『三国志』に学ぶ人間学 中川昌彦(評論家)

約2,000年前、中国で覇を争った魏、蜀、呉の三国と、それを率いたリーダーたちの盛衰を描いた『三国志』。その波瀾万丈の物語は、大激動期にある現代に通じるものがあると評論家の中川昌彦氏は語る。窮苦の中から逞しく立ち上がった英雄たちの姿を通して見えてくるリーダーのあり方。

三国がそうであったように、それぞれに強みも弱みもあります。
その強みを発揮しながら、天下統一への道を上る過程を辿ることもまた『三国志』を読む醍醐味なのです。

中川昌彦
評論家

現代社会は内外共にまさに激動の様相を呈しています。アメリカや中国などの大国が弱肉強食の熾烈な覇権争いを繰り広げ、一方で伝統的価値が崩れかけて人々は方向性を見失い、世の中は一層混沌としてきました。

その状況は、魏、蜀、呉の三国が覇を競い合う中で社会体制が大きく変化し、その波に人々が翻弄され続けた『三国志』の時代ととてもよく似ています。

私は約2,000年前の『三国志』のリーダーたちが繰り広げる様々な人生ドラマに触れる度に、そこに現代社会を生き抜く上でのヒントを見る思いがします。

具体的には変革期を乗り越える知恵や人間関係の急所、交渉力のあり方などが『三国志』を紐解くことで分かってくるのです。『三国志』はいわば人間学の宝庫であり、本欄では、そのいくつかを紹介したいと思います。

私が最初に『三国志』に触れたのは大学時代でした。喰うか喰われるかの熾烈な展開に息を呑みながら読み進めたものですが、ふと考えを巡らせたのが「三」という数字の持つ力学でした。

1対1で勝負をする場合、勝つか負けるかしかありません。上下関係がはっきりしている組織では、上が勝つと決まっています。ところが、三の力学では3対ゼロ、2対1、1対2というような様々な関係が生まれ、弱者が二人結託して強力な一人を負かすこともあり得るのです。

幾何学的に見ても三角形は立体の基本であり、立体化、複雑化の原点。三の力学から様々な変化が生まれます。

本記事の内容 ~全4ページ~
◇様々な変化を生む「三」の力学
◇曹操、劉備、孫権それぞれのリーダーシップ
◇逆境からのし上がった英雄たち
◇『三国志』から読み解く現代世界

プロフィール

中川昌彦

なかがわ・あきひこ――昭和18年東京都生まれ。41年東京大学法学部卒業、トヨタ自動車入社。52年同社を退職し独立。エディターシップ取締役、テレマーケティング協会理事などを歴任。著書に『自分の意見がはっきり言える本』『バランス感覚で人間関係はうまくいく』(共に実務教育出版)『だから「三国志」は面白い!』(KKベストセラーズ)など多数。


編集後記

熾烈に覇を競い合った魏呉蜀の三国のリーダーたちの波瀾万丈の姿を描いた『三国志』。評論家の中川昌彦さんは、英雄たちの生き方から現代のビジネス社会を生き抜くヒントが読み解けると語ります。2,000年の時を経ても盛衰の原理は不変であるとの思いを禁じ得ません。

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