日本再生への祈り 後藤俊彦(高千穂神社宮司) 葛城奈海(ジャーナリスト)

世界で最も古い歴史を有し、長く続いている国、日本。初代の神武天皇がご即位されて以来、万世一系の皇統は126代にわたって連綿と受け継がれ、2685年を迎える。一方、今年は大東亜戦争終結80年の節目でもあるが、敗戦後のGHQの占領政策により、日本人は古来大切にしてきた理念や文化、価値観を悉く捨て、根無し草になってしまった。いかにして心の背骨を取り戻し、その使命を果たすべきか。高千穂神社宮司の後藤俊彦さんとジャーナリストの葛城奈海さんが語り合う日本再生への祈り。先人たちに無念の涙を流させてはならない。

日本の平和がいまも守られているのは憲法九条のおかげではなく、先人たちの戦いぶり、大和魂なのだと。
何と有り難い。心底から先人たちへの感謝と畏敬の念が湧き上がってきました

葛城奈海
ジャーナリスト

〈葛城〉
4月に行われた致知出版社主催の「日本人の心の背骨をつくる一日集中講義」では仕事の関係で後藤宮司のご講話を拝聴できなかったことが心残りだったので、きょうはとても楽しみです。

〈後藤〉
葛城さんのご講話に感銘を受け、ぜひ私もじっくりとお話ししたかったものですから、勇んで高千穂より参りました。

〈葛城〉
今回のテーマは「日本再生への祈り」ですが、今年戦後80年の節目を迎えた日本の現状を見るにつけ、私が最も憂慮しているのは、日本人が戦う気概を失くしてしまったことです。戦いと聞くと悪いことのように思えるんですけれども、何のために戦うのかが一番大切だと思っています。

日本人は和を大事にする民族で、その象徴として聖徳太子の『十七条憲法』にある「和を以て貴しと為す」がよく挙げられますよね。私はもっと遡って、初代の神武天皇が奈良の橿原に都を建てられた時に出された「橿原奠都(てんと)の詔」が原点だと考えているんです。

〈後藤〉
「八紘(あめのした)を掩(おお)ひて宇(いえ)と為(せ)む」という「八紘為宇(はっこういう)」の精神ですね。

〈葛城〉
はい。私は戦後教育にどっぷり浸かって育ったので、かつては好戦的な軍国主義のスローガンみたいに思っていました。

でも、『日本書紀』を読んでみたら全く逆の意味で、すべての人々が一軒の家の中に住むように、皆仲良く暮らしていこうと。なんと素晴らしい建国の理念なのかと感動しまして、それまでの自らの不勉強と先入観を恥じたんですね。

日本人が古来ずっと大切にしてきた理念や文化や価値観といった大切なものを守るためには、最終的には命を懸けてでも戦うという気概を取り戻していきたい。いざ戦わなければならない時にも戦うことから逃げてしまったら、和を守ることはできません。

特に幼少期に神話に触れる経験をしないと、民族の魂の原点が育たず、いわゆる根無し草になって様々な思想や意見に左右されてしまうのだと思います

後藤俊彦
高千穂神社宮司

〈後藤〉
全く同感です。それに加え、戦後80年になれば歴史に対して深みのある総括や論議がなされるだろうと思ったのですが、そうなっていない。

テレビや新聞でも、戦争は悲惨だから起こしてはいけないという議論が多くて、戦争がなぜ起きたのか、戦争を起こさないためには何が必要なのか、そういう大事な議論が欠落しているんじゃないかと感じますね。

〈葛城〉
大東亜戦争開戦の時、昭和天皇はなぜ我々は戦わなければならないのかということを「宣戦の詔書」としてきちんと国民に伝えてくださっていました。

「天佑ヲ保有シ萬世一系ノ皇祚(こうそ)ヲ践(ふ)メル大日本帝国天皇ハ」で始まり、中程に「萬邦共栄ノ楽(たのしみ)ヲ偕(とも)ニスル」という言葉が出てきます。

これはすべての国が共に栄えるという意味で、建国の理念「八紘為宇」とも重なりますよね。

この詔書を初めて読んだ時に、とても心を揺さぶられ、決して他国を侵略するために戦ったわけではない。日本の自存自衛と永遠の平和を守るために、やむなく戦わざるを得なかった。そういう戦争だったことが一目瞭然でした。

それがいまの戦後世代にはほとんど正しく伝わっていないと思います。見事にGHQの術中にはまってしまって、日本は侵略戦争をした悪い国だという歴史認識がいまだに学校教育の現場では主流として教えられている。これを何とかあるべき姿に戻していかなければいけないと思っています。

〈後藤〉
GHQの占領政策は日本人の軍事的な武装解除と精神的な武装解除、この2つを徹底的にやり、二度と再び日本が欧米に逆らわないようにするのが目的でした。

特に精神的な武装解除の点で力を入れたのが、日本及び日本人の歴史と、その源流となる神話をはじめとする古典教育の禁止です。その狙いは……(続きは本誌をご覧ください)

本記事の内容 ~全10ページ(約15,000字)~
◇戦後80年の節目に最も憂慮していること
◇いまも神話の中に生かされている
◇GHQの占領政策が及ぼした弊害
◇神道とは諸宗教の根源を為すもの
◇柱のある生活を取り戻すべき
◇日本建国の理念「八紘為宇」とは
◇お互いを思い合う君民一体の国柄
◇皇居勤労奉仕の体験と国連での35秒スピーチ
◇古典・歴史教育を通じて武士道を復活せよ
◇先人たちの大和魂が日本の平和を守っている

プロフィール

後藤俊彦

ごとう・としひこ――昭和20年宮崎県高千穂町生まれ。43年九州産業大学商学部卒業後、参議院議員秘書となる。國學院大學神道学専攻科並びに日本大学今泉研究所を卒業し、56年高千穂神社禰宜を経て宮司に就任。同神社に伝わる国指定重要無形民俗文化財「高千穂夜神楽」のヨーロッパ公演を二度にわたって実現。62年神道文化奨励賞受賞。神道政治連盟副会長、高千穂町観光協会会長などを歴任。令和3年神社本庁より神社界最高位の「長老」を授与される。著書に『日本人なら知っておきたい日本の神話九選』(致知出版社)など。

葛城奈海

かつらぎ・なみ――昭和45年東京都生まれ。東京大学農学部卒業後、自然環境問題・安全保障問題に取り組む。俳優などを経て、平成23年から尖閣諸島海域の実態をレポート。27年防人と歩む会会長、令和元年皇統を守る会会長にそれぞれ就任。他に元予備3等陸曹、予備役ブルーリボンの会幹事長。北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」でアナウンスを担当。著書に『戦うことは「悪」ですか』(扶桑社新書)『日本を守るため、明日から戦えますか?』(ビジネス社)など。


編集後記

今年4月に行われた弊社主催「日本人の心の背骨をつくる一日集中講義」で登壇されたお二人に、「日本再生への祈り」をテーマにご皇室や神道について語り合っていただきました。神社界最高位の称号を持つ後藤俊彦さんと皇統を守る会会長を務める葛城奈海さん。神話や歴史を忘れた民族は滅びる――戦後80年のいまこそ、日本を日本たらしめているものを守り継いでいかなければなりません。

2025年11月1日 発行/ 12 月号

特集 涙を流す

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