車間距離の詰め過ぎによる交通渋滞の経済損失は一体いくら?——ビックリ渋滞学

長期的視点の大切さ

渋滞が発生するメカニズムを研究する「渋滞学」に20年以上にわたって取り組んできた西成活裕さん。

渋滞と聞けば、多くの方は、車の渋滞を思い浮かべますが、西成さんによれば、渋滞は日々の生活や仕事など、あらゆる分野で起きているといいます。そして、様々な分野の渋滞の根本原因には、急ぎ過ぎや余裕のなさといった「長期的視点」の欠如があるといいます。

「例えば、車の渋滞のケースを考えてみましょう。日本で最も多く渋滞が起こっているのは、運転手が気づかないくらいの緩やかな坂道です。緩やかな坂道では、多くの運転手が上り勾配に気づかないまま運転してしまうため、少しずつスピードが落ちていきます。
 
その時に、後続車が『早く行きたい』と、車間距離を詰めて走っていれば、追突を避けるためにブレーキを踏みます。そうすると、もしさらに後ろの車も車間距離を詰めて走っていれば、より強くブレーキを踏むことになります。
 
そして、ブレーキのバトンが後続車へどんどん伝わっていくことによって、数10台後には停止せざるを得なくなるのです。」

そのような自分が早く行きたいからという車間距離の“詰め過ぎ”による交通渋滞の経済損失は実に国家予算の7分の1ほどにも及ぶそうです。

ではどうすれば詰め過ぎによる渋滞を解消することができるのでしょうか。西成さんがコンピュータなどによる様々な計算や実証実験を行った結果、次のことが明らかになりました。

「コンピュータによる計算や実証実験の結果、あえてゆっくり走り、車間距離を少し長めにあけて走ることで渋滞を未然に防ぐことができ、渋滞になった時でも解消できることが分かりました。

要するに、短期的には車間距離を詰めて走ったほうが早く行けるように思えますが、長期的には交通渋滞を引き起こし、逆の結果を招いてしまうということです。
 
また、『追い越し車線を走るほうが早いだろう』と多くの運転手が考えますが、これも皆が『早く行きたい』と思って車線変更することで、逆に追い越し車線が渋滞して、走行車線のほうが早く行けるということが分かっています。まさに『急がば回れ』の精神です。」

正社員を解雇し、派遣社員に変えることで短期的には業績を回復させたある企業が、長期的には人材不足で危機的状況に陥ってしまった等、この渋滞学の学びは仕事や人生など、あらゆる場面に通用すると西成さんは言います。

皆さんも、少し立ち止まって、長期的な視点で考えてみることで、思わぬ突破口が見いだせるかもしれません。

【西成活裕さんの記事の読みどころ】

・部分最適より全体最適が大事
・これから求められるのは経験と科学の融合
・利他の心が仕事と人生を発展させる

☆長期的視点が日本を救う――渋滞学に学ぶ仕事や人生を発展させるヒント

(※本記事は『致知』2018年11月号 特集「自己を丹誠する」に掲載された記事を抜粋・編集したものです。経営や仕事の糧になる体験談が満載の『致知』!詳細・購入はこちらから)

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◇西成活裕(にしなり・かつひろ)
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昭和42年東京都生まれ。東京大学卒、修士及び博士課程は航空宇宙工学を修了、専門は数理物理学、渋滞学。著書に『渋滞学』『無駄学』『誤解学』『逆説の法則』(いずれも新潮選書)など著書多数。

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