3 月号ピックアップ記事 /エッセイ
ひきこもりゼロへの挑戦 菊池まゆみ(藤里町社会福祉協議会会長)

いま、日本でひきこもり状態にある人の数は、生産年齢人口において約146万人、50人に1人に及ぶという。人口減少が急速に進む我が国にとり、早急に対応が求められる重要課題の一つと言えるだろう。こうした中、秋田県北部にある藤里町が、ひきこもりをゼロにした町として注目を集めている。活動を主導した菊池まゆみさんの取り組みと、活動に懸ける思いを通じて、我が国が直面する課題解決のヒントを探りたい。

大切なことは、日々の小さな業務を通じてどれだけ地域の皆さんのお役に立てるか。この藤里町を道場と考え、一つひとつの業務を真摯に積み重ねていくことで、町の未来は開けていくと私は信じています
菊池まゆみ
藤里町社会福祉協議会会長
【写真=菊池さんが主導して進めてきた人材派遣サービス「プラチナバンク」は、いまでは若者のみならず地域のシルバー世代をも繋ぐ架け橋となっている】
私が住む秋田県の藤里町は、人口2,700人余りの小さな町です。この地方の町にいま、全国から見学や視察が相次いでいます。かつて町に113人もいたひきこもりをゼロにした「藤里方式」に、多くの方が関心を寄せてくださっているのです。
ひきこもりといっても、事情は様々です。自分は困っていないから放っといてくれとおっしゃる方や、医療支援が必要な方がいる一方、親の介護などの諸事情で離職を余儀なくされ、復帰を果たそうとした時には就職先がなかなか見出せなくなるケースもあります。
私が専業主婦だった頃、働いている女性が輝いて見え、自分だけが世の中から取り残されてしまったような気持ちに苛まれたことがありました。その時の気持ちは、ひきこもりの人たちが抱える葛藤にいくらか通じるものがあるのかもしれません。
10年間のひきこもり状態から復帰を果たした方がおっしゃいました。自分はいつでも働けるほうに行けると思っていた。でも、働けている人と自分との間の亀裂がどんどん広がって、どうにもならなくなったのだと。
しかし、たとえいまはひきこもりでも、自分なりの方法、自分なりのタイミング、自分なりの力量の範囲内で再び社会に出て活躍する方法があるのではないか。頑張りたいけど一人ではどうしようもない方を応援したい。地元の社会福祉協議会(社協)でひきこもりの問題に取り組んできた私は、その一心で活動を続けてきました。
では、藤里町はなぜひきこもりをゼロにできたのか。他の自治体の取り組みとどこが違うのか。視察に訪れてくださった方々に一番お伝えしたいのは、藤里方式の一番の特長は、弱者救済ではなく、「活躍支援」であることです。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~(全4ページ)
◇弱者救済ではなく活躍支援
◇何かできることがあったのではないか
◇就労支援施設「こみっと」の設立
◇地域の皆さんと実現したひきこもりゼロ
◇施設の立ち上げを間近にして
◇日々の積み重ねの大切さ
プロフィール
菊池まゆみ
きくち・まゆみ――昭和30年秋田県生まれ。大学進学を機に上京し、結婚。その後帰郷し、平成2年藤里町社会福祉協議会に入社。事務局長を経て、27年同協議会会長に就任。令和3年より秋田県社会福祉協議会副会長を兼務。全国社協会長表彰、日本地域福祉学会地域福祉優秀実践賞、エイボン女性年度賞など受賞歴多数。著書に『「藤里方式」が止まらない』(萌書房)がある。
編集後記
秋田県北部の藤里町で、当初113人いたひきこもりをゼロにした菊池まゆみさん。一主婦から歩み出し、全世代を繋ぐ活躍支援を形にした軌跡を語る姿に、ひきこもりを弱者扱いしない温かな眼差しと信念を感じました。人手不足や地方衰退が深刻な日本に希望を与えるお話です。

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