算盤』〈奥野宣之・訳〉より一部を抜粋・編集したものです)

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◇渋沢栄一(しぶさわ・えいいち)
1840~1931年。実業家。埼玉生まれ。一橋家に仕えて幕臣となり、パリ万国博覧会幕府使節団に加わって渡欧。維新後、大蔵省官吏を経て第一国立銀行を設立。各種の会社の設立に参画し、実業界の指導的役割を果たした。日本資本主義の父と称される。

『論語と算盤』(上巻・自己修養篇)
『論語と算盤』(下巻・人生活学篇)

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