「すっぴん=ずぼら」は間違い? 肌オタクで化粧品会社社長が語る“素肌美人”とは

「すっぴん」は肌レベルが高い証拠!

 

2003年、美容業界で初めて「すっぴん」をコンセプトに商品を生み出し、販売してきたスキンケアメーカー「あきゅらいず」。社長の南沢典子さんは、すっぴんはずぼらではなく、「肌レベルが高い証拠」だと考えています。

ファンデーションでシミやそばかす、毛穴などを隠さずに「すっぴん」で生活するためには、普段からきちんと肌のお手入れをしない限りできません。海外では肌の欠点を隠すよりも、素肌を綺麗に磨く努力に力を入れているといいます。

そんな南沢さんは高校卒業後、大手化粧品メーカーの美容部員として働き始め、美容業界の魅力に引き込まれていきました。南沢さんは入社1年目から前年度売り上げを150%で達成し、以来16年間、常にトップクラスの営業マンとして活躍。その頃の心掛けには目を見張るものがあります。

 「私は完璧主義で負けず嫌いだったため、自社の600円の商品から、さらには他社の新商品や売れ筋商品まですべて自腹で購入して、使い心地を確かめていたんです。当時の高卒の給料は手取りにすると約11万円しかなかったのですが、その全額を化粧品に使っていましたね。また、汚い格好をしていては化粧品を買っていただけないので、ボーナスはすべてファッションに注ぎ込みました。

もう時効だと思いますが、当時はその他に2つ仕事を掛け持ちし、生活費を稼いでいました。

プロとして店頭に立って販売している以上、お客様から商品の詳細を聞かれた時に『分かりません』と答えるのはプロ失格。それでは商品は売れません。必ず自分で使い、人にお薦めしたいと感じたものだけをご提案しました」

その他、お客様目線の提案型販売を意識したところ、5万円もするクリームをたくさん売り上げ、販売員仲間からも驚かれたと言います。

毎日大量の化粧品を使用し、ばっちりメイクをされていた南沢さんが「すっぴん」に目覚めたのはある出来事がありました。

「スキンケアを大事にしていたにもかかわらず、毎朝2時間かけて厚化粧していたため、肌トラブルに悩まさることが多々ありました。加えて、毎月新商品が出てくるので、お客様から『この前はこっちをお薦めしていたのに、今度はこっち?』と言われてしまって。お客様に誠実じゃないなと自分にショックを受けたんです」

その後、ある会社が化粧品開発の新事業を立ち上げることを知り、転職。東洋医学に導かれ、化粧品の原料開発に乗り出しました。そうして試行錯誤を重ね、600項目以上もあるチェックテストをクリアし、できあがった力作が「草根木皮たまり」という10種類のハーブのエキスを抽出した原料でした。そしてそれを基に、現在も主力商品で在り続ける「石けん・パック・クリーム」の3点が誕生しました。

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10年間存続できる会社は100社に1社

順調に商品開発が進んだものの、その後は試練の連続でした。転職先の会社が倒産。化粧品事業だけを買い取って再スタートしたものの、未納税があることが分かり、数億円もの借金を伴っての船出となったのです。

商品力が非常に高かったため、幸いに商品は売れ続けたものの、会社の急成長に社員が追いつけず、社内はめちゃくちゃ。ストライキが頻発したと言います。

南沢さんはそこで屈することなく、社員からアイデアを募って実施し、注目を集める企業の働き方を真似るなど、様々な試みを実施されました。

「目標設定の際にただ数字を掲げるだけでなく、『喜んで商品をリピートしてくださる方を千名増やしましょう』といったように、具体的な業務をイメージでき、ワクワクする目標を立てるように変わりました。すると社員の行動にも変化が生まれ、自主的に動いてくれるようになったんです」

南沢さんは取材時にこう述懐されました。

「よく、起業してから10年間存続できる会社は100社に1社と言われていると思うんですけど、私たちの10年の歩みを振り返ると、風が吹けば左右に揺れ動くような小さな会社からスタートし、どうすれば生き残れるか、闘い続けた期間だったと思います。創業15年経ったいま、ようやく社内にまとまりが生まれてきたと感じています」

最後に、子育てとの両立、社員の育成に関して、話されたひと言が非常に心に残っています。

「私は職人の家系で育ったため、子育ても仕事も背中で語ることが多かったと思いますし、『仕事とは盗むもの』だと思ってこれまで仕事をしてきました」

「あきゅらいず」は現在、社員食堂「森の食堂」を運営する他、社員の自発性に任せた経営を行い、常に笑顔、活機、そして素肌が輝く職場になり、様々な業界から注目を集める会社となっています。

(☆本記事は『致知』最新号2018年7月号 連載「第一線で活躍する女性」の記事を一部、抜粋したものです。

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みなみさわ・のりこ  

昭和42年東京都生まれ。高校卒業後、16年間、大手化粧品会社の美容部員として勤務。平成15年中国にて東洋ハーブの濃縮エキス「草根木皮たまり」を開発。同年「あきゅらいず」を設立。著書に『すっぴん美人の教科書』(PHP研究所)がある。

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