2017年12月29日
経済界の重鎮である牛尾治朗さん(現・ウシオ電機相談役)が〝名プロデューサー〟と仰ぐ経営者がいます。「クロネコヤマトの宅急便」でお馴染みのヤマト運輸の生みの親、小倉昌男さんです。小倉さんが名プロデューサーたるゆえんはどこにあるのでしょうか。牛尾さんのお話は、この大変化の時代におけるリーダー論にも及びます。
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小倉さんの足跡から読み取る教訓
一口にプロデューサーと言ってもいろんなタイプがあり、プロデューサーでありながら演出を務める人、あるいはプロデューサーを務めながら脚本を手掛ける人もいます。
映画『市民ケーン』などの傑作で知られるオーソン・ウェルズに至っては、プロデューサーと監督、製作、脚本を兼務し、さらには主演までこなしています。リーダーの個性により、様々なタイプのプロデューサーがあってよいと私は思います。
ヤマト運輸元会長の小倉昌男さんは、宅急便という画期的なサービスを創造した名プロデューサーです。
小倉さんの実家の運送会社は、創業時より百貨店の配送を専属で請け負っていました。
しかし、立場の弱い下請けのままでは将来はないと考えた小倉さんは、経営の実権を握ると思い切って百貨店との取り引きを打ち切り、独自に個人向け小口貨物配送サービスを始め、大成功を収めたのです。
アメリカからやってきたアマゾンも、小倉さんが礎を築いた宅配網がなければ、日本でここまで大きな成功を収めることはできなかったでしょう。
卓越した先見性と実行力を兼ね備えたプロデューサー・小倉さんの実績は、いまを生きる私たちにも多くの教訓を与えてくれます。
日本の城には、四方を見渡せる高い天守閣があります。
城主はそこへ上ることによって時代を肌で感じ、大きな決断を下すことができたのだと思います。
未曾有の大変化を迎えたいま、私たちはより高い天守閣からの視点で今後の趨勢を見極め、果敢に道を切り拓いていくプロデューサーでありたいものです。
(本記事は『致知』2017年1月号 連載「巻頭の言葉」より一部を抜粋したものです)
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◇牛尾治朗(うしお・じろう)
昭和6年兵庫県生まれ。28年東京大学法学部卒業、東京銀行入行。31年カリフォルニア大学政治学大学院留学。39年ウシオ電機設立、社長に就任。54年会長。令和2年相談役。平成7年経済同友会代表幹事。12年DDI(現・KDDI)会長。13年内閣府経済財政諮問会議議員。著書に『わが人生に刻む30の言葉』『わが経営に刻む言葉』『人生と経営のヒント』(いずれも致知出版社)がある。