松下幸之助と稲盛和夫 二人の〝経営の神様〟の共通項 上甲 晃(志ネットワーク「青年塾」代表) 大田嘉仁(小林製薬会長)

松下幸之助と稲盛和夫。共に自ら立ち上げた会社を、一代で世界的な優良企業へと育て上げた名経営者である。2人はなぜ破格の業績を収めることができたのか。そして、いまなお多くの人々に人生の指針を与え続けている所以とは。各々 の〝経営の神様〟に長年仕えてきた上甲晃氏(右)と大田嘉仁氏(左)のお話を通じて、そこに共通するものを探った。

どんな不本意な状況に直面しても、すべての原因は自分にあるというのが松下幸之助の考え方です

上甲 晃
志ネットワーク「青年塾」代表

〈大田〉 
きょうはよろしくお願いします。『致知』で上甲さんと対談するのは4年ぶりですので、とても楽しみにしていました。

〈上甲〉
あれからもう4年ですか。あっと言う間ですね(笑)。

今回は、僕が仕えてきた松下幸之助と、大田さんが支えてこられた稲盛和夫さんの共通項を考えてみようということで、事前に京セラさんの本社にある「稲盛ライブラリー」に寄せていただいて、稲盛さんのことを勉強してきました。

そこで改めて実感したのですが、松下幸之助と稲盛さんは、実によく似ていますね。単に商売がうまいとか、経営がうまいとか、そういう次元を超えた宇宙観や人間観の部分でとても似通っている。ここは普通の経営者にはあまり見受けられないところです。二人とも経営の神様と謳われましたが、僕はむしろ生き方の神様という感じがしています。

善きことを思うのがすべての始まり。これが稲盛さんの人生観のベースとなる考え方です

大田嘉仁
小林製薬会長

〈大田〉 
稲盛さんは幸之助さんを師と仰いでずっと勉強してきましたから、似てくるわけですよね。幸之助さんから学び、追いかけ続けたのが稲盛さんでした。

象徴的なのが、稲盛さんが幸之助さんの講演会で、ダム式経営の話を聞いた時のエピソードです。

幸之助さんはそこで、河川の水をダムで貯めるように、資金や人材、設備など、あらゆる経営資源に余裕を持って経営するダム式経営の重要性を説かれました。すると参加者から「ダム式経営の重要性は分かりましたが、どうすればダムができるのでしょうか?」という質問が出た。幸之助さんがしばらく考えて、「一つ確かなことは、まずダム式経営をしようと思うことですな」と答えると、即効性のあるノウハウを期待していた参加者からは失笑が漏れました。

しかし稲盛さんだけは、その幸之助さんの言葉に電流が走るような衝撃を受けたといいます。

「そうか、まず思わなければならないのだ!」と。……(続きは本誌をご覧ください)

本記事の内容 ~全10ページ~
◇「まず思わなければならないのだ!」
◇部下を信じるのが上司の仕事
◇真の使命に目覚めた時に人も企業も成長する
◇人間の本質を掴まなければ幸せになれない
◇すべての原因は自分にある
◇全従業員の物心両面の幸福を追求する
◇善因善果 悪因悪果
◇人を鼓舞し、育てる一番の方法
◇仕えただけの値打ちがある人間に
◇高市総理へ贈った松下幸之助の言葉
◇仕事と人生を開く稲盛和夫の言葉
◇流行りを追うな 真理を追え

プロフィール

上甲 晃

じょうこう・あきら――昭和16年大阪市生まれ。40年京都大学教育学部卒業、松下電器産業(現・パナソニック)入社。56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年青年塾を創設。著書に『志のみ持参』『続・志のみ持参』『志を教える』『人生の合い言葉』『松下幸之助の教訓』(いずれも致知出版社)など。

大田嘉仁

おおた・よしひと――昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業、京セラ入社。平成2年米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(MBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、22年日本航空会長補佐・専務執行役員を兼務。27年京セラコミュニケーションシステム会長。令和元年MTG会長。7年小林製薬会長。著書に『JALの奇跡』『運命をひらく生き方ノート』(共に致知出版社)など。


編集後記

いまなお多くの人々を感化し続ける松下幸之助と稲盛和夫。志ネットワーク「青年塾」代表・上甲晃さんと小林製薬会長・大田嘉仁さんの対談では、「経営の神様」を超える〝生き方の神様〟として、両者に見出せる様々な共通項を明らかにしていただきました。印象的だったのは、上甲さんが自民党総裁選に臨む高市早苗さんに10日間送り続けた松下翁の言葉。大田さんが厳選した稲盛氏の言葉と共に、両者の教えの神髄を銘記したいものです。

2026年1月1日 発行/ 2 月号

特集 先達に学ぶ

バックナンバーについて

致知バックナンバー

バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます

過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。

定期購読のお申込み

『致知』は書店ではお求めになれません。

電話でのお申込み

03-3796-2111 (代表)

受付時間 : 9:00~17:30(平日)

お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード

FAXでのお申込み

03-3796-2108

お支払い方法 : 振込用紙払い

閉じる