脳トレの川島隆太さんが実証データ「速音読で、脳の回転速度が速くなる」

『にほんごであそぼ』の総合指導を務める齋藤孝さん。日本に脳トレブームを巻き起こし、現在も第一線で活躍中の川島隆太さん。月刊『致知』で初めて行われた対談の中で、お二人が話された「音読」の驚くべき効果とは? また、どのように行えば、音読の効果がより高まる出るのでしょうか? 脳科学と音読指導の実践から導き出されたのは「できるだけ速く読む」という手法でした。

 

音読を速く行うと、頭の回転速度が速くなる

【川島】 僕はこれまで素読が脳の機能を高める実証データをたくさん取ってきましたが、そこで分かったことの一つはできるだけ速く読むトレーニングの効果です。速く読むことで頭の回転速度が上がります。例えば、早口言葉のようなものを毎日やっていると、脳がつくり替えられるということが見えてきたんですね。

もう一つ、声に出すことは記憶のトレーニングにもなります。僕たちが文章を読む場合、一文字一文字を目で見て発声するのではなく、ある程度の量を見ながらそれを記憶に留めて声に出したり、理解したりしますね。これをワーキングメモリー(作動記憶)と読んでいますが、素読によってこの脳のシステムをフルに活用できることが分かってきました。

【川島】 はい。頭の回転速度と記憶の容量は、20歳を過ぎると遅くなり、小さくなります。ですから、素読を速くやることは脳の機能の低下を食い止めるし、子供たちの場合は、発達期に脳の器が大きくなるわけです。

そのことを意識しながら一日に10分から15分の素読を行うと、記憶力がよくなるばかりでなく、心理学でいう転移、つまり記憶とは別の力まで伸びるという反応が起きます。その能力とは、抑制力、創造力、論理的な思考力といったものですが、実際にMRIで調べると脳の前頭前野の両側の体積が増えていることが証明されているんです。

【齋藤】 脳の体積が増えるのですか。

【川島】 思考や記憶などを司る前頭葉は12歳がピークで、その後はだんだん薄くなるものですが、大人でも素読を続けることによって元に戻っていくんですね。これは脳の可塑性といわれ、脳の神経細胞のシナプスの量が増えてネットワークが通じやすくなるわけです。それも、MRIで見て分かるくらい劇的に変化するんです。

【齋藤】 素読のスピードについてお聞きしたいのですが、私は子供たちを集めて速音読をやっているんです。これも身体論や呼吸の研究から生まれたもので、音読もスポーツのようにやれば有酸素運動のような効果が得られるのではないかと考えました。抑揚を意識しながら、とにかく一息でできるだけ長く、テンポよく音読をする。

夏目漱石の『坊つちゃん』はテンポがいいので速音読にはもってこいなのですが、「お、や、ゆ、ず、り、の、む、てっ、ぽ、う、で」というゆったりした言い方ではなく「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る」という、かなり速いテンポで一冊読み上げるわけです。百人以上の小学生と六時間ぶっとおしでやったのですが、しばらくすると一種のゾーンに入ってきましてね(笑)。一冊読み終わったらなぜだかとても元気になりました。

【川島】 それは僕たちの理論どおりです。頭の回転速度のトレーニングを応用されたということなんですね。このトレーニングをやると実際、アクティビティ(行動量)が高まり、記憶力が二割ほど増した状態となります。

タイムを計って計算をさせる「百ます計算」も同じ理論です。あれは急がせるところに意味があるんです。僕たちは脳のトレーニングは速くないと意味がないという話を常々しています。

『素読のすすめ』
川島隆太&齋藤孝・共著

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『国語の力がグングン伸びる1分間速音読ドリル』
齋藤孝・著

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◇川島隆太(かわしま・りゅうた)

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昭和34年千葉県生まれ。東北大学医学部卒業。同大学院医学系研究科修了(医学博士)。同大学加齢医学研究所所長。専門は脳機能イメージング学。著書に『脳を鍛える大人の音読ドリル』『脳を鍛える大人の計算ドリル』(ともにくもん出版)『さらば脳ブーム』(新潮新書)『川島隆太教授の脳力を鍛える150日パズル』(宝島社)『やってはいけない脳の習慣』(青春新書)など多数。

◇齋藤孝(さいとう・たかし)

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昭和35年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。著書に『子どもと声に出して読みたい「実語教」』『親子で読もう「実語教」』『子どもと声に出して読みたい「童子教」』『日本人の闘い方~日本最古の兵書「闘戦経」に学ぶ勝ち戦の原理原則~』『子どもの人間力を高める「三字経」』など多数。新刊に『楽しみながら1分で脳を鍛える速音読』(いずれも致知出版社)。

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