稲盛和夫の「働き方」

もはや詳しい説明は不要と思える偉業を産業界に遺した稲盛和夫氏。社員の意識を変えることで、経営破綻したJALを僅か2年8か月で再上場へと導いた稀代の名経営者は、働くことの意義をどう考え、伝えていたのか。

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与えられた仕事を天職と思う

――いまから7年前、京セラの伊藤謙介相談役を取材させていただいた時に、「東京オリンピックが開催されていることを知らなかった」と聞いて驚いたのですが、稲盛名誉会長もご存じなかったですか?

〈稲盛〉
いや、知らなかったことはありません。知っておったと思いますけれども、関心はありませんでした。それくらい仕事に燃え、懸命に働いていたのでしょうね。

その頃、私は「まず工場を構えた地元の西ノ京原町一になろう。次は中京区一、その次は京都一、そして日本一、さらには世界一だ。我われは世界一の企業になろうではないか」と壮大な夢を語って、それこそ「狂」がつくほど凄まじい勢いで働いていました。

毎日夜10時、11時まで仕事をしていたのですが、ラーメンの屋台のチャルメラが聞こえてくると、皆で食べに行って、そこからまたもうひと頑張りする。工場に何日も泊まり込んで仕事をしていたものです。まさに寝ても覚めても、仕事に没頭していました。

――働くことの大切さをよく社員さんに語られたそうですね。

〈稲盛〉
働くということは、生きていく糧を得るためのものだというのが一般的ですけれども、そうではなくて、自分の人間性を高めていくためになくてはならないものです。

一所懸命働くことによって、自分自身の心を高め、自分の人生を精神的に豊かなものにしていく。同時に、収入も得られますから、物質的な生活も豊かになっていく。ですから、働くということは大変大事なことだと思っています。

人は得てして、恵まれた環境にあっても、与えられた仕事をつまらないと感じ、不平不満を口にしがちです。近年、若者の離職率が増加しているのもそういう理由なのでしょう。

しかし、それで運命が好転するはずはありません。与えられた仕事を天職と思い、その仕事を好きになるよう努力していくうちに不平不満は消え、仕事も順調に進むようになっていく。そして、物心共に豊かな素晴らしい人生を送ることができるのです。


 (本記事は月刊『致知』2018年5月号 特集「利他に生きる」より一部を抜粋・編集したものです

2022年12月号 特集「追悼 稲盛和夫」にて、本誌最後となったロングインタビューを再掲いたしました

▲初出時には掲載できなかった秘蔵写真も多数ご紹介

【特集「追悼 稲盛和夫」を発刊しました】

去る8月24日、稲盛和夫・京セラ名誉会長が逝去されました。35年前、1987年の初登場以来、折に触れて様々な方との対談やインタビューにご登場いただくのみならず、たくさんの書籍の刊行、数々のご講演を賜るなど、ご恩は数知れません。
生前のご厚誼を深謝し、月刊『致知』12月号では「追悼 稲盛和夫」と題して特集を組みました。豪華ラインナップは以下特設ページよりご覧ください。
◇稲盛和夫(いなもり・かずお)
昭和7年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。34年京都セラミック(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。昭和59年には第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任、平成13年より最高顧問。22年には日本航空会長に就任し、27年より名誉顧問。昭和59年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。また、若手経営者のための経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。著書に『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則』『成功の要諦』(いずれも致知出版社)など。

〈稲盛和夫氏から寄せられたメッセージ〉

日本人の精神的拠り所として、長きにわたり多大な役割を果たしてこられたことに、心から敬意を表します。
『致知』は、創刊以来、人間の善き心、美しき心をテーマとする編集方針を貫いてこられました。近年、その真摯な姿勢に共鳴する読者が次第に増えてきたとお聞きしています。それは、私が取り組んでまいりました日本航空の再生にも似て、まさに心の面からの社会変革といえようかと思います。
今後もぜひ良書の刊行を通じ、人々の良心に火を灯し、社会の健全な発展に資するという、出版界の王道を歩み続けていただきますよう祈念申し上げます。
 ――京セラ名誉会長・日本航空名誉顧問 稲盛和夫 

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