11 月号ピックアップ記事 /第一線で活躍する女性
答えは現場にある 黒田麻衣子(東横イン社長)

令和7年3月期現在、国内342店舗を構え、国内客室数で日本一を誇るビジネスホテルチェーン・東横イン。いまや誰もが知るホテルへと成長した同社だが、創業から約40年の道のりは決して順風満帆ではなかった。2008年の同社の危機に際し、専業主婦の身から経営再建を背負って立ったのが黒田麻衣子現社長だ。各支配人との個人面談を中心に、独自の施策で現場の声を掬い上げ、組織の活性化に成功。経営再建、コロナ禍など数々の危機を乗り越え、同社の発展を牽引してきた歩みを伺った。
成長の原動力は現場にあると確信していますので、日頃から支配人には「挑戦を続けてください」と伝えています。
創業者である父も「10回失敗できる奴なんていない。その前に成功しちゃうから」とよく言っていました。
これからも社員と共に挑戦を続け、お客様の快適な旅を支え続けようと心に誓っています
黒田麻衣子
東横イン社長
――1986年に御父様が創業し、黒田さんが社長を引き継ぎ13年。いまや誰もが知るホテルへと成長されましたね。
〈黒田〉
来年1月で創業40年の節目を迎えます。おかげさまで国内最大級のビジネスホテルチェーンに成長することができました。
創業者である父が、祖父から電気工事会社を引き継いだ後、ひょんなことから友人に頼まれ第1号店を開業しました。電気工事をするためにビルをつくるようになり、次第にディベロッパーの仕事へ移行していきました。その後、バブル崩壊を機にホテル業に専念することになったのです。
創業時、ホテル業界の宿泊料金は相場が決まっており、「大体このくらいで販売できるだろう」といった値づけをしていました。対して父は、費用に一定の利益を上乗せして価格を決めました。結果的にそれが「東横インはリーズナブルだ」という評判を呼ぶようになったのです。
父は常々、「客単価ではなく、稼働率を上げるんだ」と言っていました。その心は、うちのようなホテルがあれば出張しやすい、旅行しやすい、そう思ってもらえるような、社会に必要とされるホテルになろうということ。そして必要とされていることを表すのは、稼働率の高さだと。
物価上昇を受け、当時に比べて料金は上げていますが、現在も原価に対して一定の利益を乗せた金額で提供する考え方を続けています。我々の事業を通じて人々が移動しやすい社会をつくっていきたい、その願いはいまも変わらず息づいています。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~
◇社会に必要とされるホテルを追求して約40年
◇教員を目指した学生時代
◇「会社を救いたい」その一心で役員として復帰学生時代
◇会社の強みを知った個人面談
◇全社一丸となって乗り越えたコロナショック
プロフィール
黒田麻衣子
くろだ・まいこ――昭和51年東京都生まれ。聖心女子大学卒業。平成14年東横イン入社。17年妊娠を機に退職。20年副社長として復帰。24年社長に就任。令和7年3月期現在、売上高1,439億円、従業員約19,000名、国内342店舗、海外17店舗を構え、国内客室数で日本一を誇るビジネスホテルチェーンの同社を率いる。
編集後記
会社の経営危機に際して、専業主婦の立場から再建を担われ、また、先行きの見えないコロナ禍において、他社に先駆けて宿泊療養施設の開放を決断されるなど、随所に黒田社長の〝経営者としての覚悟〟を感じる取材でした。逆境を乗り越える過程で築かれた現場社員との絆には、胸を打たれるものがあります。苦難を成長の糧とし、同社を発展させてきたその歩みをぜひ本誌でご覧ください。

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