2026年07月14日
日本最高齢の現役ピアニストとして聴衆を魅了してきた室井摩耶子さんが、去る7月5日にお亡くなりになりました。105歳でした。終戦間際にデビューし瞬く間に地位を確立、後年「世界150人のピアニスト」に選ばれた時代の旗手でした。弊誌『致知』には、生前2度ご登場くださいました。最後となった101歳当時のインタビューを抜粋してお届けします。室井さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
(本記事は『致知』2022年8月号インタビュー「音楽の天才たちが残した〝魔法〟に魅せられて」より一部を抜粋・編集したものです)
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天才たちの言葉と向き合う
——室井さんのピアノ演奏を拝聴し、胸を打たれました。一つひとつ音が生きているというか……。
<室井>
そうですか。どうもありがとうございます。
——音楽を愉しんでいらっしゃることが伝わってきました。いまお部屋に入ってこられた足取りを見ても、101歳とは思えません。
<室井>
100歳を超えたからって、別にどうということはないんです。だけど年を取るほど分かることがあって、私も80歳くらいから、新しい発見が増えてきました。
やっぱりベートーヴェンにしろモーツァルトにしろ、彼らはものすごい天才ですから、そのすごさをこっちが理解していないと演奏できないんですよ、本当は。「この音とこの音を合わせれば、こういう綺麗さがあるじゃないか、こういう深さがあるじゃないか」と、彼らは自分の音楽を持っていて、それを使って語っているんです。
——音楽で語っている?
<室井>
私はいつも言うんですよ。「音楽は音で書かれた詩であり、小説であり、戯曲である」って。
でも実際は、五線紙に音符が書いてあるだけでしょう。いくら上手でも、それを譜面通りにチャカチャカ弾いていたらそれは音の羅列に過ぎないんです。だから、天才たちが語っていることをこっちが探し出さなきゃいけない。
6歳でピアノを始めて、小学生の頃から作曲の勉強もしてきましたけれど、「あぁ、彼はこんな綺麗な、すごい話をしてたのか。よくこれまで何も知らずに弾いてきたな」って思いますよ。
もう一つ、演奏家の難しいところはね、たとえそれが理解できても、聴いている人に音として伝えるテクニックがないといけないこと。「ここはこんな音が出なきゃだめなんだ」って悩むことがしょっちゅう出てきます。
——95年ピアノと向き合ってこられて、まだ発見がある。
<室井>
いまも毎日弾いています。この頃は朝10時くらいまで寝ている日もありますが、この自宅でいま言ったような練習をしたり、音楽雑誌の原稿を書いたりして、気がつけば夜中の2時(笑)。
——ご自身で健筆を振るっていらっしゃるのですか。
<室井>
ええ。私の連載は6月に出る号でもう101回になるんですが、毎月自分で原稿を書いてきました。ブログも自分で更新するんですよ。よく「お元気の秘訣は?」と訊きかれますけれど、そんなもの、ないですね。何もないです。
——ひたすら音楽を愉しんでいらっしゃるのですね。
<室井>
楽しいです。天才たちの言葉と向き合っていると、つくづく大変なものだと思いますけどね。
↓ 記事内容はこちら!
◆音楽は音で書かれた詩であり、言葉である
◆絶大な評価と自分の音楽への葛藤
◆音楽の本場の洗礼を受けて
◆プロとしての成長人間としての成熟
◆「私」という個性を大切に
◇室井摩耶子(むろい・まやこ)
大正10年東京生まれ。昭和16年東京音楽学校(現・東京藝術大学)を首席で卒業、研究科に進む。20年プロデビューし、31年ウィーンへ単身渡欧。ベルリン音楽大学に留学後は世界13か国でリサイタルを重ね、ドイツで出版の「世界150人のピアニスト」に紹介される。57年帰国。平成31年文化庁長官賞、令和3年東京都名誉都民に選出。著書にエッセイ集『マヤコ一〇一歳 元気な心とからだを保つコツ』(小学館)などがある。
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