2 月号ピックアップ記事 /わが人生の先達
胆大心小──小林一三の生き方 向山建生(逸翁・耳庵研究所 代表)

阪急電鉄や阪急百貨店、さらに宝塚歌劇団、東宝などの興行分野まで、独自のアイデアと不屈の行動力で数々の事業を成し遂げた小林一三。そのスケールの大きさとジャンルの広さはまさに経済界の巨人と呼ぶに相応しい。郷土の先達として約30年間、一三の研究を続ける向山建生氏に、一三の人生や事業に懸けた思いをお話しいただいた。

サラリーマンに限らず、社会生活で成功するには、その道でエキスパートになることだ。ある一つのことについて、どうしてもその人でならないという人間になることだ。
たとえば銀行員だったら、為替なら為替については誰よりも知識を持っているという人間になれば、必ず自分の道が開かれてくる
小林一三(こばやし・いちぞう)
©国立国会図書館「近代日本人の肖像」
いかなる苦境に直面したとしても、知恵を沸き立たせてそれを乗り越えていけることを身を以て示した一三の揺るぎない行き方は、困難の時代を生きる私たちに大きな勇気と示唆を与えてくれると思います
向山建生
逸翁・耳庵研究所 代表
阪急電鉄をはじめ221社5団体、3万4千人以上の従業員を擁する阪急東宝グループ。関西を中心として日本経済を牽引する同グループは、昭和初期に活躍した小林一三という一人の人物によって創業されました。
一三と同じ山梨県韮崎市に生まれた私が小林一三という名前を知ったのは、66年前の夏、小学5年生の時でした。中学教師だった父に伴われ一三の母校・韮崎小学校の講堂に入った時のこと。父は壁の上部に掲げられた甲州財閥・小野金六の肖像画を見上げながら、「この人も偉いが、2年前(1957)年に亡くなった小林一三という人は、もっと偉い」と教えてくれたのです。
一三を深く研究するようになったのは、その約30年後。きっかけは、東京ディズニーランドの総合プロデューサーを務めるなどエンターテインメント界で活躍する堀貞一郎氏と知り合い、堀氏が最も尊敬していた人物が小林一三だと知ったことでした。「君の故郷で講演したが、君の地元の人は小林一三のことを全く知らないようだ。何とかしたまえ」と叱咤され、奮起したのです。
一三は知れば知るほどスケールの大きな人物です。阪急電鉄や宝塚歌劇団、東宝の創立者として知られる一三ですが、経営以外でも政治や文筆、さらには茶人(雅号・逸翁)として日本文化の保護に力を入れるなど活動は多岐にわたり、いまも全貌はなかなか掴みきれていません。本欄では、そういう巨人・小林一三の功績や人物像の一端をご紹介できればと思います。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容(全3ページ)~
◇経済界の巨人の偉業を顕彰し続けて
◇「風呂屋の主人でもよい経営者になって貢献せよ」
◇鉄道事業はいかに成し遂げられたか
◇失敗をもプラスに転じる発想力、行動力
巨人・小林一三の生き方が教えるものは何か――。向山さんがその生涯と魅力、事業の一端を語ります。ぜひご覧ください。
プロフィール
向山建生
むこうやま・たてお――昭和24年韮崎市生まれ。46年日本大学理工学部卒業。山梨日日新聞社・山梨放送経営企画室長、山梨総合研究所主任研究員、山梨大学客員教授を経て現在、特定非営利活動法人減災ネットやまなし理事長、逸翁・耳庵研究所代表、山梨総合研究所OB会会長。
編集後記
いまでは知らない人はいない阪急東宝グループ、宝塚歌劇団などをつくった小林一三。その生涯や事業を長年研究してきた逸翁・耳庵研究所代表の向山建生さんのお話には、いまを生き抜く小林一三の珠玉の言葉や教えが満載です。

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