一念の積み重ねこそ経営の真髄なり 大倉忠司(エターナルホスピタリティグループ社長CEO) 貫 啓二(串カツ田中ホールディングス会長)

群雄割拠の飲食業界において、独自の経営手腕で躍進を牽引する二人の経営者がいる。焼鳥屋「鳥貴族」を徒手空拳で立ち上げ、居酒屋チェーンとして日本一の店舗数へと育て上げてきた大倉忠司氏。世田谷の住宅街の一角から串カツ専門店「串カツ田中」をスタートし、僅か11年で東証一部上場へと導いた貫啓二氏。10年以上にわたり親交を深めてきた両氏に、苦難の道のりで積み重ねてきた一念、人生と経営を発展させる要諦を語り合っていただいた。

浮利を追わないで、一本一本の焼鳥を積み重ねようと。この一念で40年やってきました

大倉忠司
エターナルホスピタリティグループ社長CEO

〈貫〉 
大倉社長、お邪魔します。開放的でいいオフィスですね。

〈大倉〉
ご足労いただいて、ありがとうございます。貫さんとは昨日も一緒に食事をしましたけど、面と向かって対談するのは今回が初めてですよね?

〈貫〉 
そうですね。ただ、普段から仕事の相談や情報交換を惜しみなく行っているので、とても初めてとは思えない(笑)。

〈大倉〉 
貫さんと最初に出逢ったのは2012年頃、飲食店経営者向けの勉強会「太陽の会」でした。太陽の会は外食企業の経営者同士が情報を共有する場として、東京の酒屋の社長が開いた勉強会です。50名限定の完全紹介制ながら参加希望者が絶えませんでした。

私は縁あって設立初期から参加していて、途中で貫さんが入ってこられた。確か、最初の懇親会では席が隣同士でしたよね。

〈貫〉 
大倉社長の話を聞きたい一心でしたから、すぐ隣に座りました。その頃の「串カツ田中」は10店舗ほど展開していたものの、会社づくりとは何かをよく分からないまま成長させてきた節があり、経営のイロハを学びたかったんです。

一方の「鳥貴族」は300店舗を超えていたので、大倉社長はまるで違うステージの存在でした。いまなお店舗数は300以上の差がある。一つも詰まっていませんね。

〈大倉〉 
いえいえ、とんでもない。貫さんの第一印象は、トレードマークだった白縁の眼鏡。こんなことを言ってはなんですが、チャラい人に見えました(笑)。

ところが、実際に話をするといまのようなソフトな語り口調、それと真摯に学ぼうとする謙虚さ。誠実な人柄がひしひしと伝わってきて、そのギャップがすごく印象的だったのを覚えています。

〈貫〉 
お恥ずかしい限りです。

理念は人生を豊かにするための道標だと信じてやってきました

貫 啓二
串カツ田中ホールディングス会長

〈貫〉
当時の大倉社長のお話はどれも頭から離れません。特に影響を受けたのは、「上場してもしなくても、いつでも上場できる会社にしておくことが大事」という言葉です。

最初はよく理解できませんでしたが、上場基準を調べていくうちにその真意が分かりました。ガバナンスやコンプライアンスを含め、上場基準には企業が発展するために不可欠な要素がすべて詰まっているんです。

そこから教育や採用に一層投資したことで、安定的に成長するための経営基盤が築かれました。だから、大倉社長あっての串カツ田中なんです。

〈大倉〉 
初めて聞きました(笑)。

〈貫〉 
他にも、誰とでも分け隔てなく接する姿勢はすごいなと。

〈大倉〉 
私は、人間は平等だと考えています。会社では上下関係が生まれますけど、報酬以外はできるだけ対等にしたいというのが私のポリシーなんです。

ですから、オフィスでは社長室を持たず、全員が固定席のないフリーアドレスです。そのほうが風通しもいい。現に、デスクで食事を取っている時でも社員が次々報告に来ますから。

〈貫〉 
新幹線も一般の指定席を使うじゃないですか。それはとても真似できないなと。

大倉社長は自分で決めたこと、信念は断固として曲げない。尊敬しています。……(続きは本誌をご覧ください)

本記事の内容 ~全10ページ(約14,000字)~
◇10年以上にわたり親交を深めてきた間柄
◇海外での成功なくして将来はない
◇出逢いによって導かれた焼鳥の一道
◇苦節10年で辿り着いた天職
◇全メニュー均一価格で見出した光明
◇全従業員の物心両面の幸福を追求する
◇理念は人生を豊かにするための道標
◇かくしてコロナ禍の危機を乗り越えてきた
◇最後に残るのは人間力 成功するまで諦めない

プロフィール

大倉忠司

おおくら・ただし――昭和35年大阪府生まれ。54年調理師専門学校卒業後、大手ホテルのイタリアンレストランに勤務。地元の焼鳥店を経て、60年「鳥貴族」1号店を東大阪市内に開業。61年イターナルサービス(現:エターナルホスピタリティグループ)を設立、同社社長に就任。平成28年東証一部(現・プライム)上場。現在、鳥貴族は直営店、FC店合わせて約650店舗を展開している。著書に『鳥貴族「280円均一」の経営哲学』(東洋経済新報社)がある。

貫 啓二

ぬき・けいじ――昭和46年大阪府生まれ。平成元年高校卒業後、トヨタ輸送入社。10年ショットバーを大阪市内に開業。14年ケージーグラッシーズ(現:串カツ田中ホールディングス)を設立、同社社長に就任。様々な飲食業を営んだ後、20年「串カツ田中」1号店を東京・世田谷にオープン。令和元年東証一部(現・スタンダード)上場。4年より現職。現在、串カツ田中は直営店、FC店合わせて約330店舗を展開している。


編集後記

鳥貴族の大倉忠司さんと串カツ田中の貫啓二さんの対談は、鳥貴族を展開するエターナルホスピタリティグループ本社オフィス(大阪府)にて行われました。お二方は肝胆相照らす仲ですが、これほど踏み込んで濃密な経営談義に花を咲かせたのは初めてのこと。一代で飲食業界を代表する企業へと育て上げてきた足跡、その過程で掴んだ人生訓に、組織を繁栄に導くリーダーのあり方を学びます。

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