日本人としての気概を取り戻し、活路を拓く——櫻井よしこ氏特別講話

アメリカの混乱、中国の台頭、北朝鮮の核開発……世界情勢が混迷を極める中、日本が活路を拓くには先人の勇気ある決断に学ぶことが大切だと、ジャーナリストの櫻井よしこさんが語ります。2019年3月に開催された弊社主催のセミナーにおける櫻井さんの講演から、日本人としての気概を取り戻す要諦をご紹介します。

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明治に学ぶ日本人の革新力

〈櫻井〉
日本を守るために革新的な変化を受け入れた例として明治維新があります。黒船が出現するまでの260年間、江戸幕府の統治下では戦争がなく世の中は平和でした。長年平和が続いたことで軍事力は弱く、鎖国政策によって情報力もありませんでした。

海外に目を向ければ、イギリスやアメリカは早々に産業革命を成し遂げ、工業化社会になっていました。生産の効率化も進んで、莫大な富を稼いでいました。日本はと言えば手工業の時代でしたから、経済力もありません。

軍事力もない、情報力もない、経済力もない。こんな国は滅ぼされて当然です。しかし、日本は違いました。不平等条約を結ばされ、治外法権を認めさせられて酷い目には遭いましたが、結果的には滅ぼされることはありませんでした。日本は同じ民族で国家を形成する国民国家(ネーションステート)です。その基本的な形を破壊されることなく、大和民族の国として生き残ることができたのです。

なぜ、それができたのでしょうか。日本人全体が賢かった、リーダーが偉かった、侍たちがとても潔かった。様々な理由が挙げられます。大名は自分たちの権限をすべて天皇に返上しました。大名から禄米をもらって生活していた武士たちも失業という現実を粛々と受け入れました。この潔さには驚く他ありません。

戊辰戦争などいくつかの戦いはあったものの、日本全土が灰燼に帰すことはなく新しい政治体制に移行しました。江戸城無血開城は、まさにその典型でしょう。

私はこのような大変革を成し遂げた日本人の心について思いを馳せずにはいられません。

「日本は国として民族として生き延びなくてはいけない、新しい局面に入ったからには新しい努力をしなくてはいけない」

日本人は鎖国の頃には全く考えもしなかったこれらの意識に目覚めたのです。以来、日本は西洋に学んで軍事力、経済力の強化に乗り出し、大転換を成し遂げていきます。

そして、その後、日本はもう一回、大変身しました。それが大東亜戦争に負けた時でした。有史以来初めて、国土が占領され主権が奪われるという屈辱を味わうのです。

占領軍が日本に対してどれほど酷いことをしたか。その詳細はここでは省きます。日本は占領軍主導による新しい憲法を受け入れ、教育方針を受け入れ、税や土地についての新制度を受け入れました。「これは現段階で我われ大和民族が生き残るための唯一の道なのだ」という苦渋の選択だったことは間違いありません。

占領政策は約七年で終わりました。我が国は主権を回復しました。にも拘らず、日本国はその占領政策のまま70年以上、今日まで来てしまいました。

占領軍によって押しつけられた国の姿は、憲法に記された通りです。国家が国民や国土を守るための交戦権すら認めない、憲法で否定している。世界には約200の国々がありますが、このような異常な憲法を持つのは日本国だけです。

しかも、占領軍は憲法改正が簡単にできないような仕組みまで残しました。衆参両院の3分の2以上の賛成と、国民投票で過半数の賛成を得て初めて憲法を改正できるというルールがそれです。いまようやく憲法改正の流れができてきましたが、そう簡単に問屋は卸してくれません。

ここに来て公明党が反対に転じ始めました。自民党一党だけでは、とりわけ参議院での3分の2は獲得できませんから、まだまだ危うい状態にあることには変わりありません。

政府は今日まで法解釈の拡大によって万一の際に自衛隊が少しでも軍隊としての働きができるようしてきました。しかし、軍拡に突き進む中国や北朝鮮の動きを見ると、このままで十分とは到底いえません。

日本は、自分の国を自分の手で守らなくてはどうしようもないところまで来ています。アメリカが守ってくれるというのも、保証の限りではありません。明治維新の時の先人の気概、長い間忘れていた自分たちの国は自分たちで守るという気概を再び取り戻さなくてはいけないのは、まさにいまなのです。


(本記事は月刊『致知』2019年6月号 特集「看脚下(かんきゃっか)」の特別講話から一部抜粋・編集したものです)

《対談10P》櫻井よしこさんが語る、豊かな国づくりへの具体的道筋

藤原正彦(お茶の水女子大学名誉教授)& 櫻井よしこ(国家基本問題研究所理事長)

◉『致知』2023年2月号【対談】何が国を豊かにするのか◉

いま我が国は様々な内憂外患を抱えています。かつて吉田松陰は「天下の大患は其の大患たる所以を知らざるにあり」とも言っていました。

私たちが直面している問題の本質とは何か。どこにその根本原因があり、いかなる手を打っていけばよいのでしょうか。大ベストセラー『国家の品格』で知られる数学者の藤原正彦さんと、鋭く本質を突いた言論活動を展開するジャーナリストの櫻井よしこさんが口を揃えて力説するのは、読書を通じて自国の歴史や古典に学ぶことの大切さです。豊かで徳の溢れる国づくりへの道筋を大所高所から論じていただきました。

▲記事詳細はバナーから|対談内容はこちら▼
  • 初等教育は国語と読書に尽きる

  • 歴史や古典に学ぶことを蔑ろにしてはいけない

  • 罪意識扶植計画とアメリカニズムの蔓延

  • 明治時代の後半から既に綻びが生じていた

  • 武士道精神の中心にある「惻隠の情」

  • 「十七条憲法」の原点は縄文時代にあった

  • スマホの禁止なくして活字文化の復興なし

  • 家にある本の数と子供の学力との関係

  • 「積善の家に余慶あり」から「積善の国に余慶あり」へ

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◇櫻井よしこ(さくらい・よしこ)
ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業後、「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局勤務。日本テレビニュースキャスター等を経て、現在はフリージャーナリスト。平成19年「国家基本問題研究所」を設立し、理事長に就任。23年日本再生に向けた精力的な言論活動が評価され、第26回正論大賞受賞。24年インターネット配信の「言論テレビ」創設、若い世代への情報発信に取り組む。近著に『韓国壊乱 文在寅政権に何が起きているのか 』(PHP新書)など多数。

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