【取材手記】松下幸之助と稲盛和夫 2人の名経営者から学ぶ〝人生のルール〟

~本記事は月刊誌『致知』2026年2月号 特集「先達に学ぶ」に掲載の対談(松下幸之助と稲盛和夫 二人の〝経営の神様〟の共通項)の取材手記です~

経営の神様を超えた「人生の神様」

時代を超えて多くの人々を感化し続ける松下幸之助と稲盛和夫。

去る2025年11月22日、各々の謦咳に接した上甲晃さんと大田嘉仁さんに4年ぶりにご対談いただき、両者の共通項と、そこから学ぶべきものについて語り合っていただきました。

改めて松下氏と稲盛氏の人生を繙いてみると、驚くほど共通項が見出せます。

・小さな会社から事業をスタートした
・幾多の試練を乗り越えてきた
・社員の心を絶えず鼓舞し、高めてきた
・自ら立ち上げた会社を一代で世界的優良企業に育て上げた
・自分の体験哲学を一般の人にも分かるように語り続けた

松下氏の下で松下政経塾の塾生指導に携わった上甲さんは、2人の共通項について、次のような見解を示されました。

単に商売がうまいとか、経営がうまいとか、そういう次元を超えた宇宙観や人間観の部分でとても似通っている。ここは普通の経営者にはあまり見受けられないところです。二人共経営の神様と謳われましたが、僕はむしろ“生き方の神様”という感じがしています

稲盛氏の秘書を約30年務め、かのJAL再建に共に携わった大田さんは、2人の関係について次のように繙いてくださいました。

稲盛さんは幸之助さんを師と仰いでずっと勉強してきましたから、やっぱり似てくるわけですよね。幸之助さんから学び、幸之助さんを追いかけ続けたのが稲盛さんでした

大田さんはその上で、稲盛氏が松下氏の講演会で「ダム式経営」の話を聞いた時のエピソードを披露されました。

幸之助さんはそこで、河川の水をダムで貯めるように、資金や人材、設備など、あらゆる経営資源に余裕を持って経営するダム式経営の重要性を説かれました。すると参加者から「ダム式経営の重要性は分かりましたが、どうすればダムができるのでしょうか?」という質問が出た。幸之助さんがしばらく考えて、

「一つ確かなことは、まずダム式経営をしようと思うことですな」

と答えると、即効性のあるノウハウを期待していた参加者からは失笑が漏れた。しかし稲盛さんだけは、その幸之助さんの言葉に電流が走るような衝撃を受けたといいます。

「そうか、まず思わなければならないのだ!」と

大田さん曰く、稲盛氏がそこまで衝撃を受けたのは、松下氏と同じように小さな会社からスタートして、たくさんの試練に直面しながら懸命に事業に打ち込んできたからではないか、とのことです。

試練を乗り越えて会得した人生のルール

先述の通り、松下氏と稲盛氏は幾多の試練に直面し、それらを乗り越えることを通じて、経営者として、そして人間として、一層の高みに至りました。

上甲さんにご紹介いただいた松下氏の試練の1つが、公職追放の指定を受けた時です。

終戦後、松下電器は戦時中に軍需産業を担っていたということで、松下幸之助と常務以上の役員がGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)から公職追放の指定を受け、その上財閥とも見なされて会社解体の危機に直面しました。

この時は、松下電器の労働組合が追放除外を求める嘆願運動を起こし、松下幸之助もGHQの元へ50回も赴いて粘り強く交渉を重ねた結果、4年後に無事指定解除に至りました。

「絶体絶命やった」と自身も振り返るほどの試練でした

松下氏はその逆境の中で、なぜ人間はこんな悲惨な目に遭わなければならないのかと自問を重ね、繁栄によって平和と幸福の実現を目指すPHP運動を始めました。松下氏の人間観は、この時に目覚めたのではないか、と上甲さんは見ています。

大田さんにご紹介いただいた稲盛氏の試練の1つは、人工骨問題です。

京セラが創業25周年を迎えた頃、同社のセラミックスを元に開発した人工骨や人工膝関節が、薬事法違反の疑いを受け、1か月の操業停止処分を受けました。稲盛氏は世間から猛バッシングを受け、入院を余儀なくされるほどの窮状に陥りました。

悩みに悩んだ稲盛さんは、ご縁のあった、後に臨済宗妙心寺派管長になる西片擔雪老師の元を訪れました。すると老師はケロッとして、「それはカルマが溶ける時なんですよ。その程度の災難でこれまで背負ってきた業が消えると思えば、赤飯を炊いて喜ばなきゃならんことだ」と諭されます

稲盛氏はこの体験を通じて、かねて心に刻んできた善因善果、悪因悪果という人生のルールを一層意識するようになり、経営者の勉強会「盛和塾」や、第二電電(現・KDDI)、京都賞など、社会貢献に通じる様々な事業に一層力を注ぐようになったそうです。

高市総理を奮い立たせた10通の応援メール

対談で印象に残ったお2人のお話をご紹介します。

〈上甲〉
僕が突然松下政経塾への出向を命じられた時、「私のような政治の素人にこの仕事は無理です」と固辞したら、松下幸之助は、「素人か。そらええな。素人だからこそ新しいことができるんや」と言うんです。

「ただし、熱心という一点だけは負けたらあかん。ここさえ負けなければ、道は必ず開ける」と。思わず立ち上がって『頑張ります』と答えましたけど、それが僕の出発点です

〈大田〉
私が稲盛さんから言われて心に刻んできたのが、「謙虚さは魔除けだ」という言葉です。

「謙虚さを失ったら、誰もついてこなくなるよ」と。私も無自覚のうちに傲慢さが出ていたんだろうと思うんです。よいタイミングで説いてもらったと感謝してします

お2人には、他にも示唆に富んだお話をたくさんいただきましたが、特に印象に残ったのは、高市早苗総理の誕生にまつわるエピソードです。

昨年、女性初の総理大臣となり、国民から高い支持を受けている高市氏は、若き日に松下政経塾に入塾し、松下氏の薫陶を受けました。

そして昨秋の自民党総裁選では、大方の予想を覆して当選を果たし、総理就任へ大きな一歩を踏み出しましたが、実はその陰で高市氏に大きな勇気をもたらしたのが、上甲氏が贈った松下氏の金言だったのです。

本誌2026年2月号では、上甲氏が高市氏への応援メールに綴った松下氏の10の金言と共に、大田氏が稲盛氏から得た学びのエッセンスを10か条に凝縮して紹介しています。ぜひご一読ください!

本記事の内容 ~全10ページ~
◇「まず思わなければならないのだ!」
◇部下を信じるのが上司の仕事
◇真の使命に目覚めた時に人も企業も成長する
◇人間の本質を掴まなければ幸せになれない
◇すべての原因は自分にある
◇全従業員の物心両面の幸福を追求する
◇善因善果、悪因悪果
◇人を鼓舞し、育てる一番の方法
◇仕えただけの値打ちがある人間に
◇高市総理へ贈った松下幸之助の言葉
◇仕事と人生を開く稲盛和夫の言葉
◇流行りを追うな、真理を追え

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