【取材手記】夢の新技術・量子コンピュータの開発者が熱く語る、人の力、思いの力〈中村泰信×根来誠〉


~本記事は月刊誌『致知』2025年12月号 特集「拓く進む」に掲載の対談「純国産量子コンピュータはこうして誕生した」の取材手記です~

社会を一変させる次世代の最先端技術

去る11月6日、期待に胸を膨らませつつ東京都内のホテルへ向かいました。
いま話題の次世代新技術・量子コンピュータの開発で日本を牽引する中村泰信さんと根来(ねごろ)誠さんの対談取材のためです。

先日閉幕した大阪・関西万博でも話題となった量子コンピュータは、高市内閣によって立ち上げられた日本成長戦略会議において、我が国の重点投資対象の1つに挙げられています。

そもそも量子コンピュータとは何でしょうか?
中村さんが、我われ一般人向けに分かりやすく解説してくださいました。

「量子コンピュータは、物理学の基本法則である量子力学の原理を利用して情報処理を行うことによって、スーパーコンピュータを含めた従来のコンピュータでは膨大な時間を要する計算を、短時間で効率的に行うことができるようになると期待されています。

分かりやすく言えば、巨大な迷路の出口を探す時に、従来のコンピュータが一つずつ道筋を確認していくのに対して、量子コンピュータはすべての道筋を同時に、一瞬で確認することができます。情報の処理速度を速くするだけでなく、情報処理の仕方そのものを変えることで、スーパーコンピュータで何万年もかかる計算を、量子コンピュータが数分で解くことも可能になるのです」

ネットの情報によれば、量子コンピュータが実用化されると、例えば以下のようなことが可能になるようです。

・新薬やワクチンの開発期間が大幅に短縮され、革新的な新素材の設計が加速する
・交通渋滞の解消、物流ルートの最適化などの問題が、瞬時に解決できるようになる
・AIの機械学習や深層学習における計算が高速化し、現在よりもさらに賢いAIの開発が進む。
・気候変動の予測モデルの精度が向上し、エネルギー効率の最適化や、より効率的な触媒開発などが可能になる

上記以外にも様々な予測が上がっています。
そして、量子コンピュータの実用化によって国家間の優位性すらも左右されると考えられているため、各国が熾烈な開発競争を展開しているとのことです。

日本はこれまで、「京」や「富岳」といった世界一のスーパーコンピュータの開発を実現してきました。
そしていま、量子コンピュータという新技術で目覚ましい成果を上げているのが、中村泰信さんと根来誠さんなのです。


↓ 対談内容 ~全10ページ~ ↓
◇純国産の量子コンピュータを大阪・関西万博で公開
◇量子コンピュータで何ができるか
◇日本の本当の強みとは
◇欠かせない研究パートナー
◇自分の興味を突き詰め超伝導量子ビットを実現
◇頑張れば何かを成せるかもしれない
◇流れ星への願いが叶う理由
◇「IBMやグーグルに勝つつもりですか?」
◇稼働実現までの苦闘
◇どうすれば独創性を発揮できるか
◇開発中止への強い危機感
奇跡を起こす条件
◇日々の小さな積み重ねこそが原動力

日本の強みは人。優れた技術も人あってのもの

中村泰信さんは、1999年に世界に先駆けて「超伝導量子ビット」の実現に成功。この「超伝導量子ビット」こそは、量子コンピュータの心臓部に当たる最重要パーツであり、ここが起点となって世界の量子コンピュータの開発競争が始まったといいます。

一方の根来誠さんは、量子コンピュータを動かす際に不可欠な制御装置や、その制御装置を応用した超高感度なMRI(磁気共鳴画像法)やNMR(核磁気共鳴)を開発。さらに制御装置を開発・製造する会社まで立ち上げています。

お二人は2023年に初の国産量子コンピュータの開発に成功。さらに先述した大阪・関西万博で、主要部品を全て日本製で賄った“純国産”量子コンピュータも公開しました。

取材当日は、量子コンピュータの話題一辺倒でなく、技術開発への情熱や、難局との向き合い方など、仕事や人生のヒントに満ちた『致知』に相応しい対談となりました。

中村さんの願いは、科学が世界のためになること。技術を通じて世界の人々の幸せに寄与したいと、高い理想を披瀝されました。
中村さんは言います。

〈中村〉
「よく取材で「日本の強みは何ですか?」と聞かれるんですけど、強みはやっぱり人です。もちろん技術も重要ですが、それはやっぱり人あってのものですし、そこが日本の強さでもあると私は思うんですね」

「人生は偶然の積み重ねだと思っていますけど、大事なのは、その時、その時にできることを一所懸命にすること。そういう姿勢を積み重ねていく中で、たまたま直面した出来事や、出逢った人がきっかけになって、パッと道が開けていくことがあると思うんです」

対する根来さんは、学生時代にアメリカンフットボールに熱中。中村さんが初対面の時に抱いたという「こいつ、熱いな」という印象そのものの、情熱溢れるお人柄が印象的です。
根来はこんな話をしてくださいました。

〈根来〉
「よく流れ星に願いごとをすると叶うといいますね。

それは四六時中思い続けているから流れ星という一瞬の出来事も逃さないし、そこまで真剣に思い続けていたら絶対叶うことを示唆しているのだと。
僕はこの話にとても共感しています」

「最後の最後まで必死に打ち込んで何かを成し遂げるチームはやっぱりどこか違いますね。国産量子コンピュータも、中村先生をはじめとするプロジェクトの皆さんが、逃げずに最後までやり抜く気概を持って取り組んだからこそ稼働したのだと思います」

本誌では、純国産量子コンピュータの開発が実現するまでのお二人の苦闘を赤裸々に語っていただいています。ぜひご一読ください。

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