2026年10月09日
いまだ破られていない世界記録として輝く、868本の本塁打数を打ち立てた世界のホームラン王・王貞治氏、86歳。2023年に開催された第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本代表を率いて14年ぶりの世界一に導いた、栗山英樹氏、65歳。長年勝負の世界に身を置き、チームを幾度も頂点に導いてこられたお2人に「運をつかむための3つの要諦」について語り合っていただきました。
(本記事は『致知』2026年10月号「何が勝運を呼び寄せるのか」より一部を抜粋・編集したものです)
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誰かのために尽くしている人のところに引き寄せられる
<栗山>
僕が最初に王会長と直接話をさせてもらったのは、日本ハムの監督になって2年目、2013年でした。この年に大谷翔平が入団してきて、みんなが「二刀流なんて無理だ」と文句を言っている時に、王会長がわざわざ来てくださって、「野球界のためになるから大変だけど頑張れ」と。この激励の言葉は本当に胸に沁みました。
<王>
あれは確か福岡ドームで試合のあった日でしたね。私はホームゲームの時は、相手チームの控室まで挨拶に行くようにしていたんですよ。遠くから来ていただいてありがとうって。
<栗山>
王会長が来られると聞いて「いや、僕が行きます」と言ったんですけど、もう既に来られていて恐縮しました。そういう心遣いが自然にできるところも学ばせていただきました。
きょうは「運をつかむ」というテーマですが、それに関して王会長に一つお尋ねしたいことがあります。
かつてのプロ野球界は巨人中心に進んでいて、王会長ご自身も巨人でずっとプレーし、監督もされていた中で、1995年にダイエーホークスの監督になられたじゃないですか。あの時、日本中のファンがびっくりしたと思うんですけど、福岡に行くという決断はどんな経緯だったんですか?
<王>
私は選手、コーチ、監督という形で30年ジャイアンツに在籍し、1988年にユニフォームを脱ぎました。
退任直後はしんどい勝負の緊張感からホッと解放されたんですけど、これまで当たり前のようにあった輪の中から外れてしまったような寂しさが募ってきましてね。そのうちに他球団からオファーをいただくようになり、ホークスの監督だった根本(陸夫)さんから「俺の後をやってくれないか」と声を掛けられたんです。
最初はまさか冗談だと思いましたし、巨人以外のユニフォームを着るわけにはいかないという思いもあって断ったんですけど、次の年もまた誘われて、真剣に考えるようになりました。
まず大好きな野球の輪の中に戻りたいという気持ちが一つ。もう一つは、なぜ根本さんは私を呼んでくれたのか、ホークスを優勝できるチームにしてほしいと。
当時のホークスは20年近くBクラスに沈んでいて、西武を常勝チームにした根本さんですら、手を焼いていました。その根本さんが私に期待してくれているのであれば、やってやろうじゃないか。自分の可能性をホークスで試してみよう。そのことでパ・リーグの発展にも役立つのなら、こんなに喜ばしいことはない。そう思って引き受けることにしたんです。
家族にも仲間にもみんな反対されましたけど、最終的には女房が「あなたがそこまで言うのなら」と承諾してくれました。
<栗山>
僕は常々、運っていうのは自分のことはさておき、誰かのために尽くしている人のところに引き寄せられると実感しています。いまの王会長のお話でも、野球界の発展やファンのために決断をされたと思うんですけど、そういう利他の生き方がみんなから応援されるし、勝負所の運を呼び込んでくるんじゃないかなと。
<王>
何事も結果が出た時に、運を除いて話をすることはできませんよね。
我々は毎日毎日試合をやっていますけど、たった一つのことでガラッと流れが変わってしまうことがありますから。運は自分にも相手にも平等に来るものです。
その時に、どれだけひたむきに自分たちの仕事に取り組んでいるか、チーム全員の気持ちを一つにして勝つべく戦っているか、そういう要素が人間の力ではどうしようもない運をつかむか否かに直結していると思います。
↓ 対談内容はこちら!
◆奇跡のような巡り合わせ
◆運をつかむ上で大切な3つの要素
◆世界のホームラン王はかくて生まれた
◆一流の人は突き抜けている
◆どん底の選手時代を救ってくれた2人の恩人
◆リーグ最下位から日本一への道のり
◆大谷翔平氏が世界最高の選手たる所以
◆勝つ時は選手のおかげ負ける時は監督の責任
◆トップの覚悟が運を巻き込む
◆常にアンテナを張っているかどうか
◆歳を取っても氣力には限界がない
◇王 貞治(福岡ソフトバンクホークス会長)
昭和15年東京生まれ。34年早稲田実業高等学校を卒業後、読売ジャイアンツに入団。48年と49年三冠王。52年通算本塁打756本の世界記録を達成し、初の国民栄誉賞を受賞。55年通算本塁打868本の世界記録を最後に現役生活を終える。59~63年読売巨人軍監督。平成7年福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)監督就任(20年退任)。18年第1回WBCで日本代表監督を務め、優勝へ導く。21年より福岡ソフトバンクホークス会長。著書に『野球にときめいて 王貞治、半生を語る』(中公文庫)など多数。
◇栗山英樹(北海道日本ハムファイターズCBO)
昭和36年東京都生まれ。59年東京学芸大学卒業後、ヤクルトスワローズに入団。平成元年ゴールデン・グラブ賞受賞。翌年現役を引退し野球解説者として活動。24年から北海道日本ハムファイターズ監督を務め、同年チームをリーグ優勝に導き、28年には日本一に導く。令和3年侍ジャパントップチーム監督に就任。5年WBC優勝(3大会ぶり3度目)。6年北海道日本ハムファイターズのチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)に就任。著書多数。横田南嶺氏との共著に『運を味方にする人の生き方』(致知出版社)がある。
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