桂歌丸という生き方――目を瞑るその時まで落語の芸を磨き続ける(後編)

 

国民的テレビ番組『笑点』で長く親しまれた落語家の桂歌丸さんが本日7月2日に81歳でお亡くなりになりました。「落語を聞いて笑って、何かの時にこういう笑いがあったなと道徳的なことを悟っていただきたい]と語り、生涯現役を貫き、最期まで落語の精進道を歩み続けた桂歌丸さんの生き方は、私たちの人生をこれからも励まし、勇気づけてくれることでしょう。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

食うか食われるかの真剣勝負

――高座に上がる際はどういった心構えで向かわれるのでしょうか。

 (桂) 

そりゃあ、真剣勝負ですよ。もう食うか食われるかですよね。我われ噺家はお客様に笑ってもらえるか、あるいは楽しんでもらえるかが勝負。

確かに体の具合が悪い時なんかは「うわぁ、きょうは苦しいな」と思うこともありますよ。あるけど、それが芸の中に出ちゃうとお客様がスーッと引いてしまう。

だから諸刃の刀を抜いて、構えて相手と対峙しているのと同じ心境でなかったら到底、高座は務まらないですね。気を抜いたら斬られちゃいますよ。

――真剣勝負に勝つために大切なことは何でしょうか。

 (桂) 

稽古するよりしょうがないですね。我われはもう稽古以外には何もない。「噺百遍」という昔からの教えがありますよ。一つの噺は百回やらないと自分のものにならないと。

私はいまでも最低1日1回は稽古します。他の用事がない日は、お昼の12時半から夕方の5~6時までは稽古の時間と決めているんです。その間、自分の部屋へ籠っちゃう。

 カミさんに言うんです。「いても、いないよ」と。電話が掛かってきても、「いません」って断ってもらう。稽古の最中に電話を取り次がれたりなんかしたら稽古にならないですからね。 

おかげさまでここのところずっと公演で忙しい。同じ噺ばっかりやっちゃいられませんから、落語を覚えなきゃならないですよね。それでね、時間があるから、暇だから落語を覚えようってやってもちっとも覚えられない。 

「明日やんなきゃいけない」「あと2時間後にやんなきゃいけない」って切羽詰まらないとなかなか覚えられないんだね。 

――時間との鬩ぎ合いの中で頭も冴えてくるのですね。

 (桂) 

私は、ですよ。皆さんはどうか分からない。今年の4月には「塩原多助」に出ることになっているので、まだまだこれから覚える、手直しをする、そういう作業をやらなきゃならないですしね。8月にも「牡丹灯籠」を通しでやることになっています。

――まさに歌丸師匠は一寸の光陰を惜しんで落語の道を究めようと修業し続けていらっしゃる。

 (桂) 

人間の人生っていうのは短いもんですよ。だからこそ自分で選んだ道は一途に進めと。それ以外何にもないな。私はそういう神経だもんね。

ですから、ただただ落語をやるよりしょうがない。先ほども申しましたが、目を瞑る時まで現役でいたいですね。自分の落語を磨き続ける。それには自分の心掛けと健康管理だと思いますがね。

「桂歌丸という生き方――目を瞑るその時まで落語の芸を磨き続ける(前編)」はこちらから

 (※この記事は『致知』2014年4月号特集「少年老い易く 学成り難し」より一部抜粋したものです。『致知』には経営や仕事、人生のヒントが満載です。詳細・購読はこちら

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