2026年02月17日
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ミラノ・コルティナオリンピックのスノーボード男子ハーフパイプ決勝で、惜しくもメダル獲得を逃した平野歩夢選手。しかしながら、一か月前に負った複数個所骨折という大怪我を乗り越え、オリンピックの大舞台で戦い抜いた平野選手の勇姿は日本中に感動をもたらしました。そんな平野選手の強さの秘訣を、スノーボードハーフパイプ日本代表トレーナーとして平野選手を近くで支えてきた、内田友来さんに語っていただきました。
(本記事は『致知』2022年6月号随想「己の限界に挑み続けて掴んだ金メダル」より一部を抜粋・編集したものです)
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「努力を人に見せるなんて格好悪いと思ってる」
日本選手の中でも傑出していたのがやはり平野選手です。コロナ禍で一年延期になった東京オリンピックに、彼はスケートボード日本代表として出場していたため、北京五輪までスノーボードだけに集中できる準備期間は僅か半年。日本代表チームに合流したのは2021年12月でした。
そこから彼のケアを手掛けるようになったので、短い期間の関わりですが、私の目に映った平野選手の姿は「努力の天才」だということです。人が見ていない一人の時間も含めて黙々と努力している。けれどもその姿を決してひけらかさない。練習後の治療中に「努力を人に見せるなんて格好悪いと思ってる」と話してくれたことがあります。
北京五輪の1週間前にアメリカ・コロラド州で最終合宿を行った時のこと。普通は直前ともなれば、どの選手も本番に向けてスローダウンして調整するにも拘らず、平野選手だけは凄まじい気魄で追い込みをしていました。人類史上最高難度と称され、彼以外に誰も成功したことのない超大技「トリプルコーク1440」(斜め軸に縦3回転、横1回転)を完璧に仕上げて五輪の舞台に立つという強い意志の表れだったと思います。
他の選手が1日に20~30本程度飛んでいたところ、彼は50~70本をノンストップで、選手を運ぶスノーモービルが追いつかないほどのペースで、他の選手がいなくなってもひたすら飛び続けていたのです。超人的でした。
少しの時間も無駄にしない。一切の妥協を許さず、確信が持てるまで突き詰めていく。平野選手のその命懸けの姿勢に感化され、私自身、たとえこの指が1本や2本折れたとしても、彼のために魂を込めて最大限できることをやり尽くす。そうせずにはいられないとの思いに駆られました。
言葉で人を動かすのではなく、その態度から伝わってくるものがあり、私のみならず日本代表チームの選手やスタッフ、あるいは他国のトップ選手からもリスペクトされている。それが平野選手の魅力ですし、本物の証でしょう。
迎えた北京五輪、予選では超大技を温存したまま首位通過を果たすと、決勝の1回目でいきなり「トリプルコーク1440」を五輪史上初めて成功させます。ところがその後のトリックで転倒し、2回目では「トリプルコーク1440」を含めたすべてのトリックを決めたものの、予想外に得点が伸びず、その時点で2位。
後がなくなった3回目で、審査員を捻じ伏せるかのような圧巻の演技を披露して96点もの高得点を叩き出し、見事逆転で金メダルに輝いたのです。己の限界に挑み続けて掴み取った栄冠でした。










