2018年05月31日
私たちの健康や日々のパフォーマンスに欠かせない睡眠。しかし日本人の睡眠時間は世界的に短く、実に約7割の人が睡眠に何らかの問題を抱えているとも言われます。良質な睡眠を得るためにはどうすればよいのか。睡眠研究のパイオニア・白川修一郎さんにお話しいただきました。(第2回/全3回)
日本人の睡眠時間が短い理由
(白川)
ではなぜ、日本人の睡眠時間は減少の一途を辿り、国際的に見ても極端に短くなってしまっているのでしょうか。
労働を美徳とする文化やスマートフォンなど電子機器の普及など、様々な要因はありますが、私が特に声を大にして伝えたいのは、日本における〝睡眠教育〟の欠如に他なりません。
睡眠研究の深化を受け、欧米諸国では早くから睡眠教育の充実を図ってきました。各地域には睡眠障害センターが設けられ、ほとんどの大学に睡眠を専門にした講座があり、睡眠指導ができる人材の育成にもしっかり取り組んできています。
また、各企業も社員の睡眠の質を高め、健康増進や仕事の生産性を上げようと、研修などに睡眠教育を取り入れています。
アジア諸国でも韓国や台湾、シンガポールなどの大学には専門講座がありますが、先進国でいまだにゼロなのは日本だけ。企業の研修向けに睡眠指導ができる人材も圧倒的に不足している状況です。
快眠で企業の生産性もアップ
(白川)
その中でも継続的に睡眠教育を行ってきた数少ない日本企業の一つにJR東海があります。
特に鉄道事業では、内勤と外勤とを問わず不規則交代勤務に従事する人が大半なこともあり、睡眠時間も不足しがちで、眠気による人為的ミスをいかに解消するかが課題となります。
そこでJR東海は、私も在籍していた旧国立精神・神経センターと共同で睡眠自己管理システムを開発し特許を取得しました。
その結果、JR東海ではシステム導入前に比べて、眠気による人為的ミスや出勤遅延など大幅に減少し、相当な成果を上げてきています。日本人も日本企業も、良質な睡眠が私たちの心身の健康や仕事の生産性向上に果たす役割にもっと注目する必要があります。
☆この続きはこちらをご覧ください⇒「一億総不眠時代を生き抜く快眠メソッド」
(本記事は『致知』2016年8月号の記事より一部抜粋したものです)
◇白川修一郎(しらかわ・しゅういちろう)
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昭和24年福岡県生まれ。52年東京都神経科学総合研究所研究員、平成3~21年国立精神・神経センター精神保健研究所老人精神保健研究室長、精神保健研修室長、東京都神経科学総合研究所客員研究員。現在、睡眠評価研究機構代表。医学博士。睡眠研究のパイオニアとして知られ、JR東海などの企業の睡眠教育に携わり、各メディアでも睡眠科学に基づく正しい睡眠法を解説している。著書に『脳も体もガラリと変わる! 「睡眠力」を上げる方法』(永岡書店)『ビジネスパーソンのための快眠読本』(ウェッジ)など多数。