2021年10月24日
弊誌『致知』特集にもご登場いただいた、神奈川県を中心に保育園「天才キッズクラブ」を運営する田中孝太郎さん。田中さんが理事長を務める天才キッズクラブは、入園した3~5歳の子どもたちが一年間に1000冊以上本を読んだり、漢字や英語でカルタ遊びをしたり、卒園する時には皆が逆立ち歩きをできるようになっていたりと、子どもの才能がグングン伸びる“奇跡の保育園”として話題を集めています。「やらせない、教えない、無理強いしない」「落ちこぼれをつくらない」を教育のモットーに掲げる田中理事長に、子育てに奮闘中のご両親から寄せられた質問にずばっと答えていただきます。
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Q1:食事の際のしつけのコツはありますか?
Q:(30代、男性)
3歳の娘が、ご飯を食べずにお菓子ばかり食べたり、食事中に食べ物をグチャグチャにして遊んだりして困っています。いくら言い聞かせても反発するばかりで効果がありません。「そんなに食べ物を大切にしないなら、あげません!」と、食事を与えないことも考えたのですが、なるべくそういうことはしたくありません。何かよい解決方法はありませんか?
A:(田中理事長)
子育てでは、お子さんが何かマイナスな行動をしても、「こうしなきゃダメ!」と叱りつけないほうがよい、というのが私の基本的な考え方です。
それよりも大事なことは、常にお子さんのよいところを見てあげようとすること。そして、ご両親がお子さんのよいお手本になることです。
よくないところを無理やりしつけようとすると、ご両親はいつも怒っていなければならなくなります。お子さんは反発してますます言うことを聞かなくなり、悪循環に陥ってしまいます。食べ物を取り上げるなどの罰ゲームは、むしろ弊害のほうが大きいでしょう。
ですから食事の時も、叱ってやらせようとか、しつけるという発想をやめて、ご両親がお子さんの前でよいお手本を見せてあげたらどうでしょう。ただお手本を見せるのではなく、それを楽しそうにやって見せるのです。
Q:(30代、男性)
お手本を見せただけで子どもの態度はよくなるでしょうか?
A:(田中理事長)
もちろん、これを実践したからと言って、すぐにお子さんの態度がよくなるとは限りません。小さな子どもが、大人と同じようにきちんとするのはとても大変なことです。そのことをよく理解してあげて、焦らずに、大らかな眼差しで見てあげてください。その上でご両親は、食事の度によいお手本を見せてあげるのです。
お手本の見せ方にもコツがあります。例えば、お母さんが立派な態度で、楽しそうに食べて見せる。それをお父さんが「お母さん、素敵だね!」と褒めてあげる。こういうちょっとした演出が、お子さんの心にはとてもよく響くものです。
お子さんがそんなお二人の様子を見て、少しでもお行儀よく食べてくれたら、「○○ちゃん、格好いいね!」と大喜びで拍手をしてあげましょう。
もちろん、まだよくないところも目につくでしょう。けれども悪いところを指摘するのではなく、少しでもよくなったところに注目をして、褒めてあげるのです。
そういう些細なことを日々積み重ねていくうちに、お子さんの態度は見違えるほどよくなっていくはずです。
Q:(30代、男性)
ちなみに、田中先生の「天才キッズクラブ」では、どのようにして食事の時間を過ごすのですか?
A:(田中理事長)
園によっては、食事の時のおしゃべりを禁じているところもあるでしょうが、うちは真逆です。楽しく食べようというのが基本的な考え方ですから、食事の時間はとても賑やかです。
Q:(30代、男性)
食べ物の好き嫌いが激しくて、嫌いなものを残してしまう場合はどうすればよいでしょうか?
A:(田中理事長)
たとえ好き嫌いがあっても、お腹が空けば食べるようになりますよ。ですから、食べたくない物を無理やり食べさせようとするのではなく、たくさん体を動かすことが大切です。
土日はお子さんを近くの公園や山に連れて行って、一緒に思いっ切り遊んできてはどうでしょう。おうちに帰ってきた時には、きっとお腹がペコペコになっているはずです。
そこで、お子さんの嫌いなピーマンを出してみる。お父さんが、「このピーマン美味しそう!」と言って、目の前でパクパク食べてみせるのです。お子さんの食指が少しでも動いたら、「○○ちゃんも、一口食べてみる?」と導いてあげるとよいでしょう。
Q:(30代、男性)
「いただきます」や「ごちそうさま」などの礼儀作法は、どうすれば身につくでしょうか?
A:(田中理事長)
これも先ほどと同じで、ご両親がよいお手本を見せてあげることです。
食事の度に、ご両親がきちんと手を合わせて、「きょうもおいしくいただきます!」「お父さん、お母さん、おいしいご飯をありがとうございます!」「ごちそうさまでした、ニッコリ!」など、そのご家庭で決めた文言をきちんと言う。それもニコニコの笑顔で、楽しい雰囲気を演出してやってみせることが大切ですね。
食事の礼儀作法に限らず、挨拶にしろ、感謝の言葉にしろ、何でも楽しい雰囲気の中で実践していけば、お子さんの中でしっかりと習慣化していくはずです。
例えば、お父さんとお母さんとお子さんの3人で、「きょうは誰の挨拶が一番カッコいいかな?」と、ゲーム感覚で競い合えば、お子さんも喜んで実践してくれるはずです。
そうしてお子さんが元気に挨拶をしたら、すぐさま「カッコイイね!」と褒めてあげましょう。プラスの言葉をどんどん与えてあげることで、きちんとした礼儀が身につくばかりでなく、明るく、積極的な子に育ってくれることでしょう。
私の園では、例えばみんなで公園に行く時に、道ですれ違った方にちゃんと挨拶ができるように、「向こうに着くまでに、挨拶チャンピオンを決めようね。チャンピオンになりたい人?」って言うんです。そうすると「はい、はい、はい!」と皆先を争って手を挙げてくれます。
そして園を出て誰かに出会ったら、「せーの」で「こんにちはーっ!」と挨拶をする。元気のよい子の名前を呼んで、「おーっ、○○君カッコイイね!」「○○ちゃんがチャンピオンなりそうだな!」と、どんどん場を盛り上げていくのです。
Q2:おうちでのわがままな振る舞いを何とかしたい
Q:(30代、女性)
4歳の娘がいます。保育園など、人前ではとてもよい子なのですが、家に戻ってくると態度が変わることがあります。特に寝起きは機嫌が悪く、親に対して汚い言葉を使ったり、叩いたりすることがあります。よくないことだと分からせるために、厳しく叱りつけるべきか、迷っています。
A:(田中理事長)
前のご質問と同様で、この場合も厳しく叱りつけてお子さんの態度を変えさせようとするのは逆効果です。何事も叱らなければやらない子になってしまい、自ら楽しんで取り組もうとする心が育まれません。
園では外面がよく、いろんなことがきちんとできる子が、家に帰るとだらしなくなってしまうというのはよくあることです。まだ幼い子が、心を許せるご両親の前で甘えが出てしまうのは無理もないことですから、多少大らかな目で見てあげてください。
Q:(30代、女性)
具体的に、どのように対応すればよいでしょうか?
A:(田中理事長)
例えば、お子さんが「お母さんなんか、死んじゃえ!」と言ったなら、反射的に叱りつけるのではなく、「お母さん、○○ちゃんにそんなことを言われたら悲しいな」と応じる。「○○ちゃんは、人から『死んじゃえ!』って言われたらどう思う?」と聞いてあげる。「イヤだ」という返事が返ってきたら、「じゃあ、どうしたらいいと思う?」と質問を重ねていくと、「今度から言わないようにする」という結論にだいたい落ち着くものです。
叱って直そうとするのではなく、聞いてあげること。自分で答えを出せるように、冷静に導いてあげることが大切です。
そして、ちゃんとした結論に辿り着いたら、「よく分かったね!」と褒めてあげる。「分かってくれて、ありがとうね!」と、感謝の言葉に変えてしまう。叱って言うことを聞かせるのではなく、自分で答えを見つけて行動を変えていけるように導いていく。そのためには質問力を上げていく。それが親自身の成長にも繋がるのです。
それからご参考までに、私の園でお子さんの機嫌を直す時によくやる必殺技が、手遊び歌です。要は、不機嫌な感情はある程度スルーして、こっちが楽しそうに歌を歌っていると、お子さんもつられて歌い始め、気がついたら機嫌がよくなっている。そういう導き方も1つの方法だと私は思います。
Q3:好きなことだけさせていたら、わがままになりませんか?
Q:(30代、女性)
5歳の息子がいます。田中先生のご著書には、子どものよいところを褒めて、長所を伸ばすことが大事だと書かれています。とても共感するのですが、それではわがままな、協調性のない子に育ってしまわないかと心配です。
また、お絵かきや音楽が好きだからといって、そればかりやらせていては、数字や読み書きなど、他の能力の基礎が身につかなくなってしまうのではないかと心配しています。多少無理にでも他の勉強をさせたほうがよいでしょうか?
A:(田中理事長)
天才キッズクラブでは、どの子も数字が得意になり、本が読めるようになり、他のいろんな能力を発揮するようになりますが、これはそういう環境を用意しているからなんです。
何か1つのことに夢中で取り組むと、ものすごく集中力が上がるので、お子さんに好きなことをさせてあげるのはとても大事なことです。ボール遊びでも、カルタ遊びでも構いません。トーマスの大好きな子が、カードに出てくるキャラクターを全部覚えてしまうのも、夢中になるからこそです。お子さんが興味を持つことについては、しっかり伸ばしてあげればよいと思います。
好きなことに加えて、数字やひらがなもしっかり覚えてほしければ、そういう環境をつくってあげればよいのです。
例えば、数字や言葉が書かれたフラッシュカードを買ってきて、お子さんの前でご両親が楽しそうに遊んでみせる。そうすると、お子さんも興味を持って「一緒にやってみたい」と言うはずです。これもまた、お子さんを育てるための演出なのです。
基本は、親の側から「やらせない」「教えない」「無理強いしない」ことです。
Q:(30代、女性)
本当にそれで興味を持ってくれるでしょうか?
A:(田中理事長)
いま当園で力を入れている「オンライン親子deワクワクサロン」で、沖縄のあるお母さんから、年長のお子さんにフラッシュカードを無理にやらせようとしたら、フラッシュカードが大嫌いになってしまったという相談を受けました。
私は、その子にぜひともフラッシュカードを好きになってほしかったので、すぐにオンラインを通じて個別にやりとりをしました。後日、お母さんからお電話をいただいて、「田中先生のおかげで、うちの子が見るのも嫌だったフラッシュカードで楽しく遊び始めました」ととても感謝されました。
私がその時にやったのは、フラッシュカードを使ってその子と一緒に楽しく遊ぶことでした。フラッシュカードに対するイメージが「楽しいもの」に変わったことで、その子のカードへの向き合い方は一変したのです。
お子さんが興味を持てないからといって、無理やりやらせないこと。ご両親が一緒になって、楽しく挑戦することが大切なのです。
お子さんの可能性を信じる
〈田中理事長からお父さん、お母さんへのメッセージ〉
子育て中は、ついつい我が子をよそのお子さんと比較して、ここがダメだ、あそこがダメだと、悩んだり、焦ったりしてまいがちです。
しかし、人間は一人ひとり異なる存在であり、得手不得手があるのは当然のことです。器用で何でもすぐに習得する子もいれば、時間のかかる子もいるのです。
長い目で見た時に面白いのは、必ずしも器用な子がそのままずっと先頭を走り続けるわけではないということです。
不器用だった子が、努力に努力を重ねて、誰よりも大きく成長することはよくあります。元々素質はなかったけれども、世界レベルの活躍をしている人を、皆さんもたくさんご存じのはずです。
教育の世界では、そういう逆転現象が頻繁に起こります。そこが教育の面白いところなのです。
だから子育て中のお父さん、お母さんに伝えたい。
たとえお子さんが周りの子と比べて成長が遅いからといって、決して悩む必要はありません。逆に、将来大きく成長する可能性を秘めているともいえるのです。
人生は長距離走です。仮にスタートで出遅れても、逆転のチャンスはいくらでもあります。
人間には無限の可能性がある。これまでたくさんの子どもをお預かりしてきた私の実感です。お子さんの可能性を信じて、毎日楽しく向き合ってあげてください。
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◇田中孝太郎(たなか・こうたろう)
昭和33年長野県生まれ。不動産会社勤務を経て、平成3年に独立、不動産業と共にブティック・アパレル会社を経営。21年に㈱TKCを設立。翌年保育園「天才キッズクラブ」を開園し、現在、神奈川県を中心に17の保育園と学童/課外教室を展開。「オンライン親子deワクワクサロン」でも、オンラインツールを通じて全国の子育て世代の悩みに向き合っている。著書に『やらせない、教えない、無理強いしない天才キッズクラブ式「最高の教育」』(きずな出版)がある。