小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり――結果を出すリーダーの判断基準〈岡田武史×井村雅代〉

日本サッカー界において、長年にわたり数々の選手やチームを育成してきた岡田武史さん。アーティスティックスイミング(旧シンクロ)の名伯楽・井村雅代さんと共に「リーダーのあり方」「チームづくりの要諦」について語った対談から、リーダーとして大切にすべき心構えを学びます。
(本記事は月刊『致知』2026年6月号 特集「人間を磨く」より一部を抜粋・編集したものです)

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私心やエゴは全部見抜かれる

〈井村〉
時々、メンバー選考が一番辛いですとインタビューに答えている監督やコーチがいますよね。「なんで辛いねん」って思います。私は全然辛くない。だって、強い選手、上手な選手を12人選び、その中の9番目から12番目までを外すだけじゃないですか。

〈岡田〉
僕も似たような感覚がありまして、例えば初めて監督を務めたフランスワールドカップ(以下W杯)で、最終メンバーからカズ(三浦知良選手)を外した時も、ものすごいバッシングでしたが、なんでこんなに叩かれるんだろうと。

逃げも隠れもしないですよ。僕は監督として勝つためにベストの選択をしただけだから。

〈井村〉
私もバルセロナ五輪の時、実可ちゃん(小谷実可子選手)を使わなかったら、これがめちゃくちゃに批判されました。

〈岡田〉
人気がありましたからね。

〈井村〉
私は別に実可ちゃんのことが嫌いでも何でもない。強かったら使いたかった。

とにかく勝つために、あの時は3人の中から1番目と2番目の選手を選んで、3番目を落としただけですよ。

〈岡田〉
メンバーを外す時に、僕は割り切ってスパッと「残念だが、力がないから今回外れる」と言います。

でも、よく見受けられるのが「いや、おまえも悪くないんだけど」って。確かにそう言いたくなるんですけど、「悪くないんだったら使ってよ」となるでしょう。要は監督やコーチが俺らに気を遣っているなと分かるから、チームがまとまらないんです。

ミーティングでやたらと「俺は」と主語をつけて話す監督もうまくいかない。「俺が責任取る」って、そんな当たり前のことをわざわざ言うなと。

いい人だ、すごい人だと思われたい、好かれたいという指導者のエゴは、些細な言動から選手に全部見抜かれる。

小善を断ち切れる人が少ないなと最近つくづく感じます。

〈井村〉
私心が入ったら、指導者は務まりません。


(本記事は月刊『致知』2026年6月号 特集「人間を磨く」より一部を抜粋・編集したものです)

◉『致知』2026年6月号 特集「人間を磨く」◉
「己を磨いた分だけ人を育てることができる」
井村雅代(井村アーティスティックスイミングクラブ代表理事)
岡田武史(今治.夢スポーツ会長)

↓ 対談内容はこちら!
◇勝負事に関して小善を断ち切れるか
◆本気で向き合えばどんな子にも通じる
◇相手に気づきを促す3つの叱るコツ
◆目に見えない余韻やオーラを残す
◇信頼関係を築く選手との関わり方
◆私心やエゴは全部見抜かれる
◇両者が『致知』を読み続ける理由
◆最後は素の自分で戦うしかない
◇最悪の状況下で選手に開口一番伝えたこと
◆遺伝子のスイッチがオンになった瞬間
◇結果を出せるのは結果を決めているから
◆勝利の神様は細部に宿る

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岡田武史(おかだ・たけし)
昭和31年大阪府生まれ。55年早稲田大学政治経済学部を卒業後、古河電気工業サッカー部に入団し、日本代表に選出。引退後は日本代表監督として平成9年W杯フランス大会で日本初の本選出場、22年W杯南アフリカ大会でベスト16。他にコンサドーレ札幌、横浜F・マリノス、中国スーパーリーグの杭州緑城で監督を歴任。26年FC今治のオーナーとなり、今治.夢スポーツ会長に就任。令和6年よりFC今治高校里山校の学園長を兼務。著書に『岡田メソッド』(英治出版)など。

◇井村雅代(いむら・まさよ
昭和25年大阪府生まれ。中学時代よりアーティスティックスイミングを始める。選手時代は日本選手権で2度優勝し、ミュンヘン五輪の公開演技に出場。天理大学卒業後、大阪市内で教諭を務める傍ら、アーティスティックスイミングの指導にも従事。53年日本代表コーチに就任。平成18年より中国、イギリスの指導を経て、26年日本代表ヘッドコーチに復帰。28年リオ五輪ではデュエット、団体共に銅メダルを獲得。令和3年の東京五輪では4位入賞。五輪でのメダル獲得数は通算16個。著書に『井村雅代コーチの結果を出す力』(PHP研究所)など。

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