震災に打ち勝つ力をくれた「社内木鶏」

2011年、東北地方沿岸部に甚大な被害を及ぼした大津波。宮城県石巻市で水産加工を営むヤマサコウショウでは、2つの工場が全壊、従業員5人が犠牲になるなど、当時の状況は惨憺たるものでした。
あまりの出来事に茫然とする中、「社長、がんばりましょうよ」と率先して工場の復旧へと動き出す社員たちの姿に、社長の佐々木孝寿さんは『致知』を活用した社内勉強会「社内木鶏」から学んだ美点凝視の精神を見たといいます。

「社内木鶏」で社員が変わった

宮城県石巻の地で水産加工業を生業とする当社は、祖父・孝彰によって昭和九年に創業されました。魚の買い付けと卸を手始めに、父・一男の代に水産加工に乗り出し、平成21年に私が後を継いで3代目社長を務めています。

先代が会社の基礎をしっかり築いてくれていたこともあって、経営面では古参の社員たちが経験の乏しい私を支えてくださり、業績にも社員にも問題らしい問題はありませんでした。しかしその一方で、「いずれ自分の力で経営の舵取りをしなければならない時が来る」と、私は日々重圧に思い悩んでいたのです。

また、当社に入社してくるのはどちらかといえば地元の“やんちゃ坊主”といったタイプの子が多く、外部講師の方に研修に来ていただいても、なかなか学んだことが身につかず、経営陣と現場の社員とでは仕事のモチベーションに大きな隔たりがあることも感じていました。

そのような私の支えになってくれたのが、予て購読していた『致知』でした。

『致知』に登場される方々の体験談に励まされた私は、『致知』を教材にした勉強会「社内木鶏」を導入し、自分の力で会社をよくしていこうと決意したのです。「社内木鶏」の開催を平成22年11月と決めましたが、社内からは「水産業は冬が勝負なのは分かっているでしょう?」と反対の声が上がりました。

それでも私は、『致知』を読んで間違った考えを持つ人はいない、そう信じて「社内木鶏」を予定どおり開催したのでした。内心びくびくしながら迎えた当日でしたが、結果は素晴らしいものでした。

これまで読書などしたこともなかった社員たちが『致知』を読んだ感想を笑顔で発表し合い、お互いのよいところを“美点凝視”で褒め合っている。その光景を見た時の感動はいまも忘れられません。

当社を救った美点凝視の精神

「社内木鶏」の回を重ねていき、私の経営者としての自信も少しずつ芽生えつつありました。

しかしそんな最中、当社を襲ったのが東日本大震災でした。押し寄せる津波によって二つの工場は全壊、大事な社員も5名が犠牲になったのです。

私はあまりの惨状に茫然となり、すぐには事業再開へ向けた方針を打ち出すことができませんでした。

しかし社員たちは違いました。

「社長、がんばりましょうよ」と、工場の瓦礫や腐った魚の撤去に率先して取り組んでくれたのです。

特に強烈な異臭と蝿の大群の中での魚の撤去作業は過酷を極めましたが、社員たちは嫌な顔一つせず、むしろ笑顔でお互いを褒め称え、励まし合っていました。

これはまさに「社内木鶏」から学んだ美点凝視の精神にほかなりませんでした。私はこの時ほど「社内木鶏」の導入を決めてよかったと実感したことはありません。

そして「この素晴らしい社員たちを路頭に迷わせることは絶対にできない」と、私は会社を復活させることを強く決意したのです。その後、全社一丸となって事業再開へ尽力し、国からの支援もあり、平成24年12月にはほぼ震災前の体制に戻ることができました。

いま当社は、先代の時代から掲げていた「100億円企業を目指す」という目標に向かって歩みを進めているところです。ただ、それは単に当社が儲ければいいということではなく、「100億円分世の中のお役に立つ企業になる」ことでなくてはなりません。

この「世の中のお役に立つために働く」という精神も、『致知』と「社内木鶏」を通じて学んだ教えです。

「社内木鶏」を続けるつれ、社員同士はもちろん、お客様に対しても思い遣りのある温かい会社になっていくのを感じています。

そして何より「社内木鶏」で一番変わるのは社長自身です。

社長が「社内木鶏」に本気で取り組めば、必ずその真剣な思いは社員たちに伝わります。私も当初は社員の感想文をじっくり読むことはなかったのですが、いまでは全てに目をとおし、その感想を封書にして一人ひとりに手渡すようになりました。

中には、「私の腹中の書は『致知』です」と書いてきた社員が何人もいて、私は嬉し涙を流しながら返事を書きました。

これからも、社員とともに『致知』に学び続け、世の中のお役に立つ会社を目指して精進していきたいと思います。

(本記事は『致知』2017年1月号、「社内木鶏ニュース」を一部抜粋したものです。『致知』を活用した社内勉強会・社内木鶏会についてもっと知りたい方はこちらから

 

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