永遠の憧れを追って 米沢 唯(新国立劇場バレエ団プリンシパル)

日本最高峰の「新国立劇場バレエ団」でプリンシパルを務める米沢唯氏。トップダンサーとしてバレエ団を牽引してきた氏を病が襲ったのは、2024年、主役を務める公演中のことだった。心臓疾患による無念の途中降板から1年弱、一時は引退の2文字が頭を過るも、懸命な闘病と出逢いを経て主役に復帰を果たした。病を越えて、命あることへの感謝、バレエへの情熱が一層芽生えたという氏に、これまでの歩みと決意を語っていただいた。【写真=©Yumiko Inoue】

バレエは私にとって、いつまでも手の届かない、美しく遠い存在なんです。
だから時間はいくらあっても足りない。もっと踊りたい。もっと挑戦したい。
そう強く心に抱いています

米沢 唯
新国立劇場バレエ団プリンシパル
【写真=闘病を経て、主役復帰を果たした『ジゼル』の公演(新国立劇場バレエ団『ジゼル』撮影:長谷川清徳)】

──2013年から、日本最高峰の新国立劇場バレエ団でプリンシパル(トップダンサー)として活躍されている米沢さんですが、キャリアの中でも昨年は苦しい時期を過ごされたとお聞きしました。

〈米沢〉
そうですね。昨年6月のことでした。主役として出演していた『アラジン』の公演中に突然、心拍の異常を起こし、途中降板したんです。医師に掛かったら心臓疾患と診断され、一時は引退も考えました。

──闘病を経て、今年4月には『ジゼル』で待望の主役復帰を果たされました。現在の率直な気持ちと心境の変化を教えてください。

〈米沢〉
診断を受けた時は、一体私はこれからどうなるんだろうという不安があったので、いまこうして何の心配もなく舞台に立っていることが信じられないというか……。本当に有り難い気持ちでいっぱいです。

闘病前と一番変わったのは、「いまを大切にしよう」と思うようになったことです。観客の皆様に喜んでもらいたいという気持ちはもちろんありつつも、一つひとつの舞台を、私自身が楽しかった、幸せだったと思えるように踊りたい。ある意味、より純粋にバレエを楽しめるようになりました。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
◇闘病を経て主役に復帰 いま心に思うこと
◇バレエに魅せられた原点
◇運命を変えた挫折と出逢い
◇いつまでも手の届かない美しく遠い存在

プロフィール

米沢 唯

よねざわ・ゆい――昭和62年東京都生まれ。3歳で愛知県に引っ越し、塚本洋子バレエスタジオで学ぶ。平成16年ヴァルナ国際バレエコンクールジュニア部門第1位。17年世界バレエ&モダンダンスコンクール第3位。18年19歳で単身渡米し、サンノゼバレエ団に入団。22年新国立劇場バレエ団にソリストとして入団。25年プリンシパルに昇格。令和2年芸術選奨文部科学大臣賞受賞。


編集後記

取材は、主役を務める『シンデレラ』の公演を控えた9月9日(火)に行われました。同バレエ団で舞踊芸術監督を務め、過去に弊誌のトップインタビューや連載に登場いただいた吉田都さん、米沢さんの実父で、同じく弊誌に登場いただいた演出家の竹内敏晴氏(故人)との縁もあり、和やかにスタート。若くして第一線で活躍してきた歩みに感銘を深めると共に、バレエの演技を思わせる繊細な語り口にはとても惹き込まれました。闘病の過程、病を経て掴んだ心境には、逆境にある人々を感化する普遍の響きがあります。今後益々のご活躍を心から願っています。

2025年11月1日 発行/ 12 月号

特集 涙を流す

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