京セラ・稲盛和夫の判断基準

京セラ、KDDIを創業し、経営破綻した日本航空を僅か1年で成し遂げた日本を代表する経営者・稲盛和夫さん。京セラ創業期から心を伸ばすことが経営を伸ばすことだという信念を貫いてきた稲盛さんが語る、目指すべき生き方、リーダーの在り方とは――。

人間として正しいことを追求する

仕事は真剣勝負の世界であり、その勝負には常に勝つという姿勢で臨まなければなりません。「従業員のために、また家族のために命に代えてもこの会社を守っていくのだ」という凄まじい気迫、信念ほど経営者を強くするものはないのです。

経営くらい、ボクシングやレスリング・相撲などの格闘技にも似た闘争心が必要なものはないと、私は思っています。

経営にとって大切なことは「人間として正しいことを追求する」ことにあると思っています。それは、幼かった頃に両親や年長者から褒められたり、叱られたりした経験から学んだ、極めて初歩的な倫理観と同じものです。私はそれを生きる上での原理原則とし、またリーダーとしての判断基準にもしてきました。

つまり、人間としての原点に立ち返り、「人間として正しいことなのか、正しくないことなのか」「よいことなのか、悪いことなのか」ということが、私の生き方や考え方のベースになっています。

また、仲間との遊びをとおして身につけた部分もありますね。

小学校の4、5年生の頃はガキ大将でしたから、学校から帰ってきてからは、近所の子供たちを集めて遊んでおったわけです。戦争華やかなりし時代でしたから、子供たちの間でも「戦争ごっこ」が流行っておりました。

私は毎日その日の遊びのシナリオから、敵味方の配役まで全部自分で考えて指示をしていたんです。でも、「おまえは斥候だから匍匐前進やって敵情を探ってこい」なんて言うと、土でどろどろになりますから、やはり「嫌だ」という子も出てくる。それを脅したり宥めたりしながらやらせるわけです(笑)。

そうして遊び終わったら、仲間を自分の家に連れていっておやつを与えていました。おふくろが用意してくれていたサツマイモを蒸した程度のおやつですが、時には自分が食べなくても仲間に食べさせた。

要するにリーダーは自分を後回しにしても、働いてくれた部下を労ってやらなければならないんですね。そういう人を使う術というものは、10歳か11歳の頃に遊びの体験をとおして覚えたのだと思います。

才能は世のため人のために使う

京セラやKDDIを立派な会社にして、JALの再建も果たして、確かに私には少しは経営の才能というものがあったのでしょう。しかし、そういう才能を私が持っている必要があったのだろうかと。

この社会は一つの演劇を演ずる劇場のようなものだと思っています。劇団には主役を演ずる人、脇役を演ずる人、大道具、小道具、衣装の準備をする人、様々な役回りがあるわけです。

現代において、京セラやKDDIをつくる人は必要だったかもしれないが、その才能は別に私が持っている必要はなかった。同じような才能を与えられた人がいれば、JALの再建はその人物を中心に行われたと思うのです。

私はたまたまこの世界の創造主から才を与えられ、役割を与えられた。ならば、その才を自分のために使って「俺がやった」などと自惚れてはならない。

やはり従業員のため、世のため人のために使う。それがリーダーだと思い、これまでやってきました。

(本記事は『致知』2012年10月号に掲載された記事を抜粋編集したものです)

【登場者紹介】

◇稲盛和夫(いなもり・かずお)

昭和7年鹿児島県生まれ。30年鹿児島大学工学部卒業後、京都の碍子メーカーである松風工業入社。34年知人より出資を得て、京都セラミック株式会社(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。また昭和59年に第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任。平成13年より最高顧問。22年国の要請で日本航空会長に就任。無給で再建の指揮を執った。24年2月から名誉会長に。著書は『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則』『成功の要諦』(いずれも致知出版社)他多数。

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