福澤諭吉 独立のすすめ 齋藤 孝(明治大学文学部教授)

「一身独立して一国独立す」。明治維新から5年後に上梓され、当時の国民の10人に1人が読んだという名著『学問のすすめ』の言葉だ。10代から福澤諭吉に私淑し、著作に親しんできた齋藤孝氏は、同書を「独立のすすめ」と読む。維新より150年が過ぎ、いま一層の激変期を生きる日本人が、この先達から受け取るべきものは何か。

熱心は深くおさむべし

福澤諭吉
©国立国会図書館「近代日本人の肖像」

なぜ人は学ぶのか。それは、自分の頭で考え、自分の足で立つ、独立して生きるためです

齋藤 孝
明治大学文学部教授

ああ、この人は「独立」ということを本当に真剣に考えていたんだな……。10代の終わり、受験に失敗し浪人中だった私は、沈潜するように読書に没頭していました。福澤諭吉の著作と出逢い、感銘を受けたのはこの頃です。

大学入学後、現在まで諭吉を愛読してきて、感じることがあります。激動期を生きる日本人のロールモデルとして、いまこそ真剣に学ぶべき先達が諭吉だと。

先達に学ぶことは、その人物の精神文化を伝承することだと私は考えています。先達にはそれぞれ学ぶべき点があり、それを一つに限らず幾つも学ぶことで、バランスの取れた伝承ができます。

こと諭吉の場合は、三つの柱で見ていくとよいでしょう。一つは日本が独立するために指し示した方向性。二つ目は、……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~(全3ページ)
 ◇神輿みこしは、皆が我一人立つ気概を持って初めて担げる
 ◇人格的魅力は「カラリとした精神」
 ◇徹底した学びを人生の柱に据える
 ◇苦境を柔軟に乗り切る諭吉流処世術
 ◇諭吉に学び、読書立国に励もう

プロフィール

齋藤 孝

さいとう・たかし――昭和35年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。著書は『現代語訳 福翁自伝』『現代語訳 学問のすすめ』(いずれもちくま新書)、最新刊に『1日1ページ、不思議と元気が湧いてくる名文読み書き練習帳』(致知出版社)など多数。


編集後記

旧一万円札の顔としてもなじみ深い日本の偉人・福澤諭吉。『学問のすすめ』の著者、慶應義塾の創始者として歴史の教科書に登場しますが、なぜこれほど語り継がれているのか、ご存じの方となると少ないのではないでしょうか。今回この先達について語るのは、メディアで引っ張りだこの齋藤孝先生。諭吉との出逢いは早く、十代の終わりでした。そこから何十年も著作を愛読してきた体験を踏まえて、敬慕を込めて足跡を辿ってくださいました。齋藤先生の華々しく見える現在のご活躍の裏には、定職にすら就けなかった20代~30代前半の〝暗黒時代〟があり、そこが諭吉の生き方と符合していることも語られました。諭吉という人物がグッと身近になり、思わず『学問のすすめ』や『福翁自伝』などの著作に手が伸びる記事です。

2026年1月1日 発行/ 2 月号

特集 先達に学ぶ

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