3 月号ピックアップ記事 /エッセイ
葛飾北斎と東山魁夷 二人の巨人が貫いたもの 橋本光明(東山魁夷記念一般財団法人代表理事)

豪快な構図の浮世絵で知られる葛飾北斎。自然の生気を独自の作風で描いた東山魁夷。全く異なる時代を生きた二人だが、40歳で画境を拓き、90歳で亡くなる直前まで創作に勤しみ生涯現役を貫くなど驚くほどの共通点がある。不思議な縁から北斎と魁夷の個人美術館長を務めた橋本光明氏が語る二人の人生からは、その知られざる新たな一面が浮き彫りになる。

73歳になって、少し動植物の骨格や生まれと造りを知ることができた。ゆえに、86歳になればますます腕が上達し、90歳には奥義を究め、100歳には本当に神妙の域に達するであろうか
葛飾北斎(かつしか・ほくさい)
宝暦10(1760)年~嘉永2(1849)年。江戸中・後期の江戸の浮世絵師。北斎の他、戴斗・為一・画狂老人卍など多くの号を持つ。初め勝川春章に学んだが、狩野派・土佐派・琳派・洋風画など和漢洋の画法を習得。読本挿絵や絵本、風景画などで独自の作風を花開かせる。代表作に『北斎漫画』や『冨嶽三十六景』など。(『葛飾北斎伝』より)

道は最初からそこにあるのではない。切り拓かれ何度も踏み慣らされて、やがてかたちを成していく。人は今までもこれからも、そうやって「道」を作ってゆくのだろう
東山魁夷(ひがしやま・かいい)
©時事
明治41(1908)~平成11(1999)年。神奈川県生まれ。東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業後、ドイツ留学を経て、昭和22年日展に出品した『残照』が特選となり画壇に認められた。代表作に『道』や『緑響く』、唐招提寺御影堂障壁画など。日展理事長。文化勲章受章者。
「是の処即ち是れ道場」という言葉はいま、この場こそが道場であるという意味だそうですが、それはまた画家として目の前の一瞬に命を見つめつつ、限りなき芸術の道を終生歩み続けた二人の生き方とも通じるものがあります
橋本光明
東山魁夷記念一般財団法人代表理事
『冨嶽三十六景』に象徴されるように、北斎の絵は見る者に何かを強く訴えてくるものがあります。北斎ならではの奇想天外な構成力、表現力に人々は驚き、感嘆し作品に釘付けとなります。
ところが、魁夷の絵はそれとはまるで対照的です。魁夷の作品は何かを強く訴える代わりに、すべてを受け入れる静けさや温かさがあります。魁夷の絵の前に立つと、キャンバスに描かれた自然の情景と自分が知らず知らずのうちに一体となっていく不思議な感覚を誰もが味わうことでしょう。
しかし、画風は異なるものの、二人の人生や絵に対する思い、執念はとても似ています。その一つが共に40歳になる頃に人生の転機を迎え、そこに辿り着くまでに様々な人生の悲哀を味わっている点です。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~(全5ページ)
◇北斎と魁夷の美術館長を務めて
◇訴える北斎 受け入れる魁夷
◇作品を深化させた人生の逆境
◇自然を師として美の極致を追究
◇画家として生き抜き掴んだ境地
プロフィール
橋本光明
はしもと・みつあき――昭和20年東京都生まれ。千葉大学教育学部卒業後、同大学教育学部附属小学校教諭、同大学教育学部講師併任、筑波大学附属小学校教諭、信州大学教授、同大学教育学部附属長野中学校校長、副学部長などを歴任。現在名誉教授。長野県立(当時、長野県信濃)美術館・東山魁夷館館長、すみだ北斎美術館館長も務めた。令和4年度文化庁長官表彰受賞。
編集後記
葛飾北斎と東山魁夷。時代も画風も異なる二人ですが、そこには驚くべき共通点があります。その一つが90歳で亡くなる直前まで画業に一途に打ち込んだこと。北斎と魁夷の美術館の館長を務めた橋本光明さんのお話を通して、二人の先達の生き方が現代に甦ります。

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