日本の明るい未来を創る オーガニック給食への挑戦 太田 洋(いすみ市長)

房総半島南東部に位置し、四季折々の豊かな自然に恵まれた千葉県いすみ市では、市内のすべての小中学校の給食に地元でつくられた完全無農薬の有機米を100%使用している。子供たちの未来のために安心安全の給食を――。その一念で「オーガニック給食」の実現に邁進してきたいすみ市長の太田洋氏に、取り組みの中で直面した逆境・困難を交え、子供たちの笑顔、よりよい日本を創るヒントを伺った。
【写真=大自然の中で田植えに取り組むいすみ市の子供たち】

自分の儲けや目先の利益ではなく、日本はどのような国創りを目指すべきなのか、次の世代に何を引き継いでいくべきなのか、皆で真剣に考え、行動していくのがいまこの時なのだと思います

太田 洋
いすみ市長

――太田さんが市長を務める千葉県いすみ市では、市内のすべての小中学校の給食に地元でつくった無農薬栽培のお米、いすみ米を100%使用しているそうですね。

〈太田〉 
ええ、いすみ市内には小学校が9校(児童数1270人)、中学校が3校(生徒数750人)ありますが、2017年10月からすべての給食に農薬を一切使わずに栽培した地元の有機米を提供しています。野菜についても同様の取り組みを少しずつ進めていて、今年度(2025年)は給食の主要五品目の約21%に有機野菜を使用する予定です。

――オーガニック給食を始めてどのような変化がありましたか。

〈太田〉 
何より嬉しいのは、子供たちが「おいしい!」と笑顔で給食を食べてくれることですね。ごはんのおかわりもいっぱいしてくれます。実際、数字としても、オーガニック給食を始めてから、ごはんはもちろん、給食全体の食べ残しが年々減少しているんです。

それから、子供たちが学校でこんなにおいしいご飯を食べたよって、親御さんに話すからでしょうね。オーガニック給食を始めたことで、親御さんの意識が変わってきたことを感じます。アンケートをとると、もっと給食に有機食材を使ってほしいという声がすごく多いですし、家庭料理にも地元で採れた安心安全な食材を選ぶという親御さんが増えているんです。

――家庭の食生活にもよい影響を与えている。素晴らしいですね。

〈太田〉 
それから有機米をつくる農家の方々からも嬉しい声をたくさんいただいています。いま米価が高騰していると言われますが、そもそもお米の値段は長らく下がり続けてきました。それに高齢化も加わって日本の農業、米づくりは本当に大変な状況にあります。

そのような中で、丹精込めてつくった有機米が学校給食に使われて、子供たちがおいしいと言って食べてくれる。米農家の方々にとって、それが誇りと自信に繋がっているんです。

~本記事の内容~(全4ページ)
◇日本の未来を創るオーガニック給食
◇コウノトリから始まった無農薬栽培米への挑戦
◇憧れる人を持つ―投げて勝つ柔道を目指す
◇熱意が実現への扉を開く
◇成功の鍵は先人の知恵にあり
◇大義が人を動かす
◇辛苦の中にも楽しさを見出す

いすみ市長の太田さんに、子供たち、そして日本を輝かせていくオーガニック給食実現への歩みを語っていただきました。ぜひご覧ください。

プロフィール

太田 洋

おおた・ひろし――昭和23年千葉県生まれ。法政大学卒業後、47年に千葉県庁に入庁。平成11年に千葉県庁を退職して政治家の道へ。同年、千葉県岬町長。17年より現職。


編集後記

子供たちの未来のために、全国に先駆けて安心安全の有機米を使ったオーガニック給食を導入した千葉県のいすみ市。その先進的な取り組みを実現に導いたのがいすみ市長の太田洋さんです。インタビュー中も笑顔を絶やさない太田市長の取り組みから、私たちはこれからどのような社会をつくっていくべきなのか、多くを教えられます。

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