12 月号ピックアップ記事 /意見・判断
対馬丸事件の悲劇を忘れない 寿大 聡(俳優・映画監督)

アメリカ軍の攻撃によって撃沈され、700名を超える子供たちが一瞬のうちにして犠牲になった対馬丸事件。それほどの惨劇にも拘らず、対馬丸事件については戦後ほとんど知らないまま現在に至っています。子供たちが乗った疎開船・対馬丸はなぜアメリカ軍の攻撃を受けたのか、なぜ事件は忘れられていったのか。その真相に迫るドキュメンタリー「満点の星」を制作した俳優の寿大聡さんに歴史の悲劇と教訓を紐解いていただきました。

なぜ人類は歴史に学ばず相変わらず同じ過ちを繰り返すのかと思わずにはいられません。
そして常に犠牲になるのは対馬丸と同じ、何の罪もない子供たちなのです
寿大 聡
俳優・映画監督
1944年8月22日、沖縄県那覇市から多くの子供たちを乗せて疎開先の九州へ向かっていた対馬丸が、アメリカの潜水艦ボーフィン号の攻撃を受け撃沈。これにより、現在把握できている人数で1484名、そのうち784名もの子供たちが一瞬で命を落としました。人類史上稀にみる虐殺「対馬丸事件」です。
多くの子供たちが犠牲になった悲劇であるにも拘らず、その詳細や被害の実態については、戦後になってもほとんど知られないまま現在に至っています。事実、広島・長崎に落とされた原子爆弾の惨劇は誰もが知っていても、対馬丸事件については聞いたことがないという人が多いでしょう。
それはなぜなのか─。この問いが、対馬丸事件の真相に迫るドキュメンタリー映画『満天の星』を制作する原点となりました。
私の祖父である中島髙男は、対馬丸の甲板員をしており、対馬丸事件の数少ない生存者でした。子供の頃、毎年夏休みなど長期の休みには家族皆で沖縄を訪れていたのですが、那覇空港に着くと、なぜか祖父だけが別行動となるのです。祖父が沖縄で何をしているのか、その理由がはっきり分かったのは中学3年生の時でした。
戦後50年の年、学校の夏休みの課題で平和をテーマにした作文を書くことになり、私は祖父に戦争についてインタビューすることになりました。そこで祖父の口から対馬丸事件について初めて聞いたのです。沖縄の空港で家族と別れた後、祖父は犠牲者の慰霊祭などに出席していたのでした。……(続きは本誌にて) 
~本記事の内容~
◇対馬丸の悲劇を風化させてはならない
◇明らかになっていく対馬丸事件の全容
◇戦争の悲惨さを後世に伝承していく
なぜ史上まれにみる悲劇、対馬丸事件は忘れ去れていったのか。寿大氏のドキュメンタリー制作の過程でその全容が明らかになっていきます。ぜひご覧ください。
プロフィール
寿大 聡
じゅだい・さとし――昭和56年埼玉県生まれ。大学在学中に教員免許を取得するも、映画への情熱に突き動かされ、俳優・仲代達矢氏が主宰する「無名塾」に入塾。以後、舞台・映画・テレビなど100本以上の作品に出演し、主演舞台も多数務める。令和3年自身の制作会社を設立し、監督・プロデューサーとしても活動を開始。令和7年学童疎開船「対馬丸」の実話を基にしたドキュメンタリー映画『満天の星』を約3年かけて完成、大きな反響を呼んでいる。
編集後記
先の大戦中、アメリカ軍の攻撃で撃沈され、何の罪もない子供たちが多数犠牲になった対馬丸事件。対馬丸事件の生きの残りである中島髙男氏を祖父に持つ俳優の寿大聡さんは、その真相に迫るドキュメンタリー映画『満天の星』を制作しました。寿大さんのメッセージから、人類はなぜ同じ過ちを繰り返すのか、どうすれば平和な世界をつくることができるのか、多くのことを教えられます。

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