ユニクロの挑戦――柳井正が17年前に語ったこと(前編)

リーダーシップ

家業の紳士服店を世界的なカジュアル衣料品企業に育て上げたファーストリテイリング社長の柳井正さん。いまや売上は1兆8600億円に達し、アパレルで世界第3位の企業へと躍進を遂げています。今回ご紹介するのは、いまから17年前、柳井さんが52歳の時に『致知』に初登場された2001年の貴重な記事です(前編)。

リスクをコントロールせよ

日本にはいま閉塞感があって、皆さんは何かチャンスがないように誤解されているようですけど、みんなが困っていて、どっちの方向にいこうかと迷っているときにこそチャンスが本当はあるんです。

日本はいままでのやり方では駄目だと思い始めていますが、そんなときこそ新しいやり方はこれですよ、自分たちはこういう新しい企業ですよ、とアピールすれば、そこに活路が拓けるんじゃないかと思うんです。

だから、僕としてはそういうことを人よりも先にやりたい。事業というものは、ある意味では早いもの勝ちですからね。ほとんどの人が同じようなことを考えているんですけど、100人いたら99人は本気で実行していないんです。100人のうちの一人になろうと思わない限り、事業というものはうまくいかないと思うんです。

先ほどのリスクの件もそうなんですが、リスクというものは逃げれば逃げるほど向こうからやって来るんです。リスクを本当にコントロールしようと思ったら、リスクはこれだとはっきりわかって、それをコントロールするためにどういうことをやったらいいのかということを、自分のこととして考えない限りコントロールできない。そのリスクを人に押しつけていたら、人はそのリスクを自分のことではないのでコントロールしない。当たり前のことですよね。

リスクを他人に転嫁するな

いまはそうでもないですけど、上場するまではずっと自己資本比率が10何%あるかないかという状況だったので1シーズン棒に振ると、もうつぶれてしまうんです。そういう企業だったので、リスクがコントロールできない限り、生き残っていけなかったんです。

自分のリスクだと思ってそれをコントロールしようと思わない限りコントロールできない。しかし、一般の小売業の人は自分のリスクを他の人に転嫁することによってリスクを免除してもらおうと思っているんです。それをやると当然なんですけど、他人に転嫁した分のリスク料が商品に加算されるので原価が高くなってしまう。だから、小売業は儲からないんです。

一般の小売業の人にとって、商品は全部メーカーのものなんですね。自分には責任がない、と。返品もするし、メーカーの商品と思っているから、自分で工夫して儲けようとも思わない。悪い商品を作ったら、それはメーカーの責任だとリスクを転嫁してしまう。それでは商品を右から左に流すだけで低いマージンしかとれない。だから、儲からないんです。

しかし、自分で買って売っている以上は、それは自分の商品なんですね。自分の商品だと思ったら、そこにいろいろな工夫が生まれてくるんです。小売業のマージンというのは低い。0.1%節約するのにものすごく努力が要るんです。でも、僕は商品の本当の原価率というものはもっと低いと思うんですね。ほとんどが製造費とか物流費とか販売費にとられて、それをSPAで合理化していったら、高い利益は可能になんじゃないかと思うんです。それ以上に儲けて、しかも成長する秘訣はないんじゃないかと思うんです。

 

 (本記事は『致知』2001年8月号特集「一国は一人を以て興り、一人を以て亡ぶ」より一部抜粋したものです)

 

柳井正(やない・ただし)

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昭和24年山口県生まれ。早稲田大学卒。46年早稲田大学卒業後、ジャスコ入社。47年ジャスコ退社後、父親の経営する小郡商事に入社。59年カジュアルウエアの小売店「ユニクロ」第1号店を出店。同年社長就任。平成3年ファーストリテイリングに社名変更。11年東証1部上場。14年代表取締役会長兼最高経営責任者に就任。いったん社長を退くも17年再び社長復帰。著書に『成功は一日で捨て去れ』『一勝九敗』(ともに新潮文庫)『柳井正 わがドラッカー流経営論』(日本放送出版協会)などがある。

 

 

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