2 月号ピックアップ記事 /わが人生の先達
福澤諭吉 独立のすすめ 齋藤 孝(明治大学文学部教授)

「一身独立して一国独立す」。明治維新から5年後に上梓され、当時の国民の10人に1人が読んだという名著『学問のすすめ』の言葉だ。10代から福澤諭吉に私淑し、著作に親しんできた齋藤孝氏は、同書を「独立のすすめ」と読む。維新より150年が過ぎ、いま一層の激変期を生きる日本人が、この先達から受け取るべきものは何か。

熱心は深く蔵むべし
福澤諭吉
©国立国会図書館「近代日本人の肖像」

なぜ人は学ぶのか。それは、自分の頭で考え、自分の足で立つ、独立して生きるためです
齋藤 孝
明治大学文学部教授
ああ、この人は「独立」ということを本当に真剣に考えていたんだな……。10代の終わり、受験に失敗し浪人中だった私は、沈潜するように読書に没頭していました。福澤諭吉の著作と出逢い、感銘を受けたのはこの頃です。
大学入学後、現在まで諭吉を愛読してきて、感じることがあります。激動期を生きる日本人のロールモデルとして、いまこそ真剣に学ぶべき先達が諭吉だと。
先達に学ぶことは、その人物の精神文化を伝承することだと私は考えています。先達にはそれぞれ学ぶべき点があり、それを一つに限らず幾つも学ぶことで、バランスの取れた伝承ができます。
こと諭吉の場合は、三つの柱で見ていくとよいでしょう。一つは日本が独立するために指し示した方向性。二つ目は、……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~(全3ページ)
◇神輿は、皆が我一人立つ気概を持って初めて担げる
◇人格的魅力は「カラリとした精神」
◇徹底した学びを人生の柱に据える
◇苦境を柔軟に乗り切る諭吉流処世術
◇諭吉に学び、読書立国に励もう
プロフィール
齋藤 孝
さいとう・たかし――昭和35年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。著書は『現代語訳 福翁自伝』『現代語訳 学問のすすめ』(いずれもちくま新書)、最新刊に『1日1ページ、不思議と元気が湧いてくる名文読み書き練習帳』(致知出版社)など多数。
編集後記
旧一万円札の顔としてもなじみ深い日本の偉人・福澤諭吉。『学問のすすめ』の著者、慶應義塾の創始者として歴史の教科書に登場しますが、なぜこれほど語り継がれているのか、ご存じの方となると少ないのではないでしょうか。今回この先達について語るのは、メディアで引っ張りだこの齋藤孝先生。諭吉との出逢いは早く、十代の終わりでした。そこから何十年も著作を愛読してきた体験を踏まえて、敬慕を込めて足跡を辿ってくださいました。齋藤先生の華々しく見える現在のご活躍の裏には、定職にすら就けなかった20代~30代前半の〝暗黒時代〟があり、そこが諭吉の生き方と符合していることも語られました。諭吉という人物がグッと身近になり、思わず『学問のすすめ』や『福翁自伝』などの著作に手が伸びる記事です。

特集
ピックアップ記事
-
対談
明治を創ったリーダーたち~日本甦りへの道~
藤原正彦(お茶の水女子大学名誉教授)
中西輝政(京都大学名誉教授)
-
鼎談
【いまこそ若い世代に伝えたい】人生を拓く東洋古典の名著
境野勝悟(東洋思想家)
安田 登(能楽師 )
白駒妃登美(歴史エッセイスト)
-
対談
松下幸之助と稲盛和夫 二人の〝経営の神様〟の共通項
上甲 晃(志ネットワーク「青年塾」代表)
大田嘉仁(小林製薬会長)
-
座談会
先知先哲の人間学
鈴木秀子(文学博士)
數土文夫(JFEホールディングス名誉顧問)
横田南嶺(臨済宗円覚寺派管長)
栗山英樹(北海道日本ハムファイターズCBO)
-
わが人生の先達
二宮尊徳の記憶を現代に蘇らせる時
北 康利(作家)
-
わが人生の先達
福澤諭吉 独立のすすめ
齋藤 孝(明治大学文学部教授)
-
わが人生の先達
下田歌子 修身の心得
石川真理子(随筆家)
-
わが人生の先達
胆大心小──小林一三の生き方
向山建生(逸翁・耳庵研究所 代表)
-
わが人生の先達
言行一致の人 鈴木貫太郎
真殿知彦(海上自衛隊前横須賀地方総監)
好評連載
ピックアップ連載
-
二十代をどう生きるか
学ぶ者は勝利する
和佐見 勝(AZ-COM丸和ホールディングス社長)
-
私の座右銘
退かざる者は必ず進む
数原滋彦(三菱鉛筆社長)
-
第一線で活躍する女性
箸よく盤水を回す
村上尚美(防衛省防衛医科大学校臨床心理士)
-
生涯現役
為せば成る、ヤル気がすべて
青木 清(エース教育総合研究所理事長/徳育と人間力育成協会理事長)
-
意見・判断
高市政権の使命と日本の未来 ──高市政権のもと、日本は自主独立への道を歩め──
西村幸祐(批評家・ジャーナリスト)
-
百年企業はどこが違うのか
創業126年 文明堂東京
宮﨑進司(文明堂東京社長)
藤間秋男(TOMAコンサルタンツグループ会長)
-
致知随想
一振り一振りに丹精を込める
下島房宙(刀鍛冶)
-
致知随想
伊勢神宮で学んだ大工の生き方
河井尊臣(翠紅舎社長)
月刊誌『致知』のバックナンバー
バックナンバーについて
バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます
過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。
定期購読のお申込み
『致知』は書店ではお求めになれません。
電話でのお申込み
03-3796-2111 (代表)
受付時間 : 9:00~17:30(平日)
お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード







