退かざる者は必ず進む 数原滋彦(三菱鉛筆社長)

各界を代表する企業、機関、団体を牽引してきたリーダーに、人生観・仕事観を形成した体験や、貫いてきた信条を披歴いただく連載「私の座右銘」。
今回ご登場いただいたのは、間もなく創業から140周年を迎える文具業界のリーディングカンパニー、三菱鉛筆の六代目・数原滋彦社長です。デジタル化、少子化の影響を直に受ける文具業界は、20年以上前から先行きの暗さが囁かれていました。しかしそんな中にあって同社は、このほど5期連続増収を達成し、世界を相手に日本のものづくりで注目を浴びています。伝統ある会社の看板を若くして継承した数原社長は、就任早々のコロナ禍をはじめ、傍目には逆境といえる状況にいかに向き合ってきたのでしょうか。

おおよそ世間の事物、進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む。進まず退かずしてちょたいする者はあるべからざるの理なり」(福澤諭吉)

倒れるなら、前のめりに。追い込まれても、全力で打てる手を打ち続ければ、「前進」のチャンスが巡ってくるのではないでしょうか。

数原滋彦
三菱鉛筆社長

私が社長を務める三菱鉛筆の歴史は、1887(明治20)年、初代・眞崎仁六(まさきにろく)が新宿内藤町に創業した眞崎鉛筆製造所に端を発します。早くから品質への信頼は高く、当時の逓信省に三種の商品が「局用鉛筆」として採用されたのを記念し、家紋の三鱗(みつうろこ)を基に三菱のマークを考案、商標登録に至りました。

時代を下って1958年、技術部長だった祖父・数原洋二が、欧米視察の際に日本の鉛筆の評価が低いことを憂い、一念発起。総力を挙げて高級鉛筆「uni」を世に出しました。数原家としては、それ以前の三代目の曽祖父から祖父、父、私と四代にわたり社長を務めさせていただいています。

そのために、幼い頃は父が長を務める群馬工場や本社に連れて行ってもらうこともありました。三菱鉛筆という会社は、常に自分の傍にあったと言えます。ただ一方で、父は言った覚えはないと言っていますが、こう諭されていたと記憶しています。

「滋彦、会社は数原家のものじゃないよ」

上場企業である当社においては、社長を決めるのは皆様であって、務めを与えていただいてきたに過ぎないと。こうした環境が、私の思考をつくりました。





~本記事の内容~
 ◇「会社は数原家のものじゃないんだよ」
 ◇小学校の恩師が教えてくれた五つの〝もの〟
 ◇追い込まれても打つ手はある、力を尽くせば活路が見える

プロフィール

数原滋彦

すはら・しげひこ――昭和54年東京都生まれ。慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部卒業後、平成13年野村総合研究所入社。17年三菱鉛筆入社。25年取締役経営企画担当。29年常務取締役、30年取締役副社長、令和2年より代表取締役社長。


編集後記

鉛筆ブランド「uni」やジェットストリーム、ポスカ、プロッキーなど高品質の人気商品で親しまれ、文具業界で話題をつくり続ける三菱鉛筆。六代目の数原滋彦社長は、2020年に41歳で就任した若きリーダーです。老舗企業の社長令息というと、一般社員とは距離があるイメージを抱いていましたが、お会いするとそれはいい意味で裏切られました。同席された広報部門のトップの方とも全く壁を感じず、現場で共に汗を流し、よく遊び、フラットな企業風土を築かれていることを感じました。業界の歴史は古いながら、常に創造的な仕事をし続ける同社の強さの秘密は、そういうところにもあるのかもしれません。

2026年1月1日 発行/ 2 月号

特集 先達に学ぶ

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