誠心誠意 井上和幸(清水建設会長)

各界を代表する企業、機関、団体を牽引してきたリーダーに、人生観・仕事観を形成した体験や、貫いてきた信条を披歴いただく連載「私の座右銘」。
今回ご登場いただいたのは、言わずと知れた日本を代表するスーパーゼネコンの一角・清水建設の井上和幸会長です。井上会長は、大学院を出て新卒で入社し、建築現場での実務に始まり、現在まで45年にわたって同社で仕事を積み上げてこられたまさに叩き上げです。現場で叱咤激励とともに教え込まれた初代・清水喜助翁以来のものづくり精神のお話から、青天の霹靂であった営業への異動、名古屋支店長への昇進、そして社長への抜擢まで――特に、社長就任後すぐに直面した業界全体を巻き込む問題への対処において、井上会長が一貫してきたものとは。

誠心誠意——建築の出来栄え、品質に臆病なほど謙虚になる。決して妥協せず、誠実にやり抜くという清水建設のものづくりの精神を強く胸に刻みました

井上和幸

「何をやるのでも、中途半端はいけないよ。自分が納得するまで、一所懸命やりなさい」

1804(文化元)年、越中富山の大工であった初代・清水喜助(きすけ)が江戸で開業した清水屋を前身とする清水建設に入社し、早や45年。人生を振り返ると、幼き日に両親に諭された冒頭の言葉が蘇ります。

建設とは全く畑違い、税理士の父を持つ私がこの道を選んだ裏にも、母の後押しがあります。

「お父さんの後を継がなくたっていいから、外に出て好きなことをやりなさい」。

学校の図画工作が大好きだった私は、早稲田大学大学院で建設工学を修め、建設業の経営分析をテーマに修士論文を執筆。研究室の先輩が相次いで競合のゼネコンに進む中、建築事業を主とした堅実な経営姿勢に惹かれ、当社の門を叩きました。

最初の現場は忘れもしません。1981年春に入社後、3か月の研修を経て横浜支店に配属となり、大手電機メーカー発注の施工現場に配属されました。

右も左も分からない中、協力会社の職長にも教えを請いながら、がむしゃらに施工管理の仕事に従事。完成間近に外壁回りの足場を解体し、建物が全貌を現した時は心から感動を覚えました。

ところが夕刻、支店の建築部長が視察に来た折でした……

~本記事の内容~
◇入社早々に叩き込まれたものづくりへの矜持
◇突然の異動を受け止め、真意に気づかされる
◇渦中の指針とした渋沢栄一『論語と算盤』の哲学

プロフィール

井上和幸

いのうえ・かずゆき――昭和31年東京都出身。56年早稲田大学大学院理工学研究科修了、清水建設入社。平成25年執行役員 建築事業本部 第二営業本部長。26年常務執行役員 名古屋支店長。取締役専務執行役員を経て28年社長。令和7年4月より現職。


編集後記

街角の工事現場で見かける水色の文字。本体だけで1万人を超える社員を擁し、日本全国はもとより世界で施工を手掛ける清水建設を約10年にわたって率いてきた井上会長は、明朗かつ深沈厚重という印象を受けました。弊誌『致知』では、同社の業績を牽引し、業界の談合問題からの信頼回復に尽力した前会長・宮本洋一相談役とご縁を得、ご自身の体験談、また明治時代の清水建設に大きく寄与した渋沢栄一翁の教えをひも解いていただいてきました。今回、そのバトンを受け取り、トップとしてさらなる試練に処してきた井上会長の姿勢に、仕事と人生において不可欠な「誠心誠意」の姿勢を教えられた思いです。

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