桂歌丸という生き方――目を瞑るその時まで落語の芸を磨き続ける(前編)

 

国民的テレビ番組『笑点』で長く親しまれた落語家の桂歌丸さんが本日7月2日に81歳でお亡くなりになりました。「落語を聞いて笑って、何かの時にこういう笑いがあったなと道徳的なことを悟っていただきたい]と語り、生涯現役を貫き、最期まで落語の精進道を歩み続けた桂歌丸さんの生き方は、私たちの人生をこれからも励まし、勇気づけてくれることでしょう。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

褒める人間は敵と思え

――これまで数多くのお弟子さんを育ててこられたと思いますが、指導するにあたって心掛けていることはありますか。

 (桂) 

これは今輔師匠から言われた言葉なんですが、「褒める人間は敵と思え。教えてくれる人、注意してくれる人は味方と思え」という教えは大切にしています。 

普通、人間っていうのは褒められれば嬉しいですよね。怒られたら「畜生」と思いますよね。それは逆だって言うんですよ。 

若いうちに褒められると、そこで成長は止まっちゃう。木に例えれば、出てきた木の芽をパチンと摘んじゃうことになる。で、教えてくれる人、注意してくれる人、叱ってくれる人は、足元へ水をやり、肥料をやり、大木にし、花を咲かせ、実を結ばせようとしてくれている人間だって。

これは噺家になってすぐ言われたんです。私の高座を聞いた人が今輔師匠に「彼は子供だけど噺がしっかりしてる」って言ったそうなんです。それを受けて、私に注意してくれたんでしょうね。いまから褒められていたんじゃ、えらいことになるって。

 ――含蓄に富んだお話ですね。

 (桂) 

それと、「噺を教わった人よりも受けて、初めてその人への恩返しになる」っていうのが私の持論なんです。教わった人より受けなかったら恩返しにも何にもなりません。私は若い時から師匠や先輩の前でも「なぁに、負けるもんか!」ってやりましたよ。 

だから、私より受けなきゃダメだって弟子には言うんです。私のところにもずいぶん後輩たちが「教えてください」って来ます。で、教えますよ。「ああしろ、こうしろ」「ここが違う」とね。 

そういうふうに噺を教えることはできるんです。ただ、間を教えることはできない。私たちの商売は、早く自分の間を拵えた人間が勝ちです。いつまで経っても間のできない噺家がいる。

もっと極端に言うと、生涯間のできない噺家がいる。間抜けって言葉があるじゃないですか。それと同じですよ。だから、自分の間を拵えた人間が勝ち。それは自分で研究し、掴むしかないんです。

――人から教わるのではなく自分で掴むしかないのですね。

(桂) 

それから、私が大切にしている言葉に「芸は人なり」というのがあります。薄情な人間には薄情な芸、嫌らしい人間には嫌らしい芸しかできないんです。だから、なるたけ清楚な、正直な人間にならなきゃダメだって。それが芸に出てくる。  

――常日頃、自分を磨いていないとよい芸も生まれないと。

 (桂) 

これは噺家ばかりじゃないですよ。ビジネスマンの方でもそうだと思うんです。だからこういう言葉があるじゃないですか。「品物を売るんじゃなくて自分を売れ」。それと同じですよ。

 ※後編「食うか食われるかの真剣勝負」は、7月3日(火)昼12:00に配信します。ぜひご覧ください。

 (※この記事は『致知』2014年4月号特集「少年老い易く 学成り難し」より一部抜粋したものです。『致知』には経営や仕事、人生のヒントが満載です。詳細・購読はこちら

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