人生は一日一日の積み重ね 登坂絵莉(リオデジャネイロ五輪 女子レスリング 48kg級 金メダリスト)

2022年に現役を退くまで、全日本選手権・世界選手権・オリンピックをそれぞれ制覇し、無類の強さを誇ってきた元女子レスリング選手の登坂絵莉氏。そんな華々しい経歴の裏には、幾度の挫折、血の滲むような努力があった。幼少期からのレスリング人生を振り返っていただきながら、厳しい勝負の世界を歩む中で掴んだ勝負の要諦、人生を発展させる心構え、今後の活動に懸ける思いを伺った。

追い込まれた時こそ本当の実力が出るし、普段できないことは本番でもできないと思っています。

いつだって、出せるのは積み重ねたいつも通りの自分だけ。

輝かしい未来は真面目な一歩一歩の積み重ねの上にしかありません

登坂絵莉
リオデジャネイロ五輪 女子レスリング 48kg級 金メダリスト

──登坂さんは現在、一般社団法人の代表理事として子供たちにスポーツの楽しさを伝える活動をされているそうですね。

〈登坂〉
子供たちがのびのびとスポーツを楽しむ機会をつくりたいとの思いから、2023年に「スマイルコンパス」を立ち上げました。近年、スポーツ現場において暴言や体罰など行き過ぎた指導が社会問題になっていますよね。指導者や親が過度に勝利にこだわるあまり、楽しめなくなったり、競技から離れてしまう子も出ています。

まさに私の世代のアスリートも、スパルタ教育を受けてきた選手が多いんじゃないかなと思うんです。でも、私自身は少し違いました。

中学生までは、レスリング選手だった父に指導を受けましたが、負けて怒られることもなければ、何かを強制されることもありませんでした。放任されていたのではなくて、私の自主性を尊重しつつ、要所要所でスポーツマンとして大切な心構えを教えてくれました。

そういう中で育ち、できなかったことができた時の喜びなど勝敗以外の価値観も大切にしながら、幸いにも五輪という舞台で金メダルを獲得することができました。そんな私だからこそ、スポーツそのものの持つ楽しさを伝えていけるんじゃないかと思うんです。

──勝敗を超えた楽しさを伝える。

〈登坂〉
具体的には、全国の支援学校などを訪問し、スポーツ交流とトークセッションに取り組んでいます。理事である元プロサッカー選手の岩渕真奈さん、プロテニス選手の穂積絵莉さんと共に、各々の競技の要素を取り入れたプログラムをつくりました。中には悔し泣きする子もいるほどで、夢中になる姿を見ると嬉しくなりますね。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
◇勝敗以上に成長する喜びを
◇日本一から一転して挫折を味わう
◇夢が目標に変わった日
◇残り13秒からの逆転劇で金メダルを掴む
◇人生で大切なのは一日一日の積み重ね

プロフィール

登坂絵莉

とうさか・えり――平成5年富山県生まれ。8歳でレスリングを始め、中学3年時に全国中学生選手権で優勝。21年愛知県の強豪・至学館高校に入学し、2年、3年時に全国高校女子選手権を2連覇。24年に至学館大学へ進学。同年から27年まで全日本選手権で4連覇、うち25年、26年は世界選手権で2連覇を果たす。28年初出場となったリオデジャネイロ五輪で優勝。その後は怪我に苦しみながらも現役を続け、令和4年引退を発表。5年一般社団法人「スマイルコンパス」を設立し、子供たちにスポーツの楽しさを伝えている。


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