家系分析の第一人者・天明茂さんが説く、幸せな人生を送る秘訣

1966年から企業再建指導に携わり、家系分析を通じて多くの企業の経営改善や人材育成にあたってきた天明茂さん。家系図を遡り、自分に受け継がれている徳を発見し継承することが、人間性を高める最高の方法であり幸せになるための源泉だといいます。仕事や家庭生活上の問題解決にも繋がるという家系分析。その秘訣に迫ります。

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〝いのち〟を遡る家系分析

家系分析とは自分の両親、祖父母、曾祖父母など、〝いのち〟を遡って調べ、これを家系図としてまとめる。そして、家系図に載っている親・祖先の生きざまを調べ、親・祖先の喜びや悲しみを理解するとともに、自分に継承されている長所・短所をしっかりと自覚することである。

大事なことは「家系図」を書いて終わりではないということ。家系図に載っている一人ひとりの生きざまを調べて、〝いのち〟に流れる良いところ(すなわち「徳」)、先祖が苦しみ悲しんだこと(すなわち「不徳」)を発見することが大切なのである。そして徳は顕彰して受け継ぐ努力をするとともに、不徳については慰霊し、併せて自分たちが受け継がない努力をする。

このように先祖の生きざまを自分の生き方に生かすことが家系分析の中心テーマである。その意味で、家系図を書くことはスタート地点と考えたい。

家系図の作成代行業もあるが、戸籍謄本を取り寄せて家系図をまとめるところまでなら外部に依頼してもいいかもしれない。しかし、家系分析の目的は自分の生き方に生かすことなので、業者に頼らず自分自身の足と手を使って行うのがよい。

親・祖先の長所を受け継ぐ

家系分析で一番大事なことは、先祖の徳を讃え、感謝し、受け継ぐ努力をすることである。

人は誰でも長所を持っている。頭脳が明晰な人もいれば感性が鋭い人、運動能力に長けた人、他人に親切な人、努力家など長所はさまざまであり、それは「その人らしさ」というアイデンティティーになっている。

これらの長所は本人の努力による部分も大きいが、それ以上に遺伝子や環境因子として親・祖先から受け継いだものが少なくない。その証拠に歌舞伎や能など伝統的に世襲制をとっている世界はもとより、政治家、タレント、スポーツ選手などにも親子揃って一流になっている人が多い。

親の影響力やコネがあるのかもしれないが、それ以上に遺伝的に受け継いでいるものが大きいと思われる。このことは長年、家系分析に携わっているとよく分かることである。

「いや、自分に限って、そのようなことはない。100%自分の努力です」と自慢する人がいるとしたら、その人はかなり高慢な人であろう。あるいは「努力する性格を親・祖先から受け継いでいる」ことに気づいていないのかもしれない。

大事なことは自分の長所が親・祖先から受け継がれていることを知って感謝を忘れないことである。

「先祖にこんな優れた点があった」と気づき、例えそれが自分の能力として顕在化していなくとも「自分にも受け継がれているに違いない」と知れば、自分の眠っている遺伝子にスイッチが入るのではないだろうか。また、人は感謝の念が深まるほど謙虚になる。先祖の徳に感謝し受け継ぐ努力をするほど長所に光が増すものである。

関西で自動車販売店を経営しているTさんは4代目社長として立派な経営をされているが、折ある毎に「会社の発展は初代のご苦労の上に、2代目、3代目が地元で信用を築いてくれたおかげさま」と口にされる。

「自転車販売をはじめた曾祖父、店を広げた祖父、そしてオートバイに転身した3代目である父が寝食を忘れて努力してくれたおかげで現在がある。自分は先代・先々代の遺産を食いつぶしているだけ」と謙遜される。その人柄が周囲からの信頼を厚いものにしている。

「先祖の因縁」って本当!?――家系分析をとおして分かったこと

親心に触れると心が変わる

Aさんは3歳の時に両親が離婚し、母は家を出た。そんな母をAさんは許せなかった。その後、Aさんはしばらく父親に育てられたが、やがて父親にも手が負えなくなって5歳の時に養子に出された。そんな父親を好きになれず、成人してからも父親とはほとんど交流を持たなかった。風の便りに母が別の男性と暮らしているとも聞いた。

養子に出されたAさんは養家先の両親に育てられたが、養父母ともうまくいかず、悪い仲間と交わるようになった。高校卒業後はアルバイトなど職場を転々とした。

両親との間で基本的な信頼関係を結べなかった人は成人して社会に出てから人間関係で苦労する場合が多いということは既に述べたとおりである。

幼少時にAさんの心に作られた傷は、成人してからAさんの性格や価値観に大きな影響を与えた。Aさんはまじめな性格だったが、上司や職場仲間のちょっとしたミスを許せず孤立してしまう傾向があり、このためどこの職場でも長く勤められなかった。

ある時、「両親や祖父を恨んでいる限り、周りから信頼される人にはなれない」と人からいわれ、Aさんは思い切って父親に会いに行った。

父親はすっかり老け込み、昔とは打って変わって穏やかになっていた。父親の話からAさんの祖父母は満州からの引揚げ者だったことを知った。日本に戻ってから経済的に苦労の連続ですさんだ生活を余儀なくされ、その挙句、人にだまされて僅かな財産を全部とりあげられてしまったというのだ。

このために父はろくに学校にも行けず悪い仲間に入ってしまい、苦労の連続で若いころから大酒に浸るようになった。縁があって母と一緒になったものの、働くことが嫌いな上、酒で暴力をふるうことが度重なり、母は我慢ができずに家を出たという。「お前には本当に苦労を掛けた」と父親は涙を拭いた。

Aさんは祖父の過去や父母の生活を初めて知って涙した。

「自分はこれまでずっと、自分を捨てて出て行った母を責めていたが、物心もつかない自分を残して家を出ざるを得なかった母の気持ちを知ろうとしなかった自分は本当に親不孝だった」

「祖父は家を破産させた加害者だと思ってきたけど、実は祖父は被害者だったことが分かった。誤解していて本当に申し訳なかった」と。

関心を持って事実を知れば理解が深まり、反省により自分の心は責めから受容へ、そして詫びへと変化していく。そして、父母や祖父との配線がつながるのである。これは親心に触れて自分が変わる瞬間でもある。

Aさんに限らず、両親や祖父母がどんな生き方をしてきたか、どんな苦労をしてきたか、子供の頃には分かるはずがない。しかし、大人になったら大人の目で両親や祖父母を客観的に見なければならない。そうすることで、自分が知らなかった父母や祖父母を発見できることが多い。


(本記事は、書籍『なぜ、うまくいっている会社の経営者はご先祖を大切にするのか』〈致知出版社〉より一部を抜粋・編集したものです)

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◇天明 茂(てんみょう・しげる)
昭和17年東京都生まれ。明治学院大学卒業後、(株)日本コンサルタントグループを経て一般社団法人日本創造経営協会に所属。昭和55年よりTKC出版主催の研修会講師、中小企業大学校各校講師を務める傍ら、行き詰まった企業の再建、経営計画策定指導、講演活動などに携わり、平成9年から宮城大学に奉職する。現在、公認会計士、事業構想大学院大学教授、東京国際大学客員教授、宮城大学名誉教授、NPO法人全日本自動車リサイクル事業連合理事長、あおもり立志挑戦塾塾長、宮城県多賀城市行財政経営アドバイザー。著書に『なぜ、うまくいっている会社の経営者はご先祖を大切にするのか』〈致知出版社〉がある。

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