ユニクロはなぜ挑戦し、発展し続けるのか——柳井正が語る企業発展の要諦

家業の紳士服店を、世界的衣料品企業に育て上げたファーストリテイリング社長の柳井正さん。ユニクロやジーユー(GU)を擁する同社はアパレル分野で世界第3位の企業へと躍進を遂げています。「チャンス」をどう掴むか、「リスク」とどう向き合うか……稀代の経営者が様々なテーマについて切り込んだ『致知』2001年の記事から特別にご紹介します。
『致知』最新号(2021年1月号)では、コロナ禍を踏まえた柳井さんの最新対談記事がお読みいただけます。対談の様子はこちら

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迷っている時こそチャンス

日本にはいま閉塞感があって、皆さんは何かチャンスがないように誤解されているようですけど、みんなが困っていて、どっちの方向にいこうかと迷っているときにこそチャンスが本当はあるんです。

日本はいままでのやり方では駄目だと思い始めていますが、そんなときこそ新しいやり方はこれですよ、自分たちはこういう新しい企業ですよ、とアピールすれば、そこに活路が拓けるんじゃないかと思うんです。

だから、僕としてはそういうことを人よりも先にやりたい。事業というものは、ある意味では早いもの勝ちですからね。

ほとんどの人が同じようなことを考えているんですけど、100人いたら99人は本気で実行していないんです。100人のうちの一人になろうと思わない限り、事業というものはうまくいかないと思うんです。

先ほどのリスクの件もそうなんですが、リスクというものは逃げれば逃げるほど向こうからやって来るんです。

リスクを本当にコントロールしようと思ったら、リスクはこれだとはっきりわかって、それをコントロールするためにどういうことをやったらいいのかということを、自分のこととして考えない限りコントロールできない。そのリスクを人に押しつけていたら、人はそのリスクを自分のことではないのでコントロールしない。当たり前のことですよね。

リスクを他人に転嫁するな

いまはそうでもないですけど、上場するまではずっと自己資本比率が10何%あるかないかという状況だったので1シーズン棒に振ると、もうつぶれてしまうんです。そういう企業だったので、リスクがコントロールできない限り、生き残っていけなかったんです。

自分のリスクだと思ってそれをコントロールしようと思わない限りコントロールできない。しかし、一般の小売業の人は自分のリスクを他の人に転嫁することによってリスクを免除してもらおうと思っているんです。

それをやると当然なんですけど、他人に転嫁した分のリスク料が商品に加算されるので原価が高くなってしまう。だから、小売業は儲からないんです。

一般の小売業の人にとって、商品は全部メーカーのものなんですね。自分には責任がない、と。返品もするし、メーカーの商品と思っているから、自分で工夫して儲けようとも思わない。悪い商品を作ったら、それはメーカーの責任だとリスクを転嫁してしまう。それでは商品を右から左に流すだけで低いマージンしかとれない。だから、儲からないんです。

しかし、自分で買って売っている以上は、それは自分の商品なんですね。自分の商品だと思ったら、そこにいろいろな工夫が生まれてくるんです。小売業のマージンというのは低い。

0.1%節約するのにものすごく努力が要るんです。でも、僕は商品の本当の原価率というものはもっと低いと思うんですね。ほとんどが製造費とか物流費とか販売費にとられて、それをSPAで合理化していったら、高い利益は可能になんじゃないかと思うんです。それ以上に儲けて、しかも成長する秘訣はないんじゃないかと思うんです。

独立自尊の商売人になれ

僕が社員に要求することは、自分で自分のサイクルを回せということです。

商売がおもしろいのは、自分で計画して、自分で実行して反省し、この次はもっとこういうふうにうまくやろうと自分でサイクルを回すことができるからです。それを人によって回されたり、人の指示でやったら、これほどおもしろくないものはないんです。

うちの社員には「独立自尊の商売人になれ」と言っているんです。

自分を尊敬しようと思ったら、自分で自分をコントロールできるようでないと、自分を尊敬できません。僕は日本を駄目にした元凶は、やはりサラリーマン社会じゃないかと思うんです。それも大会社の安定サラリーマン。いまこそ昔の自営業者の精神に戻るべきです。松下幸之助さんも言っているでしょう。社員稼業をするように、と。

社員稼業を追求するような世の中になったのに、昔の延長線上でサラリーマンの意識でやっているからうまくいかないんです。ほとんどの人がそうだし、個人で抱えている問題も、会社で抱えている問題も、日本の国で抱えている問題も、僕は全部一緒だと思いますね。

業界の常識を信じるな

僕は日本が駄目になりつつあるもう一つの原因は、老化だと思うんです。年を取ると、どうしても安定志向になります。人間ですから、仕方のないことなんですが、企業にとって安定志向というのは一番危険なことだと思うんです。

若いと、これからどうやって生きていこうかといろいろ考えますよね。仕事に関しても自分なりに工夫して、過去の人とは違ったことをやろうと考えます。マンネリになったら、もうお終いです。

みんな古い常識にとらわれ過ぎているんですね。業界の常識的なことはあまり信じないほうがいい。

よく考えたら、カジュアルというのは、昔でいえば作業着とかユニフォームだったんですね。何歳用の作業着とか、年配の人には向かないユニフォームというものがないように、カジュアルなら人それぞれ自分なりの感覚で着こなせばいいんじゃないかと思うんです。

だから、ユニクロはいつでも、どこでも、だれでも着られるカジュアルを、あらゆる世代の男女に向けて販売しているんです。

(本記事は『致知』2001年8月号 特集「一国は一人を以て興り、一人を以て亡ぶ」より一部を抜粋したものです)

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◇柳井正(やない・ただし)
昭和24年山口県生まれ。46年早稲田大学卒業後、ジャスコ入社。47年ジャスコ退社後、父親の経営する小郡商事に入社。59年カジュアルウエアの小売店「ユニクロ」第1号店を出店。同年社長就任。平成3年ファーストリテイリングに社名変更。11年東証1部上場。14年代表取締役会長兼最高経営責任者に就任。いったん社長を退くも17年再び社長復帰。著書に『成功は一日で捨て去れ』『一勝九敗』(ともに新潮文庫)『柳井正 わがドラッカー流経営論』(日本放送出版協会)などがある。

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