「どんな時も、 笑っとけ!」——創業者が見た夢の続きを見る 山口久美子(玄品グループ 関門海社長)

高級魚として定番のふぐの中で、最も高価で美味とされるとらふぐ。これをコースでも数千円という廉価で提供、日夜大勢の客が舌鼓を打つとらふぐ料理専門店がある。「玄品」だ。同店を国内外66店舗展開する関門海(大阪府)の五代目・山口久美子社長は、創業者の妻にして、予期せず会社を受け継ぎ発展させてきた。いま女将として現場にも立つ経営者の心に響き続ける言葉とは。
(写真提供=玄品グループ 関門海)

「どんな時も、笑っとけ!」

山口久美子
玄品グループ 関門海社長

――先日、東京都内の「玄品(げんぴん)」でふぐ料理をいただいてきました。

〈山口〉
ありがとうございます。事前に言ってくださったらよかったのに。格好つけれんかった(笑)。

――スタッフさんの温かな接客、深い知識に舌を巻きました。加えて御社が提供されているとらふぐは、高級魚ふぐの中でも最高級のとらふぐのみだそうですが、かなり手頃な価格で驚きました。

〈山口〉
お店、想像よりカジュアルでしたでしょう? いま、うちのてっちり(ふぐちり鍋)は2,680円、それに7品加えたフルコースでも8,500円で召し上がっていただけます。

夫の山口聖二が当社を創業した頃、全国で水揚げ、あるいは養殖されたふぐは、すべて下関の市場を経由して流通していました。その中間を排して、養殖場と直接取り引きすることで、より安くご提供できるようになったんですね。

ふぐには旬があって、寒さが厳しくなる12月から2月です。しかし創業者は研究開発に力を入れて、冷凍から解凍まで自社で完結、旨味を損なわずに長期保存できる熟成技術を完成させました。さらに天然ふぐに負けない養殖技術も成功して、一年中おいしいとらふぐを提供できるようになりました。

――初代の聖二社長には2002年、本誌にご登場いただきました。味や安さを誇張するのではなく、「言うこととすることを一緒にしたい」とおっしゃっていますね。

〈山口〉
そこが、ずっとご支持をいただけている大きな理由だと思います。てっさ(ふぐ刺し)によく合うぽん酢一つでも、素材のすだちやゆずからこだわって、添加物を使わない形で自社製造をしてきました。そんな商品が、45年も色褪せずに愛されている。本当にありがたいですよ。

とにかく究極においしい本物を届けたい。それが我々の思いです。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~(全5ページ)
◇45年の歴史は、こだわりの賜物
◇人を愛し、人をつくる 創業者と共に歩んで
◇不意に溢れ出た「ありがとう」
◇遺されたものに命を吹き込む
◇正しいことを正しく、当たり前を当たり前に
◇創業者が目指した愛ある社会のために

プロフィール

山口久美子

やまぐち・くみこ――昭和47年大阪府生まれ。平成4年帝塚山学院短大卒業、関門海創業者・山口聖二氏と結婚。24年関門海入社。CI推進部、執行役員を経て29年副社長、30年より社長。令和5年「女将のカウンター」を開き、週2回自ら現場にも立つ。


編集後記

今回の取材は、大阪屈指の繁華街・梅田にある「玄品 梅田東通店」にて、昼の営業時間終了後に行いました。山口社長にはご多忙のなか長時間を割き、取材後の撮影まで快く対応いただきました。創業者への敬慕、「玄品」というブランドや仕事、社員の皆様への愛情、そして覚悟……。夕方にさしかかり、にわかに賑わいを増す街の喧騒を背に、窮苦の日を〝笑って〟乗り越えてこられた人の強さと明るさを感じる取材でした。

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