運命を創る愛と感謝の力——ジョン・F・ディマティーニ×鈴木秀子

「よき人生を送るには自分の最高価値観に気づくこと」、そう語るのはアメリカの世界的教育者として名高いジョン・F・ディマティーニさんです。自らの最高価値観に気づき、よりよき人生を送っていく秘訣を、文学博士の鈴木秀子さんと語り合っていただきました。

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よいことも悪いことも受け止め方次第

〈鈴木〉
自分の周囲で不都合な出来事が起きたとしても、その出来事は自分の最高価値観を実現するために必要なものとして受け入れることが大切だと教えていただきました。ということは決して他人や自分自身を責めることはないわけですね。

〈ディマティーニ〉
はい。私たちは物事にすぐによい、悪いとレッテルを貼り、誰かに責任転嫁したくなりますけれども、それは本来ニュートラルで、単に出来事が起きているだけなんですね。

実は、物事はよいとも悪いとも判断できるものではありません。その証拠に、「よい」と評価したものが、数か月、数年後には、実はよくなかったとか、マイナス面があったことに気づくということがあります。逆に醜いと思っていたものにプラスの面を見出すことがあります。結婚でも恋愛でも、素敵と思っていた部分に、後になって苛立つことって多いわけでしょう(笑)。

〈鈴木〉
でも長年の心の習慣で、ついつい「悪いのは悪い」と思ってしまうものですよね。そんな時は「この出来事の中にきっと自分を助けてくれる意味がある」と思い続けることが大事なのでしょうか。

〈ディマティーニ〉
それには何をおいても心のトレーニングが求められますね。例えば、何度も倒れながらも練習を続けて自転車に乗れるようになる。それと一緒です。 

物事の解釈をニュートラルなものにするトレーニングの一つとして、例えば適切な質問を自分に投げ掛けることを私はお勧めしています。それによって意識を平静に保つことができるからです。

 〈鈴木〉
具体的にはどういう質問を投げ掛けたらいいのですか。

ディマティーニ〉
それは「ディマティーニ・メソッド」と呼ぶ一連の質問が有効です。例えば、人生で何か期待に反することが起きた時に「私が最高価値観を達成する上で、この出来事がどのような助けになっているだろうか」と自問するのです。なぜならすべての問題にはデメリットだけでなくメリットが必ずあると、私は確信しているからです。

ここで大切なのは、先ほどシスターがおっしゃったように、何か問題が起きても、その原因は出来事そのもの、もしくは相手その人にあるのではなく、私の出来事や相手に対する不完全な認識によるものだからです。私たちは自身の自己統制、知覚、認識に対して責任を持たなければなりません。

〈鈴木〉
ドクターはご著書でよく感謝や愛ということをおっしゃっています。自分や相手のよいところ、悪いところを両方認めて受け入れることは、必然的にそこに愛と感謝の心が生まれるわけですね。

ディマティーニ〉
そうです。人がバランスの取れた宇宙の秩序(愛)に気づく時、そこに感謝の念が生じるんです。

何にでも感謝できる人は、そうでない人よりも人生で恵まれることが多く、願望が実現する可能性も高くなりますね。感謝こそが成長と願望達成の鍵といってもいいと私は思います。誰かにプレゼントをあげた時、お礼も言わずに脇に置かれたら嫌でしょう。宇宙の反応もそれと一緒です。宇宙が贈り物をする先は、贈り物に対して一番感謝する人です。

私たちの人生で起きたこと、これから起きることは、すべて宇宙からの贈り物です。とはいっても、一見マイナスに思える出来事に潜む隠れたプラスの贈り物を理解するには時間がかかるわけですが。 

〈鈴木〉
いまの時代、人間関係がとても難しくなってきたと言われます。しかし、いままでのお話のように、すべては自分の心の持ち方だと分かれば、社会の人間関係はもっとよくなるに違いありません。

ディマティーニ〉
相手が自分の期待どおりに動いてくれないと裏切られたと怒りを覚えてしまいます。しかし、それは相手ではなく自分の非現実的な期待感が引き起こしたものだという原則が理解できれば、そんな余計なエネルギーは使わなくて済むわけですからね。

夫婦の最高価値を達成させる

〈ディマティーニ〉
オハイオ州で私が行った「ブレイクスルー・エクスペリエンス」セミナーの話ですが、一人の男性が感動のあまりプログラムの最後に私にハグしてくれました。そして続けて言ったんです。

「妻がここにいたらよかったのに。この考え方を彼女にも教えてあげたい」

と。翌日、ニューヨークに帰った私のもとに彼から「家内がそちらに行くので、ぜひカウンセリングをお願いしたい」と連絡が入りました。

飛行機でやってきた彼女に会った時、私は「依頼主のあなたの夫によるとあなた方が問題を抱えているということですが、具体的にどんな問題ですか」と質問しました。

すると彼女は「私たちは離婚を考えているわけではありませんが、コミュニケーションが全く上手くいっていないので、とてもストレスが溜まっています。口論も絶えません。どうにかできないでしょうか」と。

私はまず、前にお伝えした13の質問項目を使って2人の価値観の階層を明らかにしました。夫の価値観の優先順位はビジネス、ゴルフ、友達、車……、そして彼女の場合は、子供、家族、美容、教育……。

自分にとって価値観の優先順位が低いものを代わりにやってもらう人を見つける。それが結婚です(笑)。 

そこで私は彼女と一緒に、2人の最高価値観を繋ぎ合わせる作業を4時間かけて行いました。

「相手の最高価値観を満たすことに、自分の最高価値観がどのように役に立てるだろうか」、これが彼女からの視点です。  

次に「相手の最高価値観は、どのようにあなたの価値観を満たしているか」を見ていきました。こうして、両者の最高価値観がお互いをサポートしていることを認識していきました。 

そのうちにどうなったと思いますか?彼女の心はご主人への感謝の思いでいっぱいになりました。というのも、彼女は長年自分の価値観を夫に押しつけていたことにようやく気づいたんですね。夫に自分と同じ価値観を持ってほしいと期待していたわけです。   

しかしそれは所謂、非現実的な期待です。なぜなら、夫は誰のものでもない本人のユニークな価値観によって形づくられているわけですから。

「バリュー・ファクター」を使って、自分が相手の最高価値観を達成する助けをしていて、相手もまた自分の最高価値観を達成する助けになってくれている。   

そのことに気づいた時、いまのまま、ありのままの夫に対して深い感謝の念が込み上げてきました。  

そして、彼女から「相手(夫)を変えたい」という願望が消えました。 

相手に対して感謝の状態になった上で、次にこれから彼女が夫とどのようにコミュニケーションを取っていくかを一緒に考えました。そこからまた4時間をかけて対話のトレーニングをしました。夫の最高価値観を満たす形で、どうやって自分の価値観を満たすかというコミュニケーションの訓練です。 

トレーニングを終えた後、彼女はすぐにそれを実践し、それからというもの二人は模範的な仲のよい夫婦になっています。

 


(本記事は月刊『致知』20145月号 特集「焦点を定めて生きる」より一部を抜粋・編集したものです)

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ジョン・F・ディマティーニ
アメリカの国際的な教育者。幼少期は学習障碍と診断されサーファーを目指すものの、ヨガの導師ポール・C・ブラックと出会い人生に開眼。大学卒業後、行動心理学、量子物理学など多くの学問を修め、独自のディマティーニ・メソッドを開発。著作は28の言語に翻訳され、年間300日は世界を飛び回っている。世界的ベストセラー『ザ・シークレット』に「現代の哲人」として紹介される。最新刊『Dr.ディマティーニの最高の自分が見つかる授業』(フォレスト出版)をはじめ『正負の法則』(東洋経済新報社)『ザ・ミッション』(ダイヤモンド社)など翻訳書多数。

◇鈴木秀子(すずき・ひでこ)
東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。聖心女子大学教授を経て、現在国際文学療法学会会長、聖心会会員。日本で初めてエニアグラムを紹介し、第一人者として各地でワークショップなどを行う。著書に『幸せになるキーワード』(致知出版社)『死にゆく者からの言葉』(文藝春秋)『愛と癒しのコミュニオン』(文春新書)『あなたは、あなたのままでいてください』(アスコム)など多数。

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